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じゃくの音楽日記帳

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2014.01.07
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カテゴリ:演奏会(2013年)

続いて2013年印象に残った演奏会、声楽編その2、オペラです。コンサート形式のものも含めて書きます。

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 2月21日 J.シュトラウス二世 「こうもり」 二期会/大植英次(指揮)/白井晃(演出)/都響  東京文化会館
 6月29日 ピアソラ 「ブエノスアイレスのマリア」 バルタール(歌)、小松亮太(バンドネオン)ほか  東京オペラシティ
 7月24日 ラヴェル「子どもと魔法」 大植/大フィル シンフォニーホール
 9月 3日 モンテヴェルディ「ポッペアの戴冠」 アントネッロ   川口リリア音楽ホール
11月10日 ライマン「リア」 二期会/下野竜也(指揮)/栗山民也(演出)/読響 日生劇場
12月 4日 モンテヴェルディ「オルフェオ」 アントネッロ   川口リリア音楽ホール
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大植さんが日本で初めてピットに入りオペラを振った二期会の「こうもり」は、ともかく楽しい上演でした。きびきびしてメリハリのある中に、歌わせるところはたっぷりと歌わせる大植節は今回も快調。途中、酔った看守がオケピットの中にオーウェーっと吐きそうになると、親切にもホルン奏者がホルンのベルを上にかざして受け止めてあげようとするし、その声を聞いた指揮者は指揮者で「オーウェー、エイジー!」と叫ぶし、波瀾万丈抱腹絶倒。歌もせりふもすべてが日本語による上演で、子供にも(僕にも)わかりやすかったと思います。急に禿げ頭が露呈したりすると客席の子供が大声で笑ったりして、老若男女がリラックスして楽しめた上演でした。大植さんのインタビューを見ると、「生きているといろんなことがある、でも『こうもり』を観ている時間はそれも消えて幸せな気持ちになれる。東日本大震災があって、今、日本に大切なものはスマイルだと思うから。この作品が求められている時代なんじゃないでしょうか」「僕は、みなさんに笑顔になっていただきたいんですよ。劇場にいる最初から最後まで楽しんでいただいて、ここにいる時間は何も心配しなくていい、平和なひとときを提供したいんです。」とあります。こういった大植さんの狙いが、大成功した上演でした。

(これであらかじめ予定された大植さんと都響の共演はすべて終わりました。今後はいかに??)

ピアソラのブエノスアイレスのマリアは、以前クレーメルたちの演奏(コンサート形式)を渋谷シアターコクーンで聴きました。器楽、歌とも最高で、至福の体験でした。それ以来久々にこの作品の上演(コンサート形式)に接することができました。小松亮太さんの他には出演者のことは何も知らずに行きました。会場に行ってプログラムをみたら、女性の歌い手のアメリータ・バルタールさんという方は、この曲の1968年の録音時に主役マリアを歌い、のちにピアソラと結婚し5年間ピアソラの妻だったという方!世界中で歌手、女優として活躍されているということです。この方の歌が、ものすごい存在感があって素晴らしかったです。特に第12場の精神分析医のアリア、魂からしぼり出すような歌唱が圧巻でした。今回が初来日ということですが、この曲のマリアをこの方の歌で聴けて、得難い体験でした。小松亮太さんのバンドネオンは、やや控えめで、バルタールさんへのリスペクトが大いに感じられ、これもまた良かったです。

7月のラヴェルの「子どもの魔法」(コンサート形式)は、記事にした通り、大植さんと大フィルならではの、しかもシンフォニーホールならではの、夢のような、まさに魔法のような、美しい幸せなひとときでした。今思い出しても溜め息が出てしまいます。

 

濱田芳通さん率いる古楽グループのアントネッロが、モンテヴェルディの現存するオペラ3本を順次とりあげるという意欲的なプロジェクトが始まりました。カウンターテナーで活躍する弥勒忠史さんの演出によるシリーズです。昨年は第1回「ポッペアの戴冠」、第2回「オルフェオ」が上演されました。ポッペアの戴冠は、2009年のBCJらによる演奏で初めて聴き、ついで2011年5月にくにたちiBACHコレギウムの演奏で聴きました。どちらもモンテヴェルディの音楽の美しさに感動しました。特に後者は、2011年のマイベストコンサートの1位に選んだものです。これはポッペア役の阿部雅子さんをはじめとしたすばらしい上演で、涙々で心洗われた特別な体験でした。これらのすぐれた演奏に続き、今回が3回目となる僕の「ポッペアの戴冠」体験でしたが、これらと異なる方向性の表現に、いささか戸惑いを覚えてしまいました。打楽器などで現代的・開放的な楽しさを加えたのは濱田さんらしくていいとしても、音楽の静謐な美しさを生かさない伴奏には、大いに疑問を感じました。

