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空想作家と専属イラストレーター&猫7匹の     愛妻家の食卓

つぼ

つぼ

 僕の学校では今、噂話がはや流行っている。たとえば、よくある学校の7不思議とか町の奇怪な話など・・・でも、それはあくまで噂だから実際に見た者や経験した者は居ない・・・

でも、それを面白がって広めようとしたり大げさに言ったりするのが楽しいんだろう、その中の一人が僕の友達だった。

毎日そんな噂話を僕に聞かせる。

〔なぁ、リョウ。知ってるか?2丁目にできた骨董品屋のおじさんが不思議な壺を持っているらしいよ〕

これが噂の発信者のたっちゃん。

「不思議ってどんなこと?」

〔その壺の中に手を入れて、ほしい物を願うとそのほしい物が出てくるらしいんだ〕

「何それ?真実味がないなぁ・・・」

〔でも、そこのおじさん見るからに怪しいらしいんだ〕

「それが噂の理由だね」

〔帰り道だからよってみないか?〕

「うん、行ってみよう」

そうして、放課後。僕たちは噂の骨董品屋に向かった。

〔ここだな・・・〕

「最近できたにしてはやけに古めかしいね・・・」

〔そこがまた噂を呼ぶんだろうな・・・とにかく店のおじさんの顔を拝見しよう〕

「うん・・・」

店をのぞ覗きこむと、さすがに骨董品屋だけあって古い物が沢山、並べられていたが、肝心な店のおじさんの姿は見当たらなかった・・・

〔なんだ、せっかく来たのに休みか・・・〕

「でも、店の中は電気もついてるし、シャッターも開いてるから店の奥にでもいるんじゃない?」

〔興味のあるふりをして、入ってみようか?〕

「いいよ、僕は本当に少し興味あるから」

そうして、僕たちは思い切って店の扉を開けた。

「ごめんくださーい・・・」

〔店の人はいませんかー・・・〕

店の奥からも返事はなかった。

「留守?」

〔でも、骨董品って高いんだろ?無用心だな〕

「そうだね、こんなにいっぱいあるのに・・・」

見渡すと、本当に高価そうな物ばかりだった。

〔これは案外ラッキーだったかもしれないぞ、壺を探そう〕

「だからあれは噂だって」

〔いや、何か感じるんだ・・・〕

確かにたっちゃんの勘は時々鋭かったが、そんな物あるはずもなく、店の中にあるのはただの古い壺ばかりだった。

「ほら、これで納得しただろ?」

〔・・・考えればおもてに出しているわけはないな・・・奥を覗いてみよう〕

「何言ってるんだよ、そんなことやめようよ、もう帰ろう」

〔ちょっと覗くだけだよ・・・〕

「あっ・・・」

たっちゃんは僕の言葉も聞かず、奥を覗き込んだ・・・

〔おい!リョウ・・・これ・・・〕

たっちゃんの驚いた様子に思わず僕も覗き込んでしまった。

「壺?・・・」

小さな何もない部屋の真ん中に壺が1つ置いてあった。

〔怪しいな・・・〕

こうなったら僕の好奇心も止まらなかった。二人で恐る恐る壺の中を覗き込む・・・

「これは?・・・」

〔真っ暗だ・・・〕

壺の中はそこが見えず、真っ暗で底なしのように思えた。

〔もしかしたら、もしかするな・・・ほしい物が出てくるかも・・・〕

「やめようよ、何か気味悪いよ・・・」

〔ここまで噂が本当だったんだ。きっとつかめるさ・・・〕

たっちゃんはそう言うと何の迷いもなく壺に手を入れた。

「どう?」

〔冷たい・・・何もないようだけど底もない・・・もう少し奥に・・・〕

たっちゃんは肩まで入りそうなくらい手を奥に入れた。

「・・・」

〔ん?何か今、触れたような気がする・・・わっ!〕

「たっちゃん!」

信じられないことが起こった。たっちゃんが突然壺に吸い込まれてしまった・・・

「たっちゃん!たっちゃん!・・・」

〔・・・〕

壺の中にめがけていくら叫んでも、まったく何も聞こえない・・・

「どうしよう・・・」

どうすればいいのか分からなかった。怖くて、怖くて逃げ出したかったけどたっちゃんを見捨ててはいけない・・・すると、さらに運が悪く店の扉が開く音がした。

「もう、僕もおしまいだ・・・」

かく隠れ場所も逃げ場所もなく、あきらめるしかなかった。

