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空想作家と専属イラストレーター&猫7匹の                 愛妻家の食卓

空想作家と専属イラストレーター&猫7匹の     愛妻家の食卓

『天使の手鏡』・第1章~第2章

『天使の手鏡』

恋をしていますか?

愛する人は居ますか?

その人と出合ったこと、

巡り合ったことを偶然だと思いますか?

考えてみれば・・・

なぜ、あの時?なぜ、この人と・・・

そう思うことはないですか?

例えば運命の糸とか・・・

もし、それが何か見えない不思議な力、者によって導かれたと言えば

あなたは信じますか?・・・。



第1章・『翼科』・・・第1話

私は天使です。

私たち天使は神様と人との中間にあたる存在で、神様のように不思議な力を持ち、人のように心と命を持ってこの星に生きています。

さて、皆さまは天使というと、どう想像しますか?

私の見た目は背中に翼があることを除けば人と何も変わりません

この私も地上のどこにでもいそうな男です。

しかし、見た目は変わりませんが、人とはまったく違った存在と言えるでしょう。

それは、誰もがご存知の様に翼を持ち、鳥のように飛ぶことができますし、

寿命は人の10倍は長いでしょう。というより、他の生とは違い死は無く、大抵の場合は何か特別な理由で肉体が朽ちるという理解が正しいのかもしれません。

そして、人に見ることができないもの見れ、聞こえないものを聞けたり感じたりもできます。

そして、その他に天使は個々に特別な力、能力を持っています。

私たちは人の概念をはるかに超えた存在なのです・・・


天使は空、天空と呼ばれる所に暮らしています。そこで人と同じような生活をしています。
 
しかし、その生き方は少し違っています。

天使には仕事というものは無く、全てが神様からの使命によって生き、それを生涯まっとうするのです。

そして、私の授かった使命は天使の医者です。

と、言っても、天使には病気などほとんどありません。私は天使が持つ翼の専門医なのです。

天使には翼が最も重要なものなのです。

だから毎日、私の診療所には沢山の天使たちが訪れます・・・。



「次の方どうぞ」

〔はい、よろしくお願いします〕

小さな男の子を連れた女性が入ってきました。

「今日はどちらですか?」

〔この子です。急に翼が痛むと言って・・・〕

母親は心配そうに男の子の頭を撫ぜました。

「それじゃあ君、後ろを向いて先生に翼を見せて」

〔はい・・・〕

男の子は小さく返事をして後ろを向きました。子供の翼は大人とは違って羽一枚一枚が柔らかく、つややかです。私はそっと翼を触って様子を診ました・・・

そう、私には翼に触れるだけでその状態が分かるという特別な能力を授かっているのです。

死の無い天使にとって翼は唯一の命といってもいいほど大切なものなのです。

だから私のような者が必要なのです。

「・・・心配はいりません、ただの成長による痛みですね。翼が大きくなろうとしているのです。心配はいりませんが大事な時です、痛みがあるうちは無理をしない方が良いでしょう。あと5日もすれば良くなりますよ」

〔そうだったのですか、安心しました。どうもありがとうございました〕

「きっと、りっぱな翼になるからね」

〔はい・・・〕

男の子は結局、1度も目を合わせてくれませんでした。子供には嫌われる存在なようです・・・

「次の方どうぞ」

〔はい、お願いします〕

現れたのは背の高い青年でした。

「どうしました?」

〔はい、どういうわけか翼の羽が凄く抜けて・・・とても大事な時なのに・・・〕

「羽が抜ける?・・・ところで大事な時とは?」

〔はい、待ちに待った使命を授かったのです・・・〕

「それはおめでたい。それで、君はどんな使命を?」

〔私の使命は人の運命の糸が何かの障害で切れてしまったのを再び結ぶか検討して修復するという使命です〕

「それは責任のある立派な使命じゃないか」

人に関わる使命は言わば花形のようなものです。

〔・・・しかし、私の父も母も兄もズリの実を育てる使命なのに・・・なぜ私だけそんな責任の重い使命を授かったのか・・・〕

ズリの実とは天使が主食とする木の実です。天使はみんなこれ以外にも沢山の木の実や果物を食します。もちろん地上には存在しない物ばかりです。天使は完全なベジタリアンといえるでしょう。

