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じゃくの音楽日記帳

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2016.07.18
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カテゴリ:演奏会(2016年)

ノット&東響のブルックナー8番を聴きました。

指揮:ジョナサン・ノット
管弦楽:東京交響楽団
ブルックナー 交響曲第8番
7月16日 サントリーホール

ますます充実路線を邁進するノット&東響。彼らのブルックナーを聴くのは、7番に次いで2回目です。7番は、両翼配置の利点が良く出た、スケール感はないけれど引き締まった、なかなか好感の持てるブルックナーでした。今度の8番はどうなるでしょうか。

ホールに入ると、ステージ上と天井からぶら下げられた多数のマイクが目立ちます。今回の演奏が、録音されCD化されるようです。

開演時刻が近づいてきて、いつもの場内アナウンスが流れ始めましたが、あれっ、いつもとちょっと違います。近年のサントリーでのアナウンスは、大体「演奏の余韻を最後まで楽しむため、他のお客様のご迷惑にならないよう、拍手は指揮者のタクトが下がるまでお控えください」というようなアナウンスが流れます。ところが今回のアナウンスは、一段と念入りなフレーズになっていました。正確な言葉は覚えていませんが、「指揮者や演奏者にとっては、余韻も音楽の一部です。演奏に満足していただけましたら、指揮者のタクトが完全にさがりきるまで拍手はお控えください」というようなものでした。

今までは「他のお客様に迷惑」だったのが、「指揮者や演奏者にとって」と一歩踏み込んでいますし、さらに「余韻も音楽の一部です」とはっきり言及しています。ここまで一段とメッセージを明確にしたアナウンスを聴くのは、僕は初めてです。今回は録音するという事情もあってのことでしょうが、フライングの拍手・ブラボーをなんとか防止したいという強い気持が感じられます。

近年、場内アナウンスがだんだんと具体的・直接的になって来ていますが、それでもなかなかフライングの拍手やブラボーがなくなりませんね。このように一段と明快なアナウンスを繰り返して発していくことが大事かと思いました。

さて、オケの人数・配置です。今日も弦は両翼配置です。弦は変則16型で、16/16/12/10/8でした。第二ヴァイオリンを増強して、第一ヴァイオリンと同数にしているわけです。ハープは、舞台下手の前面に、「できれば3台」というスコアの指定通り、3台配置されています。金管は、ホルンはアシストを入れて9人と普通ですが、トランペットとトロンボーンが通常3人のところそれぞれ4人!と増員されています。かなり気合のはいった布陣です。

さらに、金管の配置が、良く考えられていました。金管は、舞台後方に横に幅広く広がって1~2列に並びました。指揮者の正面(センター)から向かって左側(下手側)には、ホルンが2列に並びました。前列のセンターに1番が座り、そこから下手側に順に2番、3番、4番で、アシストは1番の上手側でした。ホルンの後列は、センターから下手側に順に5番、6番、7番、8番で、この4人がワーグナーチューバ持ち替えです。
センターから向かって右側(上手側)は、1列目は椅子がなくて空間になっていて、2列目は、5番ホルンの隣にバス・チューバが座り、その上手側にトロンボーン4人が座り、そのさらに上手側にトランペット4人が並びました。通常と違ってトランペット隊が一番外側になっていたわけです。こうすることにより、ワーグナーチューバ4人とバス・チューバが5人固まって横一列に並んだわけです。ブルックナーではこのようにワーグナーチューバとバス・チューバを固めるのは、賢明な方法と思います。

演奏が始まりました。ノットさんの両翼配置のすぐれたところは、随所でセカンドヴァイオリンを強調して、それにより音楽の構造が立体的になる点です。このことは7番のときに感じましたが、今回も同じ魅力が十分に伝わってきました。このために第二ヴァイオリンを増員しているのだな、と合点がいきます。

テンポはわりと早目で、大きなテンポ変化はなく、わざとらしいようなところは皆無で、ぐいぐい進んで行き、推進力と緊張感に満ちています。ノットさんはすこぶる気合が入っていて、「ハッ!」という、半分息、半分唸り声みたいな声を時々、曲の後半ではしばしば、発しています。オケもその気迫を受け止め、引き締まった演奏が進んで行きます。決して悪い演奏ではありません。

しかし僕には、何かテンポの運びが単調というか、堅苦しい感じがします。そして何よりも、フォルテの箇所がくると、音楽が力みすぎて窮屈な感じ、耳にきつい感じがしてしまいます。僕の求めるブルックナーのフォルテは、力まず、ある意味力が抜けて、空間にひろびろと拡散していくようなフォルテであってほしいのです。そういう僕のイメージでいうと、ブルックナーを聴いているという感じがあまりしてきません。決して悪くはないのですが、残念です。

そんなことを思いながら聴いていると、いよいよ曲の終結がやってきました。ノットさんはタクトを上げ、最後の音が鳴りやみ、残響が消えていきます。さぁ、タクトが降りるまで静寂が得られてほしいです。