〈だれだ!〉

「・・・」

〈子供?何をしているんだい?〉

「・・・」

店のおじさんのようだ。白髪まじりの肩まである長い髪、目は大きくまゆげ
眉毛も長く白髪まじりで、二つにわかれた口ヒゲをはやしている・・・

〈その壺に興味があるのかい?〉

「いえ・・・その・・・友達が・・・」

僕が言葉をつまらせるとおじさんは壺を覗き込んだ。

〈なるほど・・・噂を信じてここに来たんだな・・・しかし、噂だけでまさかここまで来てこれに手をいれる者がいるとは・・・とにかく友達を出してやろう〉

「た、助けてくれるんですか?」

〈今回だけはな・・・〉

そういうと、おじさんはどこから出したのか長いロープを持ち、その先に筆で(人間)と書いたお札のようなものをはりつけて壺の中に入れていった・・・

〈よし・・・〉

と言ってロープを引き上げると驚いたことにロープでぐるぐる巻きにされたたっちゃんがあがってきた。

「たっちゃん!」

たっちゃんは気を失っていた。

〈大丈夫、ただ眠っているだけだ〉

そう言っておじさんはたっちゃんに巻きついたロープをはずすと、たっちゃんの背中をぽんっと叩いた。すると、たっちゃんはむくっと立ち上がった。

「良かった・・・たっちゃん大丈夫?僕はここだよ、僕が分からないの?」

〈術にかかっているから無駄だ、このまま家まで帰す〉

「それからどうなってしまうんですか?このままなんですか?」

〈家に着けば元に戻る。ただ、今日のこの記憶はすっかり忘れているがな〉

とまたたっちゃんの背中をぽんっと叩いた。すると、たっちゃんはぼーっとしたまま店を出て行った・・・

「おじさんは一体、何者なの?」

〈私は天狐だ〉

「テンコ?」

〈妖狐、すなわち妖怪、狐の一番えら偉い者だ〉

「妖怪・・・」

僕はぶるっと震えた・・・後から図書館で知らべたが、天狐とはおじさんが言ったように妖怪とされていた。昔から化けると言われている狐には階級があって下から順に

野狐(化けることができない普通の狐)・気狐(化けることができ、昔話に出てきていたずらをする狐)・く空狐(火や水や風など自然を自由自在に操れる。有名な九尾の狐はこれ)・そして天狐・・・

〈そう怖がることはない、私は何も危害は与えるつもりはない。それより、噂の真相を暴くようなまねはもうやめなさい、中にはこのように本当のこともある。それだけならいいが、私のように全ての者が物分りがよいとは限らない〉

「はい・・・」

〈しかし、噂を追ってここまで来たが、私まで噂になるとは〉

「噂を追って?」

〈そうだ、3つある壺の1つが事故で割れてしまって中にいたまだ修行中の妖狐が逃げてしまってな・・・恥ずかしい話だが、あちこちにち散らばっていたずらをしている・・・それを私が回収しているんだ〉

「その壺って一体・・・」

〈その壺の中には私達の世界がある。それを守っているのが私だ〉

「・・・その中に狐の世界が・・・でも、どうしてその中に?」

〈この世界には君たち達人間がいるからだ・・・分かるか?〉

「はい、なんとなく・・・」

〈この街にはもう私の仲間はいないようだし、君達みたいな者が面白がってまた来ても困る。私は早々に立ち去ることにしよう。さぁ、目をつぶって3つ数えなさい〉
「はい、本当にすいませんでした」

〈気にすることはない。ただ、私たちは本当は人間が好きなんだ。それを忘れないでおくれ・・・またお互いに良い時代がくるように祈る・・・さぁ、目をつぶって・・・〉

「はい・・・」(1・2・3・・・)

目をつぶって3つ数えて目を開けると僕は何もない空き地の真ん中に立っていた。それから家に帰って家族に骨董屋のことを聞いてもそんなものなかったと言っていた・・・
 
そして、次の日。いつものように学校に行くと、たっちゃんが何もなかったようにまた噂話を僕に聞かせる。

〔なぁ、リョウ。知ってるか?4丁目にできたアクセサリー屋のおばさん魔女らしいぞ、そこで不思議な薬を作っているらしい・・・〕                

終わり。


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