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空想作家と専属イラストレーター&猫7匹の                 愛妻家の食卓

空想作家と専属イラストレーター&猫7匹の     愛妻家の食卓

『ニャジロウと蘭風(ランプ)』

『ニャジロウと蘭風(ランプ)』

読み切り短編☆ 猫ラブ読者必見!!カッコイイ猫たちの物語・・・

『ニャジロウと蘭風(ランプ)』

オレはニャジロウ様の5匹の弟子の1匹、
風の蘭風(ランプ)

オレは、あのノラヘイと同じ元は人間だった。
今日はなぜオレが人間から猫になったのか、それを語ろう・・・

オレが人間だった頃、残念だが幸せと感じた記憶はない、
それはオレが幼少時代に左目を失ったからだ・・・

なぜ?

それはあまりにも悲しく、憎く、そして・・・くだらない理由だ・・・
それに語るには時間がかかる、この話は改めてしよう

さて、片目だと1番に不自由なのは、やはり視界が狭い事だ、
オレの場合特に右の顔を髪で隠していたので実際に見えるはずの視界は半分だ

しかし、不思議な事にどこかに不自由があると、そこをカバーするように他の感覚が発達するらしく、生活で困ったことはほとんどない

それが辛くて猫になったのかって?

そうじゃない、オレは自分が障害を持っているなどと思ったことなど無かった。
本当に辛かったのは、それだけで周りの人間がオレを嫌った事だ。

オレは1度として人並みに扱われなかった・・・

見た目だけで判断される辛さが分かるかい?
不気味だの気持ち悪いだのと指される辛さが分かるかい?

いつも距離をおかれる辛さが・・・

たった1つの目の差で、そんなにオレは他と差があるのか・・・
たった1つの目のためにオレの運命は決まってしまっているのか・・・

そんな事をいつも孤独の中、思っていた
オレはいつも独りだった・・・

そんなある時、街外れの大きな吊り橋の支柱が目に飛び込んできた。
この辺りで1番、高い場所・・・

気が付くとオレはその吊り橋の支柱の下にいた。
空に向かってそびえ立つ支柱・・・

もちろん、一般人が登っていい物では無いが、オレは迷わず登った。
怖さも何の感情も無く、ただ無心で、てっぺんを目指した。

「ふぅ~・・・」

たどり着くと、オレは街を見下ろした。
いつもオレを苦しめたものを見下しているようで爽快だった・・・

そして、何といってもさえぎる物が何も無く、
この片目でも楽に360度、見渡せられた事が嬉しくてたまらなかった・・・

オレは時間を忘れ、支柱のてっぺんに立っていた。

「ここからの景色は美しい・・・でも、もうじき暗くなる、戻りたくない・・・」

辛い毎日と見えない未来、オレは心からもう下には戻りたくないと思った。
そして、風があおった・・・

「飛んでしまおう・・・」
オレは飛ぶことを決めた・・・すると・・・

『よう、いい気持ちだな?』
「・・・猫?・・・話をした?」

オレはオレを疑った。幻聴、幻覚・・・まぁ見えてもおかしくはないが・・・

『俺を幻覚だと思っているのか?』
「そりゃそうだろ、こんな場所に猫なんて・・・それに言葉を話しているし」
『お前は他より見えているだけだ』

「見えている?オレが片目のをからかっているのか?」
『そうじゃない、お前は片目だが、そのおかげで他よりも、何に対しても一生懸命に見ようとしてきた、だから他より見えているんだ』

オレは頭までおかしくなったのか・・・

「・・・まぁ何でもいいさ・・・」
『ここから飛ぶのか?』
「あぁ、そのつもりだ」

『下には何も未練がないと?』
「何も無い・・・」

オレは手すりから手を離し、飛んだ・・・

「・・・これで終わりというのに何て気持ちいいんだ・・・」
オレに恐怖は無く、落ちながら色んなものを感じた・・・

『おい、まだ話の途中だったのに』

ふと、横を見るとまた話をする猫の幻覚・・・

「何なんだ一体・・・」
『オレはニャジロウ、お前、オレの弟子にならないか?』

あまりにも訳が分からな過ぎる・・・オレはふと、猫に手を伸ばした。

「触れる?・・・」
『さぁ、時間が無い、はいと言え』
「・・・何者なんだ・・・」

『弟子になれ!』

その時、オレは思った・・・今、この死に逝く状況で常識なんてと、どうでもいいと・・・

「はい・・・」
『よし、よく答えた、お前は今からオレの弟子だ、目を閉じろ・・・』

オレは言われた通り目を閉じた・・・

『よし、目を開けてみろ』
「・・・オレが猫になっている?・・・」

『猫のオレの弟子だからな、お前に名前と力を与える、蘭風(ランプ)、それがお前の新しい名前だ、そして、風を支配する力を与えた、お前にはもう見えるはずだ』

「・・・風が見える・・・風の意思を感じる・・・」
『風に命令するんだ、上げろと!』

オレは風にオレの意思を伝えた、すると、その伝えたとおり風はオレの為に動き、
ニャジロウ様と共にオレを押し上げた。

『上出来だ、そのまま支柱の上まで・・・』
「はい、一つ聞いてもいいですか?」
『あぁ』

「何が目的なのですか?」
『オレたちで世の中を変えるのさ』

「猫が世の中を?」
『そうだ、世を変えるヒーローが猫でもいいだろ?』
「・・・はい」

終わり。

ニャジロウは三毛猫、ランプは白猫です。猫ラブでちょこっと顔をだすので紹介でした。



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