「なるほど・・・それで戸惑いとプレッシャーを?」

〔はい・・・〕

「それでは後ろを向いて翼を見せてください」

青年の翼は大きさも形も立派でしたが、言ったとおり羽がひどく抜け落ちていました。

「・・・ストレスによるものですね・・・家系がどうであれ、自分がどうであれ、神様から授かった使命ではないか、何を戸惑う?何を恐れる?
君がその素質があるから選ばれたんだ」

〔はい・・・〕

「それに、君が受けなければ誰かが変わりにというものではない、その使命は消えて無くなってしまうのだぞ?君が人の運命を無くしてしまうということだぞ?
それをもう一度考えてみなさい」

〔はい〕

「悩むのではなく使命の意味を考えてみなさい、そして、また来なさい」

〔はい、分かりました。ちゃんと考えてみます。ありがとうございました〕

この患者の治療は少し時間がかかるでしょう。
それは私の手だけでは治すことができないからです。

彼もまた選ばれし者、私のように何か特別な能力が備わっていることでしょう。
ただ彼はまだ、それに気が付いていないのです・・・

かつての私もそうでした。初めてこの使命を授かった時、地上で務めたかったのと、あまりの大役に戸惑ったものでした。

しかし、ある時偶然に傷ついた翼を持つ天使の翼に触れた時、その翼から全てが伝わってきたのです・・・
それは驚きでした。そして、同時にこの使命の素晴らしさ知り、自信を与えてくれたのです。

今ではみんなに私のできる限りをしてあげたいと思うようになりました。
それがもし、翼の治療とは関係ないとしても・・・

そうして、ここに訪れる患者とふれあいながら診察をする日々が続く中、私の運命を変えるきっかけとなる天使と出会うのでした・・・

「次の方どうぞ」

〔よろしくお願いします・・・〕

その患者は私と同じぐらいの背格好のオルガという天使でした。

つづく。





『天使の手鏡』第1章・『翼科』・・・第2話


「どうされました?」

〔それが・・・〕

「何か言いにくいことですか?まぁ、とにかく翼を診ましょう」

彼の様子を見て、私はまず翼を診ることにしました。

「う~ん・・・診る限りでは健康的な翼に感じますが?」

〔この翼は動かないのです・・・広げようとすると痛みが酷くて・・・〕

「動かすと痛みが?・・・もう1度よく診てみましょう」

翼に触れて悪い所や原因が分からなかったことなど今まで1度もありませんでした・・・

「少し力をぬいてください」

しかし、何も感じれず、私は彼の翼を手でつかみ、左右、上下と動かしてみました。

〔痛っ!〕

私は慌てて手を離しました。

「どうやら・・・これは病気ではないですね。運動をしないと体が硬くなるようにただ翼を動かす筋肉が弱まり、固まっていると思われます」

〔・・・〕

「これは治療ではなくリハビリのようなものが必要ですね」

私がそう診断すると無口だった彼が語りだしました。

〔そうですか・・・情けない・・・天使が飛べなくなるなんて・・・〕

「・・・しかし、どうしてこんな事になったのですか?一体あなたの使命は?ここに閉じこもっている私でさえ、ここまでにはなりません。ここまで硬くなるには相当な時間、翼を使っていないことになりますね?」

〔先生に話しても理解できるかどうか・・・私は今、噂になっている人に対する使命を拒否している団体の1人です〕

「えっ!噂だけかと思っていましたが・・・」

〔私の使命は人の運命の糸よりもずっと単純な糸、縁(エン)をひたすら繋いでいくという使命でした・・・しかし、今の人の姿はどうでしょう?
電波というものをそこら中に飛ばし、私の使命など必要とはしないのです・・・先生は異常な今の世界を知っていますか?
私たちがいくら繋げようとしても手を差し伸べようとしても無駄なのです。
もう私たちは必要ないのです・・・〕

「・・・しかし、使命を必要ないなどと考えてはいけません!神様が必要のないものを私たちに授けるわけはないでしょう」

〔やはり先生は分かってらっしゃらない・・・いや、知らないのですね〕

「知らない?」

〔いいでしょう先生には真実をお教えしましょう。
今やもう神様は人から離れ、私たちから離れ、この世界を去られた・・・
今、全ては熾天使様・智天使様(してんし・ちてんし 天使のトップで最も神様に近い存在だと言われている)によって決められているのです〕

