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じゃくの音楽日記帳

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2011.01.11
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カテゴリ:演奏会(2011年)

2011年1月5日、上野の東京文化会館小ホールで、藤井一興ピアノリサイタルを聴いてきました。今年の僕のコンサート聴き初めでした。

藤井さんは毎年ではないですがこのホールでニューイヤーリサイタルを行っています。僕が聴くのは2006年のフォーレ&メシアン、2010年の展覧会の絵、に続く3回目です。プログラムの表紙が、毎回同じで日の出を思わせる赤い大きな丸印と、その下にピアノの鍵盤部分が横に長く一の字のように置かれているユニークなデザインです。この形をみると、イタリアの孤高の作曲家ジャチント・シェルシのマークをいつも思い出してしまいます。そこでリサイタルとは全然関係ないし、意味はないのですが(爆)、この二つを並べて写真にとってみました。

藤井さんとシェルシ中

写真の左側が藤井さんのリサイタルのプログラムの表紙です。右側は、とある1枚のシェルシのCDジャケットの裏表紙に載っている、シェルシのシェルシ、じゃなくてシェルシの印です。他人のそら似にしては、かなり良く似ているように思うのは、僕だけ?

ところで今年のプログラムには、写真にもあるように、「錯覚の美学~響きのうらに見える蜃気楼」というテーマタイトルがついていました。そして曲目は

  ・ドビュッシー:前奏曲集第1集

      ーー 休憩 ーー

  ・ブーレーズ:ノタシオン

  ・メシアン:「鳥のカタログ第1巻」よりコウライウグイス

  ・早川和子:溌

  ・ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ

  ・ドビュッシー:「映像第1集」より水に映る影

  ・ドビュッシー:喜びの島

このテーマタイトルや曲目の解説に関しては、藤井さんのオフィシャルサイトにインタビュー記事があり、とても興味深いのでリンクを張っておきます。この記事にもあるように、倍音やハーフペダルなどに細心の注意をはらった、藤井さんらしい音色の美しさに酔えることが充分に期待できるプログラムで、特にブーレーズやメシアンに非常に期待して出掛けてきました。

ところが藤井さんが登場してわき起こった拍手が鎮まり、いよいよ演奏が開始されようというときに、「シャーッ」という高周波音が耳につきはじめました。あ~っ、これは補聴器のノイズです。。。

ここから先は、藤井さんの音楽とは直接関係ない話になってしまい恐縮ですが、この日すこぶる悩まされた補聴器のノイズのことを書いておこうと思います。補聴器のノイズ、ことの起こりは2004年のサントリーホール、ゲルギエフ/ロッテルダムフィルのマーラー9番のときでした。このとき僕は会場にいました。演奏開始時から会場内に「シャーッ」という音が、かすかながらも耳につく持続音ノイズとして響いていました。何のノイズなのか、初めてのことなのでさっぱりわかりませんが、ノイズがとても気になって音楽を落ち着いて聴けません。それでも演奏は普通に行われていき、第一、第二楽章と進みました。今夜はこのままノイズが最後まで続くのだろうかと諦めかけました。しかし第二楽章が終わったときでした。ゲルギエフは第三楽章に入ろうとしたのですが、舞台上にホールの方とおぼしき背広姿の男性が出てきて、演奏開始をストップさせ、客席に向かって、ノイズがするので、今一度ご自分あるいは周囲の方の機器などを確認してください、という呼びかけがありました。そのあと1~2分でしょうか、ようやくその音がぴたりとおさまり、演奏は第三楽章から再び始まりました。それまでのノイズがなくなったことで初めてオケの響きが味わえるようになりました。聴いているほうからして著しい違いですから、ゲルギエフやオケの方々にとっては、もっともっと大きな違いだったと思います。

この一件のあと、サントリーホールの場内アナウンスに、携帯電話の注意を喚起するあとに、補聴器は正しく装着されているかご確認ください、というアナウンスが加わるようになりました。今ではどこのホールでも当たり前のアナウンスになってますね。

僕はその後今までに、2~3回ほど同じような補聴器ノイズに遭遇したことがあります。ここ東京文化会館小ホールでも、ある室内楽コンサートのときにこの補聴器ノイズがして困ったことがありました。それで僕は、プログラムの前半が終了したところで、会場の係の方にその旨を話しました。そうしたら、休憩時間中にホールの係の方が複数で会場内をゆっくり歩きながら、お客さんにきめ細かく声をかけていただき、その甲斐あって、後半にはそのノイズがぴたっとおさまっていて、このホール本来の美しい響きで音楽を味わうことができました。演奏会終了後に係の人に、ノイズが消えたお礼を言ったら、「私たちは会場の中にいないので、そういう情報を伝えていただいて良かったです」と仰っていました。

それ以来久々の補聴器ノイズです。しかも今回は単に「シャーッ」という音だけでなく、少しハウリングを起こしかけているような、「キーン」という音までしてきて、かなり耳障りで、困りました。前半のドビュッシーは、そのノイズを辛く思っているうちに終わってしまいました。そこで今回も、休憩時間に係の人に事情を話して、対応をお願いしました。その後僕は休憩のあいだホワイエにいたので、休憩時間中にホール内でどういう対応が行われたのかはわかりません。ただ、後半が始まるときの場内アナウンスに、前半のときにはなかった補聴器に関する注意喚起が、普通に一言だけ追加されていました。これで効果が出ていれば良いのですが。。。(補聴器のノイズは、会場がざわざわしているときにはわからないのが怖いところです。いざ演奏が始まるときに会場が静まり返って、初めてわかります。そして演奏が開始されてしまうと、あとずっと延々と持続する、というおそろしさがあります。)後半の最初、藤井さんはマイクを持って登場し、ブーレーズ、メシアン、早川の現代音楽3作品についての興味深いお話を少しされました。そしていよいよ演奏がはじまりましたが、あぁ残念なことに、補聴器のノイズは続いていました。しかも前半よりも「キーン」という音量が増して、あたかも大きな耳鳴りの音がしているような感じで、音楽を聴いているのが苦痛なほどでした。折角のブーレーズが、メシアンが、倍音もハーフペダルも、その微妙なニュアンスが聴き取れないどころか、音楽そのものにもまったく浸れない状態となってしまいました。「いや、藤井さんだってこのノイズの中を弾いているんだ、自分もノイズに気を取られないで音楽に集中しよう」と何度も思い直そうとしましたが、だめでした。。。。

