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テーマ:木枯し紋次郎(185)
カテゴリ:本を読む
帰って来た木枯し紋次郎を読む
若くはない肉体だが、貧弱に衰えてはいない。三十年にわたって生死を分ける街道を、歩き続けて来たことが証明されていた。無宿の渡世人が生き延びるには、強靭な身体であることが第一なのだ。傷跡が多いことも、うんざりするほど修羅場をくぐり抜けて来たという紋次郎の過去を、忘れさせないように物語っている。 天涯孤独の人間は、親密な知り合いがいることを想像したがる。それがいつの間にか、作り話になってしまうのである。特に名の知れ渡った相手だと、むかしからの知り合いだとまわりの者に吹聴する。一種の自己満足であり、それで寂しさを紛らわせるのだ。 「おしなさんは、あっしにかかわりのねえお人にござんした。何ゆえ仏になりなすったのか、あっしには見当もつきやせん。それにまた、そういうことにしておいたほうが、面倒を避けられやしょう」 そんな謎めいた言葉を残して、紋次郎は薄暗い行燈の明かりに背を向けた。 ※板鼻(群馬県安中市) ブログランキング★TV お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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