彼は耳を疑うようなことを平然として言いました。

「神様が離れたなど・・・そんな虚言、誰が信じますか!」

私はあまりの虚言に怒声を上げてしまいました。しかし、彼は変わらず平然と話を続けたのです・・・

〔では、私の翼に触れていてください。先生は翼から全てが分かるのでしょう?〕

「分かった・・・」

私には翼から心まで読める力もありましたが、封印していました。

しかし、真実を知るために私は彼の翼に手をあてました。

「・・・」

彼は故意に嘘はついていないようでした。

〔私が言っていることは全て真実、現実なのです。人は増えすぎ、進化しすぎました・・・昔は本当に良かった・・・人は信じ、耳を傾け、私たちも助言し、導くことができました。
人はそれを受け入れ、交流さえありました。それが今や目の届かないほどに増え、私たち天使はいらないとばかりに自我を通し、ひどい状態に成り果ててしまいました・・・
人を導くのが私たち天使全体の使命、今はそれを果たしてはいません!
そして、神様さえこの世界を見捨てて行ってしまわれた・・・私たちを残して・・・〕

耳を疑うような話しでしたが、彼の翼から感じるかぎり、作り話を言っているようには感じられませんでした。しかし・・・

「しかし・・・それが仮に本当だとすれば、なぜ神様は私たちをここに残されたのだ?」

〔それは私も疑問でした・・・それで主天使様(天使の使命、務めを統制する中級天使)を通して智天使様にお伺いしたのです・・・〕

「智天使様はなんと?」

〔務めと責任だと・・・身近に人の世を見ていないから分からないでしょうが、それを見て来た私たちにはその答えがどうしても納得できるものではなかったのです〕

「しかし・・・智天使様がそう言ったのならば、それに従うのが当然のこと、思いだけで自分勝手にすればそれこそ人並みではないのですか?」

〔・・・神様が手放した今、私たちが苦しい思いをしてまで人のために生きる必要も意味もありません、私たちは私たちのために生きようとしているだけなのです・・・
何も堕天使(悪魔に成り下がった天使)になると言っているわけではないのです〕

私は戸惑いました。そして、その戸惑いをかき消すように冷たく言ってしまったのです。

「どうやら分かり合えそうもないですね・・・治療は必要ないのですから、もうお帰りください」

私はもうこれ以上、彼の話を聞く余裕が無かったのです。それが、後に後悔になるとも知らずに・・・

〔そうですか、残念です・・・ありがとうございました〕

「・・・」

彼は席を立ち、出て行く前にこう言いました。

〔先生・・・機会があれば今の地上を見てください。きっと考えが変わるでしょう〕

その彼の言葉に私は言いようの無い思いに襲われました。私は天使でありながら今の人々を知らないのです。

「私は変わりません」

〔いつかまた会う時を楽しみにしています、では・・・〕

彼は行ってしまいました。

神様に仕え、人を導く、それが天使の全てといっても過言ではありません。

それが神様も居なく、人々は私たちを必要としないという・・・
 
真実なのだろうか?・・・私はどうすれば・・・

「神様・・・私たちをなぜ、人と同じように悩む不完全なものに創りになったのか・・・」

疑問と不安が募り、考えることさえも苦しく、最終的には何も考えることができなくなっていました・・・
   
つづく。




第2章・『再会』・・・第1話

次の日、私は心の動揺を隠しつつ、いつものように診察に専念しましたが、
どうしても落ち着くことが出来ず、
このままではいけないと明日、ちょうど休診日だったので以前私の患者でもあった主天使様の所にお伺いしようと心に決めました。

そして、その朝・・・私はいつに無く早起きをしてまた考え込んでいました。

あの天使が言っていたことが願いどおり虚言ならば考えるまでもなく忘れてしまおう・・・

しかし、もし本当だとすれば私はどうすればよいのだろう・・・

そんなことを繰り返し考えて一向に仕度ができずにいました。
私は信じたくない事が真実だったらと恐れていたのです。
なぜなら、あの天使の翼に触れた時、嘘をついているようには感じなかったからです。

しかし、いつまでもこうして考えていても何の解決にもならないと思い、ベッドから起き上がったのはもう昼前でした。
私は今から出向くと迷惑になると思い、結局、昼を過ぎてからの出発にしようと思ったのです。

すると・・・

コンコン!コンコン!

