じゃくの音楽日記帳

2016/07/14(木)00:37

関西グスタフ・マーラー響の3番を聴く(その1)

マーラー演奏会(2016年)(11)

6月19日、関西グスタフ・マーラー交響楽団によるマーラー3番を聴きに、京都にやって来ました。マーラーの全交響曲を10年かけて全部演奏しようという壮大なプロジェクトとして始まった、マーラーに特化したアマオケです。2012年のびわ湖ホールでの5番を皮切りに、13年京都6番、14年兵庫7番、15年京都1番、大阪2番と着々とプロジェクトが進行中です。最初の3年でいきなり難しい5,6,7番をやってしまうというところからして、並々ならぬパワーを感じます。 これまではなかなか都合がつかず聴きに来られませんでしたが、このオケがいよいよ3番を演奏するというので、はるばる京都までやってまいりました。 指揮:田中宗利 アルト独唱:八木寿子 女性合唱:女声合唱団「花野」 児童合唱:京都市少年合唱団 京都聖母学院ハンドベルクワイア 管弦楽:関西グスタフ・マーラー交響楽団 マーラー 交響曲第3番 6月19日 14時開演 ロームシアター京都 メインホール 京都は、あいにくの雨でした。時々結構強く降って来る雨の中、平安神宮のそばにあるロームシアター京都に無事到着したのが、13時15分頃でした。京都会館がリニューアルとなったロームシアターには、今回初めて訪れました。ホールが沢山あり、日曜日午後で複数のコンサートが行われていて、多くの人々で賑わっていました。マーラー3番の演奏会が行われるメインホールに行ってみると、すでにホールは開場していて、ホール内には早くもびっくりするほど沢山の人が着席しています。1階センターの前の方に空席を見つけたのでそこを押さえました。 ホールの奥行きはかなり短くて、客席はセンター、サイドとも4階まであり、どの席も舞台にかなり近めの作りです。また1階席は列ごとの段差がかなり大きくとられているので、前の席の人が邪魔にならず舞台が良く見えます。これほど段差がとられているのはコンサートホールとしては珍しいです。舞台が近くて見やすいので、演劇などにすごく向いていそうです。舞台上を見ると、弦は両翼配置で、ハープは上手に2台。後方の雛壇を見ると、ベルが見あたりません。ですので、ベルは客席のどこかにあるのだろうと、あちこちを見上げても、それらしいものは見えません。そこで、開演まで時間もあることですので、2階客席を偵察に行くことにしました。 すると! 2階の左サイドブロックの客席が全部、お客さんが入れないように封鎖されていました。なるほどここで合唱団が歌うのだな、と思って、さらにそのブロックを良く見ると、奥の方に、何やら小さな鐘が数個置いてあります!通常のチューブラーベルではなく、ハンドベルに見えます。ぶら下げる器具のような物はありません。そうか、ここで児童合唱と鐘を鳴らすのだな、なかなか良い配置だ、しかしあのベルはどうやって鳴らすのだろう、手で持って鳴らすのだとすると人手がいるな、などと考えました。(プログラムには明確にハンドベルと書いてあったのですが、それを見たのは終演後だったので、このときはまだ、これが本当にハンドベルなのかどうか、確証が持てませんでした。) 折角ここまで来たついでに、一応反対の右サイドも見に行きました。 するとすると! なんと、2階右サイドの客席も、全く同じように封鎖されています。しかも、奥の方には、やはり小さな鐘が数個置いてあります!これは驚きました!左右両サイドにベルがある、両翼配置(^^)なわけです。これまでのマーラー3番の演奏会で、合唱の高所客席配置は時々体験していますし、合唱の客席両翼配置も、稀に経験しています。(井上道義とオーケストラアンサンブル金沢&新日フィルの2009年の富山公演がそうでした。)しかし、3番の鐘の両翼配置は、僕はこれまで見たことありません。これは一体どんな響きになるのだろうかと、俄然面白くなって来ました。2階に来たついでに、さらに上の階にも行ってみました。 するとするとすると! 4階左サイドのブロックも封鎖されてお客さんがはいれないようにしていました。いやぁこれは謎です。この4階左サイドは何に使うのだろう?さっぱりわからなくなりながら、そろそろ開演時刻が近づいてきたので、1階の自分の座席に戻ることにしました。1階の座席に戻り、そこから4階の左ブロックを見上げると・・・。ステージに近い端に、譜面台が一つ、謎掛けのように置いてあります。それでは、まさか独唱がここで歌うのだろうか?と謎が深まりました。そうこうするうちに開演時刻が近づいてきました。1階のお客さんはもう満員の入りです。携帯の電源などに注意を促すいつもの場内アナウンスが流れていました。その中で途中1回、「・・・本日の公演はPAを使いますので・・・」というアナウンスの言葉が聴こえたように思い、おやっ?と思いました。通常クラシックのオーケストラのコンサートでPAが使われることはないからです。僕は聞き間違いだろうと思って、そのままスルーしました。やがて定時になり、オケと指揮者が入場し、演奏が始まりました。冒頭のホルン斉奏、力強く立派です。「ギアダウン」(主題呈示の途中で急にテンポを落とす、大植、アルミンク、ノットなどが近年用いる解釈)はなく、主題提示の終わった11小節からじっくりとテンポを落とす、通常の落ち着いたスタイルです。 この楽章の途中で、夏の行進が小さく始まってしばらく続いていくところで、弦楽が半分の人数で弾くところ(練習番号21~25と、63~65)がありますね。ここは通常は、指揮者に近い方のプルトで弾かれます。まれに、各プルトのおもて奏者が弾くこともあります。今回はそれらと異なり、指揮者から遠いプルトの奏者が弾いていました。このやり方は、2011年の大野和士&京響で1回見たことがあるだけの極めて稀な方法です。夏が遠くから来てやがてここに来るというイメージなのでしょうか。大野さんのときに感じた少なからぬ違和感は、今回は特に感じませんでした。 それから今回、ホルン主題再現の直前の小太鼓は、ちゃんと舞台裏でやってくれました。しかもこのとき良かったのは、舞台裏とステージとの間のドアを閉めて叩かせたことでした。ここはしばしば、舞台裏とは言ってもドアを開けたままドアのすぐ裏で叩かせて、その結果客席にも盛大に鳴り響き、距離感がまるでない小太鼓になりがちです。ドアを閉めることで距離感を保とうという配慮には感心しました。 なおホルン主題時のシンバルは、提示部は一人、再現部は二人で、スコアの指示よりどちらも少ない人数ではありましたが、両者の差をつけているという点は、マーラーの意図を汲み取ったやり方でした。 オケの技術はアマオケとしてかなり高いものでしたし、指揮者の作る音楽は、輪郭がシャープでありながらも、テンポを落とすところは腰を割ってじっくりと落として、ゆったりした落ち着きも合わせ持ち、なかなか良い感じです。上記したようなマーラーの意図に添った気配りが、あちこちで感じられて、かなり好感を持った第一楽章の演奏でした。第一楽章が終わると、驚いたことに、すぐ指揮者が退場してしまいました。そして合唱団が入場して来ました。女性合唱団は舞台後方に普通に並び、児童合唱団は、2階客席の両サイドブロックに、入場して来ました。女性合唱団も児童合唱団も、どちらもなかなかの大人数です。この入場のひとときに合わせて、オケの奏者の一部も三々五々と舞台から退場し、一呼吸置いていました。先日のアマオケの3番では第一楽章が終わった後に客席を含む完全な休憩が取られましたが、今回は演奏者のみの休憩だったわけです。 (ひとまずここまでとし、この続きは次の記事に書きます。)

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