なぜか、メシアンの次の曲からノイズがようやくぴたりとやみ、ここからやっと藤井さんのピアノの響きを味わうことができました。あぁあと1曲早ければメシアンが聴けたのに、、、残念無念でした。ただしそこからは藤井さんがまさに本領発揮。特にラヴェルとドビュッシーは、柔らかく繊細で多彩な音色の素晴らしさに酔うことができました。ノイズがなければ、全編にわたって、さぞすばらしい音楽がきけただろうと思います。

補聴器のノイズのときに不思議なのは、演奏者が注文をつけないことです。人並み以上に鋭敏で繊細な耳を持っているゲルギエフやら藤井さんやらプロの音楽家たちが、こういうノイズが気にならない筈はないと思うんです。しかしこれまで3~4回遭遇したいずれの場面でも、演奏者は何も言わず、ひたすら演奏を続けていました。弾き初めてしまった曲を中断したくないという気持ちは理解できるとしても、それならば次の曲に入る前に、ちょっと席を外してホールの人に相談し、場内アナウンスを流してもらう等して、ノイズを止めようということを考えないものでしょうか。。。もしかして、どんな過酷な条件のところでも弾く、お客さんに注文などつけてはいけない、というプロ魂のなせる技なのでしょうか。。。

補聴器のノイズ、これはまったく悪意なしのノイズですし、言うまでもなくそのノイズの発生者を責めるつもりは微塵もありません。でもこのノイズは、演奏が始まるいざそのときまでわからないし、始まってしまうとず~っと持続的に音楽を妨げてしまうという、かなりの破壊力のある厄介者です。

こういった補聴器のノイズによる不幸な事態をできるだけ減らすには、まずはハード面。補聴器を改良して、補聴器をつけた方もより安心して来場できるようになってほしいこと。それから、会場の人あるいは主催関係者がホール内にいて、万が一ノイズが発生したら、曲間などに早めに演奏者と対応を相談することを躊躇しないでほしいこと。そして演奏者自身も、もしノイズが気になるときには遠慮せず曲間に関係者と相談して対応してほしいこと、などを思います。(もしも演奏者が気にならないノイズならば聴き手も我慢しますけれど、それはありえないかなぁ、と思います。)その点で考えると、2004年サントリーでのゲルギエフのときのホール側の対応は、第二楽章が終わった時点で演奏を中断したのは大英断だったと思います。

もしこの文を読んでいて不快に思われる方がいらしたら、お詫び申し上げます。繰り返しますが、決して誰かを糾弾するということではありません。その日のためにエネルギーを注いできた演奏者と、その音楽を聴きにきたすべての人のために、という思いだけです。

・・・今回、ノイズが鳴っている間、しんどいといえば結構しんどい時間でした。しかし考えようによっては、前半のそのような時間があったため、そのあとに藤井さんの音楽の美しさが、ひときわ心にしみたのかもしれません。そんな意味も含めて、ともかく藤井さんの音楽を聴けたことに感謝したいと思います。藤井さんのフランス音楽は、やはり素晴らしいです。今後とも、藤井さんのピアノを聴いていきたいと思います。






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Last updated  2013.01.16 23:01:18
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そうだったのですか   やよい さん
はじめまして!
藤井さんのリサイタル毎年楽しみにしており、
今年も行きました。
私は休憩後の高い音から気がつきました。
最初は耳鳴りかと思いましたが、どうやら違うようで。
初めて、補聴器によるノイズ聞きました。
シャーって音が多いのですか?

そういえば、毎年お礼の文章がでるので、
そろそろかと思ってHPみたら、
お詫びが載ってましたよ。 (2011.01.13 09:56:13)

Re:そうだったのですか(01/11)   じゃく3 さん
やよいさんはじめまして、コメントありがとうございます!

>初めて、補聴器によるノイズ聞きました。
>シャーって音が多いのですか?

慣れてくるとわかりますが、(慣れないですませたいものですが(^^;))、独特の高周波音、おそらく可聴域以上の周波数を多く含んでいると思う音です。「シャー」というか「シー」というか、音量は小さいけれどすごく耳障りな感じです。これまで僕の体験したのはそういう音成分だけでしたが、今回のはその音成分に加えて「キーン」という耳鳴りのような音もして、かなり目立ってましたね。ここまで目立つ音は僕も初めてでした。

>そういえば、毎年お礼の文章がでるので、
>そろそろかと思ってHPみたら、
>お詫びが載ってましたよ。

本当ですね!お礼の文章は見ていましたが、12日付でお詫びが載ってますね。藤井さんがわざわざお詫びしなくても良いことなのに、誠実なお人柄があらわれていて、かえって恐縮してしまいます。でもはっきりと今後の対策についてコメントされているので、とてもありがたく、心強いですね。 (2011.01.13 20:02:42)

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