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カテゴリ:人情話
四代目天中軒雲月先生の「巌流島」への挑戦は今日で143日目。 それと並行して、徳川夢声氏の「宮本武蔵」の朗読を聴いた。 インターネットNHKのオンラインショップでCD上中下巻各5460円。
市立図書館ではテープで全20巻木箱入り。 閲覧室ではなく、既に資料室に収蔵されていた。 他に借りては居なく、独占状態。 早速原作本宮本武蔵(1)~(4)の全巻を借り出して、 「巌流島の決闘」を拝聴した。
「巌流島の決闘」部分は、 第19巻と20巻それぞれ90分の大作であった。 原本の不要な部分を数ページに渡って削除したり、 又反対に夢声が原本にない言葉や解説を加えたりしたところもあった。 楽しく聞かせていただいた。
私が知っている徳川夢声氏は晩年のテレビのみであり、 その声の質は全然違っていた。 巻外に武蔵朗読に寄せた夢声の心境を語ったものがあり、 もう一つは吉川英次と夢声との対談もテープで残っていた。 「巌流島」を学ぼうとする私には、誠に有意義であった。
これをきっかけにして、徳川夢声氏の朗読による宮本武蔵20巻を、 全て原作と比較しながら、聴く事にした。 1本のテープの裏表を聴くだけで、1時間30分かかった。 全部聴くのに20日かかってしまうので、 1日2本のペースで聴いた。
本を自分で読む事と、朗読を聞くとの一番大きな違いは「速度」・・・ 実にゆったりとしている。 テープを聴きながら本に目をやっていると、朗読が半ページで、 黙読が2ページ位進んでしまう・・・ 慣れないと、なかなか同時進行ができない・・・ でも、読んだだけでは見逃している情景やら 心の機微などが捉えやすくなっていた・・・
全巻を拝聴して痛感したことが、大きく2点あった。
その一つは、徳川夢声氏独特の、「間」である。 句読点において、「長」、「中」、「短」位の間は、 誰が喋ってもその雰囲気は出せるが、 「超長」とも言える、「実に長い間」がある。 これがあるがために、心によく沁みる。 また流石に超一流の活動弁士だったゆえに、 立て板に水の如く、言葉がほとばしる場面もあった。 縦横無尽、自由自在の境地の語りであったと感じた・・・
もう一つは、俗に言う声色(こわいろ)という分野である。 吉川英次氏の原作本には、武士、町人、女、子ども、御婆など、 実に多彩な人物が登場してくる。 このすべての人物を自分の声で表さなくてはならない。 極めて難しい課題である・・・ 主人公やそれを取りまく中心人物5~6人なら何とかなろうが、 そうは行かぬのが、この宮本武蔵・・・ しかるに、全編を聴いても、何処にも違和感がなかった・・・ 登場人物を見事に演じ切っていた・・・ 実に凄いことである・・・
借用したテープは、20本とも、ほぼ90分程度に収めてあった。 原作本と見比べたら、8割から9割がテープで語られていた。 削除されている部分は、武蔵が全然登場しない場面。 武蔵を取り巻く状況の補足であるから、 欠落しても違和感がない・・・
余りにも素晴らしいので、借用したテープをいったん返却し、 再び借用して、拝聴した。 今度は原作本と見比べをせず、ひたすら聴く事にした。 まだ季節は冬。6時になってもまだ暗い。 4時に目覚ましを掛け、7時まで2本を聴いた。 カセットプレーヤーにイヤホーンというスタイルだ・・・
若い頃に一度全巻を読んだことがあったが、 内容の理解については、今回の方がはるかに高かった・・・ 改めて、吉川文学の素晴らしさを痛感するとともに、 徳川夢声氏の話芸のもの凄さも実感できた・・・ 「巌流島」口演の背景にはなくてはならぬものであった・・・
この夢声氏の宮本武蔵の存在を教えていただいた、 私の人生の大先輩に改めて感謝している・・・
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Last updated
2012.07.18 14:45:57
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