しかし。
ホール内の残響が消えたその瞬間ただちに、たった一人の聴衆から、大きな「ブラボー」の声が発せられ、その声はホールの隅々まで否応なく響き渡りました。余韻は無残にも打ち破られました。

普通なら、こういったフライングブラボーに引っ張られ、ぱらぱらと拍手が小さく起こるか、あるいは他からもブラボーの声があがりますね。しかし今回は、そういう「引きずられ現象」がまったく起こりません。その聴衆一人だけの「単独フライングブラボー」が、約2-3秒でしょうか、ホールに響き渡り、そしてそれが終り、再びホール内は完全な静寂に包まれました。しかしもはや、大事な余韻はぶち壊しです。そしてほどなくノットさんはタクトをおろし、ぱらぱらと拍手が少しずつ始まり、だんだんと盛り上がっていきました。

僕はこの日はPブロック5列目の右寄りの席に座っていたのですが、この大ブラボーは、僕のすぐ後方から発せられました。おそらくPブロック7列目一桁台の席と思われます。拍手が始まってからすぐに、僕を含む周囲のかなり多くの聴衆は、思わず、声がした方の席を振り返り、誰が声を発したのかと探りました。二度とこんなことされてはたまらない、という気持ちを伝えたいです。すると、発したとおぼしき人とその連れの方でしょうか、お二人が、そそくさと席をたって、逃げるようにホールを出ていきます。僕のそばにいた別の聴衆は、立ち上がって、こぶしを振り上げて、怒髪天を衝く雰囲気で、怒っています。

録音していることが一目瞭然でわかるマイク群、そしてあれほど念入りな場内アナウンス。それがあってもなお、ここまで無神経な、無配慮なブラボーを発する人がいるとは。まさか意図的にやったとは思いませんが、ついうっかりだから許してね、では済ませられない、破壊的なフライングブラボーです。サントリーホール30年の歴史上でもおそらく屈指の不祥事たる、巨大単独フライングブラボー。。。

その後、拍手は徐々に盛り上がり、そして、ホールの底全体から湧き上がるような重心の低いブラボーが、うねるように生じてきました。これはこれで、すごい迫力がありました。「これが本当のブラボーだ!」という皆の気持ちが一つになったような、ノットさんと演奏者を称えるブラボーでした。

かつて2005年、スクロヴァチェフスキ&読響のブルックナー7番の演奏会で、おそらく今回と同じレベルの破壊的なブラボーがあったのだと思われます。(僕はその現場には立ち会っていないので正確なことはわかりませんけど。) おそらくその事件を伏線として、2010年のスクロヴァチェフスキ&読響のブルックナー7番の演奏会から「拍手は指揮者のタクトが下がってからお願いします」という場内アナウンスがサントリーホールで始まったのだと思われます。そして同様のアナウンスが、他のホール、他のオケでも広まっていき、東京一円ではこの頃は普通に放送されるようになりました。こういうアナウンスが、ここ数年、フライングブラボーを減らすのに一定の効果をあげてきているのは確かだと思います。しかしまだまだ、このような酷いブラボーが起こりうる危険があるのだな、ということを痛感しました。

早くブラボーを叫びたいという衝動を持っている方、どうか今回のアナウンスの意味を、ご自分の行為の及ぼすひどい影響を、真剣に考えて欲しいです。

○「指揮者や演奏者や聴衆、そこに集うすべての人にとって、余韻は音楽の一部です。」
そして蛇足を承知で付け加えます。
○「残響が消えても、指揮者のタクトが下がりきらない限り、余韻は続いているのです。」

付録:2005年や2010年のことは、「拍手は指揮者が手をおろしてからお願いします」というアナウンス in 読響定期演奏会」の記事に詳しく書きました。

それに関連して余韻について考えた記事
「余韻考(1)」 「余韻考(2)」 「余韻考(3)」も合わせて、ご覧いただければ幸いです。







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Last updated  2016.07.18 10:23:20
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Re:巨大単独フライングブラボー事件 in ノット&東響のブルックナー8番演奏会(07/18)   嫌好法師 さん
じゃくさん、こんばんは。
過去の文献も読ませていただきました。
もう仰る通りでございます。何も足さない何も引かない。それにしても今回のSEFブラボー、酷かったですね。読んでいるだけで怒り心頭です。そそくさと帰られたその方は二度と同じ過ちはしないと信じたいです。 (2016.07.18 20:16:35)

Re[1]:巨大単独フライングブラボー事件 in ノット&東響のブルックナー8番演奏会(07/18)   じゃく3 さん
嫌好法師さんこんばんは、いつもありがとうございます!
過去の文献(^^;)も熟読していただき、SEFブラボーなどというワタクシの造語を引用までしていただき、とてもありがたいです!自分でもちょっと忘れかけていたので(爆)、読み直してみました。

