テーマ:食べ物あれこれ(49499)
カテゴリ:グルメ
秋の味覚というと、松茸が一番ですが、国産品は100グラム1万円を超えていて、庶民には手がでません。 我々でも手が届く秋の味覚は、やはり秋刀魚でしょう。今年の漁獲量はどうなっているんでしょうか。豊漁なら値段も手頃になって、安心して食べられるというものです。 秋のサンマは脂肪分が多く美味で、特に塩焼きは代表的な食べ方といえます。ライムやかぼす、スダチ、柚子、レモン等の絞り汁を振りかけたり、大根おろしと共に食べるのが一般的です。 蒲焼きの缶詰は、水産物缶詰のなかでもポピュラーなもののひとつ。近年では刺身としても流通しており、脂の乗り切らない初秋が食べ頃とされています。他の青魚と同様に酢じめしても美味です。 写真はつるかめ食堂(歌舞伎町)のさんま定食。そしてさんまといえば、自然に思い出すのが佐藤春夫の「秋刀魚の歌」です。 あはれ秋風よ 情(こころ)あらば伝えてよ 男ありて 夕餉にひとりさんまを喰らいて 思いにふける と この詩の白眉は、次の一節でしょう。 あはれ 人に捨てられんとする人妻と 妻にそむかれた男と食卓にむかへば、愛うすき父をもちし女の児は 小さき箸をあやつりなやみつつ 父ならぬ男にさんまの腸(わた)をくれむと言うにあらずや ここを読むたびに、涙がこぼれて止まりません。野暮を承知で注釈を加えると、「人に捨てられんとする人妻」というのは谷崎潤一郎夫人の千代。「妻にそむかれた男」は佐藤春夫。「愛うすき父をもちし女の児」は谷崎夫妻の長女です。 この関係は谷崎潤一郎「神と人との間」「蓼食う虫」「佐藤春夫に与えて過去半生を語る記」佐藤春夫「この三つのもの」などに書かれています。興味がある人は、古書店で見つけてください。 それはさておき、安くて美味しいさんま。旬のうちに大いに食べましょう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006年10月09日 21時58分30秒
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