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カテゴリ:ギャオ
1990年制作のフランス映画です。監督はパトリス・ルコント。この頃、ルコント作品が立て続けに公開されました。「仕立屋の恋」「タンゴ」「タンデム」「イヴォンヌの香り」などを観た記憶があります。
中でもジョルジュ・シムノン原作の「仕立屋の恋」は、傑作でした。小説もよかったですが、映画もそれに劣らぬ秀作です。雷鳴に浮かび上がる若い女性の顔が、印象的でした。 子供の頃から床屋が大好きで、女理容師の亭主になりたい、と念じていたアントワーヌ(ジャン・ロシュフォール)は、中年になって、やっと理想の女性を見つけます。小さな理髪店を独りで経営するマチルド(アンナ・ガリエ)でした。 結婚を申し込むと、マチルドは承諾します。それから10年、二人は幸福な生活を送ってきました。喧嘩は些細なことで一度だけ。アントワーヌは髪結いの亭主として、至福の時を過ごし、マチルドも満ち足りた日々を送ります。 ストーリーは、いたって単純と言えるでしょう。男の回想、という形式をとっているので、カットバックが多用されていますが、それによって、話が混乱することはありません。 子供の心を持ったまま中年になった男と、生い立ちのわからない謎の美女との不可思議な恋。ひょっとして、これは男の夢物語、幻想だったのでしょうか。 ルコント監督特有の官能美が、この映画のすべてでしょう。少年があこがれる赤毛の女理容師。中年男を虜にする若い美女。彼女たちが存在しなかったら、この物語は成立しません。 終局は、いささか唐突、と言えます。二人が理髪店の前の店主を養老院に訪ねるシーンがあり、あるいはこれが伏線になっているのかもしれません。 ラストで男が踊るアラビア風の珍妙なダンスが、人生の虚しさ、儚さを象徴しているようでもあります。「仕立屋の恋」には劣りますが、ルコントらしさが発揮された作品として、一見の価値はあるでしょう。 蛇足ですが、<髪結いの亭主>とは、妻の稼ぎで暮らす夫、という意味があります。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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