今回フライングした方は、第一段階の余韻(物理的な残響)が消えるまでは、叫ばずに待っていたのです。残響が消えた直後に叫びました。

したがって、今回のフライングの分類は、一応物理的な残響が消えた直後だったので、SEフライングではなくてEフライングという分類になります(^^)。

きっとこの方は、第一段階の余韻が消えれば拍手・ブラボーをして良いのだという、ご自分の判断、昔風の判断に基づいて、思いっきり叫んでしまったのだと思います。この方のように、未だに「余韻=第一段階の余韻(物理的な残響)」、と理解している人は、昔よりは減ったとはいえ、まだ絶滅していないのですね。

やはり今後は、今回のような場内アナウンスなどを通じて、
「余韻=第一段階の余韻(物理的な残響)+第二段階の余韻(心理的な移行過程)」
であることを、さらに皆の共通認識とすることが大事なのだと思います。

「余韻は残響のみにあらず。」この理解があれば、「タクトが下がりきるまで」の真の意味を理解できるだろうし、そうすればEフライングもさらに減っていくだろうと思います。

音楽家の方々も、遠慮せずこういう発言を積極的にしていただいて良いのだと思います。以前茂木大輔さんが「拍手のルール」という面白い本を出されてました。このような良い啓蒙書(^^)が増えるといいですね。
(2016.07.18 23:04:53)

Re:巨大単独フライングブラボー事件 in ノット&東響のブルックナー8番演奏会(07/18)   快鳥家族 さん
仰っておられる事、至極ご尤もです(過去に咳をしてしまった身ではありますが・・・)
>音楽家の方々
そうですそうです、札幌のS響では過去に、定期演奏会以外の演奏会でO高氏が常々、耳にタコができるくらい聴き手のマナーについて繰り返し語ってらっしゃいました。拍手やブラボーは勿論、飴ちゃん、ハンカチ、傘や杖、果てはチラシ(フライヤー)はカバンの中か座席の下へ・・・という細かい指示に至るまで。
ところが別な某楽団では、不快なお客さんが楽団への多額寄付者とかで事務局もお手上げ?のような物を目の当たりにして、現実の厳しさ?も垣間見ました。
じゃくさんの良識が、皆さまに浸透しますように・・・ (2016.07.20 00:18:53)

Re[1]:巨大単独フライングブラボー事件 in ノット&東響のブルックナー8番演奏会(07/18)   じゃく3 さん
快調家族さんこんにちは、いつもありがとうございます!

S響のO監督(当時)のこと、素敵なお話しです。音楽家の方はなかなかこういうことを発言するのは遠慮されるのか、少ないですね。O氏のような大御所が、我々聴きてのマナーを教育してくだされば、影響力が大きいし、とても良いことですね。

>飴ちゃん、ハンカチ、傘や杖、果てはチラシ(フライヤー)

えーと、ハンカチというのは、謎です。ハンカチで困った経験はないのですのが。。もしかして好きなソリストがカッコ良く華やかなパッセージを弾いても、ハンカチを持って大きく手を振らないで、かな?
あっ、咳が出るときはハンカチで口を押さえて、ということですね!なるほど。

以前そちらにコメントで書かせていただきましたように、咳自体は不可抗力だから良いのです。問題は咳そのものではなく、咳の仕方ですね。口を覆わずに大きな音の咳をする人には、その無神経さを腹立たしく思います。しかし一方で、口を押さえて咳の音を出来るだけ小さくしようとしている方には、同情と、そのお人柄というか、音楽を大事にしているそのお気持ちに、共感を抱きます。

ハンカチは使いみちが多いですね。喉の調子がちょっと悪いけれど、あらかじめ飴をなめるほどではない、でも途中でなめたくなるかもしれない、というときに、あらかじめ飴を出しておいて、膝に置いたハンカチの上に置いて待機させておいたり。

チラシを膝の上に置くのは本当に困りますね。チラシの入ったビニール(?)の袋が曲者で、ちょっと手が触れたりしたときの微かな音、あれ結構耳につきます。当のご本人は全く無頓着ですから困ります。椅子の下か、カバンの中というのを徹底してほしいものです。そもそも、チラシのようなノイズ発生リスクの高いものを、演奏の前にわざわざ皆に配るというのはどうなんでしょうか。いっそのことチラシを演奏会の前に配るのは禁止して、帰りがけに配るだけにすればいいかも、と思ったりします。配り手は、遅い出勤になるので大変でしょうけど。

某楽団の多額寄付者のお話には驚いてのけぞりました!そんなこともあるのですね。そういう方々には、大物指揮者のような方から、うまいことお話していただくしかないかな。
あるいはいっそのこと、場内アナウンスで流していただくとか(爆)!
「カネは出されてもノイズを出されませんよう、お願い申し上げます。」
(2016.07.20 10:58:25)

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