〈先生、いらっしゃいますか?〉

と、誰かが玄関のドアを叩きました。

「どなたですか?今日は休診です。急患でなければ明日にしてください」

〈東の国から来たサラと言います・・・〉

天空は西の国と東の国に分かれています。しかし、それは独立しているわけではなく風の流れの違いを境として、ただそう呼ばれているのです。

「東の国?そんな遠い所からわざわざ私の所に?」

と、言って私はドアを開けました。すると、そこにはとても美しい女性が立っていました。

〈すみません、お休みのところを〉

「いえ、遠くからでお疲れになったでしょう、まずはお入りください」

〈ありがとうございます〉

翼の様子も美しく健康に見えました。

まさかまた・・・不安がよぎりました・・・

「どうなされました?東の国からということならよっぽどのことでしょう」

〈いえ、私は患者として来たのではありません・・・私は100年ほど前までは
こちらに住んでいました。両親は今でもこちらに住んでいます・・・先生、私のこと忘れましたか?〉

「?」

私は記憶を探りました。

〈先生のことは東の国でも評判でした。翼だけではなく心の治療もされる天空一の医者だと・・・昔と変わらないのだと思うと懐かしくて・・・〉

「・・・そうか、思い出した!ジョヴァン二夫妻の・・・サラだね?」

〈そうです!サラです〉

「なんと懐かしい・・・あの泣き虫のサラがこんなに美しく立派になって・・・里帰りの最中に、寄ってくれたんだね、聞くところによると特殊な使命の為に東の国に移り、そちらで結婚したとか・・・」

〈・・・〉

私がそう言うと突然サラは泣き出しました。

「ど、どうしたんだいサラ?何か いけないことを聞いたかい?」

〈・・・〉

「何か悩みがあるのかい?何でも聞いてあげるから話してみなさい」

それでもサラは泣き止まず、泣きながら首にかけていた首飾りを私に見せました。

「それは・・・遺精石?しかも濁っているじゃないか・・・」

遺精石(イセイセキ)契りを交わした者に与えられる透明な石。その者が亡くなると一時期、遺精石は白くにごり、その亡くなった者の魂が入ると言われ、形見とされます。

〈はい・・・〉

「まさか・・・なぜそんなことに?」

天使には病気はなく、寿命も永遠のごとく長い。だから亡くなるということはよっぽどのことだったのです。

〈私の夫は悪魔や堕天使と戦い、そのたくらみを阻止する使命でした・・・〉

「呪いか・・・かわいそうに・・・」

悪魔や堕天使の10の命を奪うと呪いがかかり必ず亡くなってしまうのです。

〈地上にはびこる数が多く、短い時間でした〉

「やはり・・・辛い思いをしたね」

〈はい・・・〉

「サラも特殊な使命を授かったと聞いたが、大丈夫かい?」

〈はい、私の使命は選ばれし者に助言や導きをするという使命です。彼が亡くなって30年やめていますが、もうそろそろ復帰しないといけないとは思っています・・・〉

「それは凄い、主天使レベルの使命だね。それじゃあサラも地上に?今はひどく荒れてしまったと耳にしたが・・・サラは辛くないかい?」

〈はい、私は精神を飛ばすだけで、直接地上へは行かないので大丈夫です〉

「精神を飛ばす?」

〈はい、ここにいながら人の夢や心に私の精神を飛ばすのです。一度、先生も試してみますか?〉

「試す?・・・」

「そんな事ができるのか?」

〈はい〉

「そうだなやってみせてくれ」

私がそう言うとサラは目を閉じ、大きく深呼吸をした。すると、突然胸が温かくなり、心にサラの声が響いたのです・・・

(先生・・・分かりますか?私の声が聞こえますか?)

私は戸惑いながらも心の中で答えてみました。

(サラかい?今、私の中に居るのかい?)

(はい、私は今、先生の中に居ます)

(何だかとても心地よく温かい・・・サラが私の中に居るはずなのに私がサラに包まれているようだ・・・)

(私も同じです。先生の中はとても心地がいいです・・・では、もう戻りますね)

サラがそう言うと私の中の温かさも消え、目の前のサラも目を開きました。

〈どうでしたか?〉

「不思議な感覚だったよ。サラの優しい気持ちに包まれているようだった」

〈なんだか恥ずかしいです・・・先生の中もとても素敵でしたよ、心に直接触れるから分かるんです、その人の全てが・・・それで少し気になったのですが何かお悩みがあるのですか?〉

