|
カテゴリ:奇特人間
「今年のゴールデンウィークも仙台から東京まで自転車で走ったろうかと思ってます」
と○川君は言った。 なぜ?!と問いかけた。 去年は大義名分があった。 遠距離恋愛の彼女のハートを射止めるために東京まで走った、チャリンコで。 結果はみごとに玉砕!というか他になんか手段があったんでないかい、○川君? が、今年はこれといった目標がないんじゃないか。 彼は答えた。 「伝説を造ったろうじゃないすか」 低音で力強く答えた。 たしかに伝説にはなるけどせっかくのゴールデンウィークなんだから休んだら、 と説得すると、 「後にはひけないっす」 と任侠映画の一場面のようなお言葉。 本気だ、こやつ本気だ。 「とりあえず明日、行く前に寄ります」 男には行かねばならぬときがある。 かつて冒険家植村直己は「なぜ、山に登るのですか?」という質問にこう答えた。 「そこに山があるからです」 宿命であり、その人間の「さが」なのだろう。 そこに自転車があるから、そこに道路があるから、そこに自分がいるから。 これもまた○川君のさがなのであろう。 明日は気持ちよく送り出してあげよう、思う存分自転車を漕いできてくれ。 そして次の日、彼は来た。 お店のドアのガラス越しに見える彼は少し疲れている様子だ。 自転車はかなり軽装だ。 去年は荷物が多すぎて大変だった、と言っていたのを思い出した。 今年は去年の経験を踏まえて無駄な荷物をはぶいたんだな。 自転車を止め、降りようとしている彼にこちらから近づきエールを送った。 「明日はがんばってこいよー!」 すると彼はこんなことを言い放った。 「いや~ビリヤードしてたら疲れたんで明日はやめました。」 フヘッ?!まじで?! おもわず助走を付けてのアックスボンバーをくらわしたくなった。 だったら初めから伝説かたんなよー!!! 「んじゃーまた、いや~疲れた疲れた。。。」 そう言い放ち去っていく疲労感たっぷりの後ろ姿は伝説造りにはちと荷が重い のかもしれない。 でもいつかやってくれるだろう、来週あたりどうだい、○川君? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[奇特人間] カテゴリの最新記事
|
|