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不良中年・天国と地獄

不良中年・天国と地獄

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2014年11月19日
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カテゴリ:読書
志賀直哉は短編の名手です。
多くは、身辺の出来事を簡潔な文章で彫り上げたもの。
小説の神様、文豪と仰ぎ見られた存在でした。

今回読んだのは、「城の崎にて」という短編。
山の手線の電車に跳ねられた作者が、
療養に訪れた温泉地での見聞録、といったらいいでしょうか。

戦前の日本には、歩道橋がありませんでした。
山の手線には、ほとんど踏切もありません。
急ぐときは、線路を横断するしかなかったのです。
現在のようにダイヤも過密ではなく、渡る余裕がありました。
作者が跳ねられたのは、そっちの方が珍しかったんでしょう。

閑話休題。温泉で退屈な日々を過ごす主人公。
窓の外を眺めたり、散歩をしたり。
隣の屋根瓦に蜂の死骸がありました。
夜半に降った雨で、死骸は流されます。
あの死骸はどこへ行ったのだろう。

ある午前、主人公は散歩に出かけます。
川っぷちを歩いていくと、人々が集まって騒いでいます。
大きな鼠が泳いで逃げようとしています。
鼠の首に、7寸ばかりの釘が刺さっていました。
石垣に登ろうとしても、釘が邪魔して登れません。
見物人は面白がって、石を投げたりします。
いずれ鼠は死ぬだろう。
主人公は、鼠の最後を見る前に、その場を離れます。

別の日、町から小川に沿って歩いて行きます。
薄暗くなってきました。
引き返そうとした時、半畳ほどの石の上に、
一匹のイモリがへばりついているのを見つけました。
何気なく石を投げると、それは見事にイモリに当たります。
絶対に当たるはずがないのに、偶然にも当たってしまったのです。
イモリは死にました。 

自分は電車に跳ねられたが、偶然にも死にませんでした。
蜂は原因不明で死骸になりました。
鼠は首に釘を刺されて意志とは反対に死の運命を迎えます。
イモリはまったく偶然に石が当たって死んでしまいます。
生き残った自分と、死んだ禽獣との差はどこから来たのだろう。

生と死は、両極ではありません。
それは隣り合わせのものでしょう。
偶然が、死と生を分けたのです。
それはフェータルなものかもしれません。
運命に感謝しなければ、と主人公は思います。
しかし、喜びの感じは湧き上がってきませんでした。

生とは何か、死とは何かを問うた、傑作短編です。
未読の人には、強くお薦めします。





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最終更新日  2014年11月19日 09時43分27秒
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