「そうか・・・サラに隠し事は無理だね。実は一昨日・・・」

私はサラに全てを話した。

〈そんなことが・・・先生がお悩みになるのも仕方ありませんね・・・それで、先生のお考えは?信じるのですか?〉

「いや、それが分からないから今日、知り合いの主天使様にお伺いをしようと思っているんだ。私の考えがどうこうというレベルの問題ではないからね」

〈そうですね・・・でも、嘘であってほしいですね・・・〉

「そうだな・・・でも、ああいう連中が沢山いると思うと不安で仕方ないよ・・・」

〈これから先が心配ですね。でも、私たちは何かが変わってしまったとしても それが始まるまではこのまま使命をまっとうしましょう〉

「そうだな・・・」

つづく。





第2章・『再会』・・・第2話

私はサラと少しの間、思い出話に夢中になっていました。

〈あっ!先生、時間は大丈夫ですか?〉

「いや、すっかり時間を忘れていた、もう出かけないと」

〈お忙しいところ すみませんでした。先生にまたお会いできて嬉しかったです〉

「私もだよ、またいつでも寄っていきなさい」

〈本当ですか?嬉しいです・・・でも、もっと先生があの頃を思い出してくれたら・・・〉

「思い出したつもりだが?」

〈本当はあの頃のように甘えたかったんです〉

「そうか、つい大人になったから女性として接してしまった」

〈それはそれで嬉しいですけど・・・〉

「すまないね、また今度ゆっくり話そう、その時は遠慮せずに甘えなさい」

〈ありがとうございます。それじゃあまた今度、お邪魔します〉

「あぁ、待ってるよ。気をつけてお帰り」

そうして、サラは帰って行きました。


私はサラが言ったあの頃をよく思い返してみました・・・

サラは小さい頃からここへよく遊びに来ていました。いつも明るくて、でも、よく泣いていました。

それに・・・大きくなったら私のお嫁になると困らせたものです・・・

そんな彼女が美しくなり、また私の所へやってきたのです。

私は今までに感じたことの無いとても複雑な気持ちになっていました。

その1番の原因はサラの温かさがまだ少し胸に残っていたからです。

しかし、それは私自身の心が温かくなっていたのかもしれません。

ただ、それが何かその時はまだ気付いてなかったのです。

しかし、それ以上深く考えず、私は主天使様の所へ飛び、向かいました。


そう、真実を知るために・・・


私の知り合いの主天使様はこの診療所の北、天空の外れに住んでいました。

私は風に乗り、雲を越え、彼の元へ急ぎました。

長く飛ぶのは久しぶりでした。都を離れると、ほとんど何もなく、白と青だけの世界・・・

空虚の美しさです。

こうして飛んでいる時にいつも私たちはなぜ空高くに居るのだろうと考えます。

人に関わるならなおさら・・・なぜ鳥のように地上に巣(住居)を持たなかったのだろうかと・・・

遠い、遠い昔・・・地上に行って人を見てこう感じたことがありました・・・私たちと何も変わりは無いと。

だから、あのオルガの様に考えてしまうのかもしれません・・・

私たちの存在の意味を・・・


考えながら飛んでいると遠い道のりも長くはありませんでした。

彼は家の外にある長椅子に座っていました。

〔おや?先生じゃありませんか〕

「ご無沙汰しています」

〔こんな所まで来ていただいて・・・何かありましたか?呼んでいただいたらこちらから出向きましたのに、疲れたでしょう?とにかくお座りください〕

私はお言葉に甘え、隣に座りました。

「先日、とても信じられないことを患者から聞いたのです・・・私はそれを判断できずにいます。それで1度、主天使様にお伺いしようと」

〔分かりました。でも、その前に主天使様はやめていただきたい、友の約束を交わしたでしょう?トマスと呼んでください〕

「しかし・・・」

〔他人行儀はやめてください、それに先生には階級など関係ないのです〕

私は未分類とされる事が多い・・・

「・・・はい、分かりました」

〔では聞きましょう〕

「私の所へ今、噂になっている人への使命を拒否している団体の一人がやって来ました」

〔そうですか・・・やはり先生の所に・・・〕

「私の所へ来たのは予想内でしたか?」

〔先生は皆から頼られています、迷える者たちが訪ねてもおかしくは無いでしょう〕

「私が何を聞きたいのか分かっておられるでしょう?」

〔そうですね〕

「それでは率直に聞きます、神様がこの世界をお見捨てになったというのは本当なのですか?」

私は真相を迫りました。


つづく。


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