それが象徴的に表れていたのは、劇半ばで、乳母アルナルタが王宮の庭で、眠りについたポッペアのそばで、「ぐっすり眠りなさい」と歌うアリアでした。このアリア、僕は最初にアップショーの「ホワイト・ムーン」というCDに入っているのを聴いて知って、大好きになりました。このCDでは、中性的なアップショーの声が、アサド兄弟の編曲とギター伴奏(必要最小限に切り詰められた音!)にのって、ほのかな月あかりに照らされているかのような静謐な美しさをもって歌われています。過去に2回接したポッペアの戴冠の上演でも、同じように切り詰められた音による、静謐な美しさに満ちた歌と伴奏に、心打たれたものでした。ところが今回のアリア、カウンターテナー上杉さんの歌唱は別としても、伴奏が、普通の伴奏とまったく異なる音型で弾かれ、静謐な美しさに著しく欠けていました。確かにメロディーはあのアリアなのに、伴奏だけ聴いていたら同じ曲とは思えない変貌ぶり。もちろん普通の伴奏と違っていても、このひそやかで美しい音楽の魅力を保っているのなら良いのですが、それがまったく損なわれてしまっていました。。。このアリアの伴奏表現に象徴されるように、この上演は、モンテヴェルディの音楽の大きな魅力の一つである、静かな秘められた美しさの表現が、著しく不足していました。つまるところ濱田さんが、モンテヴェルディの音楽にそういうことを求めていないということだと思います。。。

歌手陣では、なんといってもネローネを歌った弥勒さんの圧倒的な声量、存在感の前に、ほかの出演者がかすんでしまった感がありました。そもそもこのリリア音楽ホールは、比較的よく響くいいホールですけれど、客席600の中ホールですので、弥勒さんが持てるパワーで目いっぱい歌ったため音が飽和して、ちょっと聴きにくくなってしまいました。他の出演者とのバランスも考えて少しセーブしていただいたら、さらに良かったかなと思います。他の出演者の中では、ドゥルジッラ役の末吉朋子さんという方が、すばらしい歌唱で光っていました。それにしても、弥勒演出によるオペラといえば、2009年のパーセルアニバーサリーイヤーに横須賀で上演されたパーセルのディドーとエネアスは、もっと美しくて格調高かったのですが、今回は、美しさよりも娯楽性を追及した路線になっていました。


アントネッロ&弥勒演出によるモンテヴェルディ・オペラシリーズ第2回は「オルフェオ」でした。モンテヴェルディのオルフェオは、2007年の北とぴあ国際音楽祭で、寺神戸さんらによる上演をみました。僕が初めて体験したモンテヴェルディのオペラでした。音楽のすばらしさに加え、能の要素をうまく取り入れた気品ある大変格調高いステージで、これはもう最高でした。さて今回は、前回の「ポッペアの戴冠」から、アントネッロ&弥勒演出の求めるものの方向性は分かったつもりだったので、そのような心構えで臨みました。やはり想像したとおりの路線で、そこを割り切ってみれば十分に楽しめました。悪い意味ではなく、大衆路線というか、一大エンターティンメントショーのような、人間ドラマとスペクタクルショーを見るような迫力が楽しめました。器楽演奏は、途中でかなり現代感覚にあふれた打楽器隊などが参入したのは前回同様でしたし、今回はそのうえさらに、強力な金管軍団が多数参加し、ときどき荒々しい音を吹き鳴らし、古楽オペラとしては型破りでした。

極めつきは、劇半ばの黄泉の国の場面で、いつのまにか前方の客席の左右に分かれて座っていた黒服の大合唱団が突如立ち上がって、大迫力の合唱を歌ったところでした。会場全体を包み込むその空間効果は超強力で、まるでマーラーの8番を聴いているような、大スペクタクル的醍醐味がありました。しかも、地獄の底から湧き起ってくるその恐ろしいパワーは、オルフのカルミナ・ブラーナ冒頭に匹敵する凄味さえあったとも言えましょう(^o^)。モンテヴェルディの音楽からこういう魅力を引き出す濱田&弥勒コンビは、ユニークな才能というべきでしょう。歌手陣については、主役のオルフェオは太陽神アポロの子なのですから、半神半人の神的な雰囲気が漂ってほしかったのですが、そういう雰囲気は皆無。まったくの人間的な存在に終始していたのが、とても残念でした。しかしこれも濱田&弥勒チームの求める路線なのだとすれば、仕方ありません。僕がモンテヴェルディの音楽からこそ求めたい感動を得ることは困難でしたが、それはそれとして、なかなかに面白い体験ではありました。今年3月には第3回、「ウリッセの帰還」が上演されます。このオペラは僕は初体験です。どんな舞台になるのか、大体想像はつくつもりです。楽しみたいと思います。

オペラ編の最後に特記したいのは、11月に日生劇場で行われた、ライマンの「リア」日本初演。シェイクスピアの「リア王」をオペラ化したものです。ライマン氏の音楽は初めて聴きました。全編に異常な緊張感が張り詰めた音楽で、オケも歌唱もハイレベルで、すごいものを聴かせていただきました!ダブルキャストで、僕の見た日は、3人姉妹の長姉ゴネリル(意地悪なお姉さんですね)役の小山由美さんが、憎々しいまでの貫禄で見事に歌ってくれてました。大植&大フィルのマーラー大地の歌で急遽ピンチヒッターとして出演し、しみじみとした歌唱をしっとり聴かせていただいた方と同じ人は思えないほどでした。プロの技ですね。また末の妹コーディリア役の臼木あいさんも、独特の緊張をはらんだ歌唱が良かったです。栗山演出の舞台も、無駄を排したモノトーンの中に光が効果的で、時折使われる赤い色が血のイメージをこわいほど引き出していました。そして何よりも音楽のすごさ。このオペラ、1978年にドイツで初演されて以来、ヨーロッパではたびたび上演されている人気作品だそうで、本当に見ごたえ聴きごたえがありました。






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Last updated  2014.01.09 02:18:00
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