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空想作家と専属イラストレーター&猫7匹の     愛妻家の食卓

エレベーター

人ごみの中、孤独なんて感じながら街をふらふらしてたんです。

「はぁ~」

ため息ついてビルで見えない空を見ようとしました。

キラリ!

「ん?」

何かが光るのを見ました。ジーっと見ているとそれは小さな紙ヒコーキでした。

それはゆっくり、ゆっくりフラフラと降りてきます。

「どこから来たんだろう・・・どこへ行くんだろう・・・」

ボクは紙ヒコーキに心を奪われ、追いかけました。

「つかまえた!」

と、気が付くと誰も居ないビルの谷間。

「あれ?」

何かおかしいと思って見渡すとどのビルにも入り口が無いんです。

「裏通り?」

こんな街中で一人になれたことが少し嬉しかったりしました。

「あっ、紙ヒコーキ・・・」

つかまえた小さな紙ヒコーキ。ふと、何の紙で折ったのか気になって開いてみると・・・

「ど、どうして??」

空想作家 水本良平様・・・特別招待券・・・本日かぎり・・・KUUSOUビル1Fへお越しください・・・

「空想ビル?・・・どうしてボクの名前が?・・・」

たいていのことは驚かないボクも目を疑いましたが、確かにそう書いていました。

そして、見渡すと・・・あったんです。1つだけ入り口がこちら側にあるビルが・・・

KU S Uビル・・・古ぼけて字がほとんど見えなくなっていました。

「あれかぁ・・・」

不思議が大好きなボクは迷わず向かいました。

「何のビルか分からないけど、運営しているようには見えないな・・・」

両開きのガラスの扉をくぐると、エレベーターのようなものがありました。

「何もない・・・」

受付も階段も無い・・・エレベーターらしきものは階数の表示も無く丸いボタンが1つあるだけでした。

「何が起こるか分からないけど、とりあえず押してみよう・・・」

不安は無くワクワクしていました。

ポチッ・・・グワ~ン・・・ガシャ。

〈いらっしゃいませ!水本様ですね〉

「!・・・は、はい」

目がさめるような美人・・・こんなビルに?と驚く間もなくそのお姉さんは話し出しました。

〈どちらがご希望ですか?〉

「えっ、どちらがと言われても・・・ここは何です?」

〈あなたの記憶にないあなたの夢です〉

「記憶にないボクの夢??」

〈はい〉

もうよく分からない・・・

「どちらにって、これに乗ればどこかに行けるんですか?」

〈これを〉

「パンフレット?」

そこには面白そうな世界が沢山、紹介されていた。

〈全て、あなたが作った世界ですよ〉

「・・・どこにでも行けるんですか?」

〈はい〉

ボクが作った世界だからボクが興味ないわけはない・・・ボクは迷った・・・

「そんな気がするから聞くけど、これに書かれた順番は古い順ですか?」

〈はい、上から古い夢の世界になっています〉

「じゃあ、1番古いここに」

そこには真っ黒で優しそうに微笑むおじいさんの顔が写っていた。

その世界の説明などは書いてなく、おじいさんの写真の下に

グローブ族の長老

とだけ書いてあった。

〈はい、ではお乗りください〉

「はい」

ガシャ・・・

エレベーターらしきものに入るとすぐ、扉が閉まった。

ガタッ・・・グワ~ン・・・

「えっ!横に動いてる?」

グワ~ン・・・

「いや、やっぱり上か・・・」

〈これは上にも横にも斜めにも動くんですよ〉

と、お姉さんは微笑んだ。

「へぇー・・・」

そういえばこのお姉さんもボクの想像?どうりでタイプなはずだ・・・じゃあ名前も・・・

「あやめさん」

〈はい、何ですか?〉

やっぱり・・・

「長いですね」

〈1番古い夢ですから〉

「そっか・・・」

一番古い夢・・・ボクは期待しながらエレベーターらしき物に乗り、待った。

ガタンッ!

〈着きましたよ〉

扉が開いたその先は・・・

「あっ、キリン!サバンナ?・・・なるほど、動物好きでマイペースなボクがあこがれそうな所だ・・・」

〈では、私はこれで〉

「えっ、行っちゃうの?」

〈はい、後でまた迎えにまいります〉

「後でって?・・・あっ!・・・」

扉も何もかも消えてしまった。でも、のん気なボクはなんとかなるだろうと、思っている。

「地平線だ・・・」

もちろん見るのは初めて。遠くにこの木なんの木のような木が見える・・・

と、後ろで声がした。

〔*******〕

「へっ?何語?・・・」

振り向くと上半身裸の真っ黒な人々がニッコリ笑っていた。

〔*******〕

何だか分からないけどウルルンくらい歓迎されているようだ。

「ど、どうも、良平です・・・」

ボクが頭を下げるとまねをして人々も頭を下げた。ずっとニッコリしている・・・なんだか心が安らぐ。

〔*******〕

「あっ!手が・・・」

手招きをした人々の手はとても大きい。軽く30CMくらいはあった。

「それでグローブ族かぁ・・・」

ボクは手招きにしたがって人々の後に付いて行った。すると、草で作られたテントが並ぶ村についた。とてもほのぼのとしている・・・

〔*******〕

村の子供たちが何か言いながら近寄ってきてボクをさわりまわす。

「子供も手が大きいんだなぁ・・・」

どうやら、大きくしたのではなく、生まれつきのようだった。

〔*******〕

1人の女性がボクの手首をつかみ何処かに連れて行こうとする。

「・・・」

もちろんその女性も手が大きく、真っ黒。化粧もキレイな服もないが、なんだか美しい。しかも上半身裸・・・何、照れてるんだって自分でつっこみたくなるほど照れていた。

〔*******〕

「あっ、長老!」

大きな石が円形に7つ立ち並んでいた。集会場のような場所だろうか?写真でみたまんまの優しく微笑む長老が石に座っていた。

〔*******〕
〔こっちに来なさい〕

「えっ!」

長老は分からない言葉と同時通訳のように優しくボクの心に語りかけた。

〔*******〕
〔さぁ、早く〕

「は、はい・・・」

ボクは円形に並ぶ石の内側に入った。

〔*************〕
〔ようこそ、さぁ、座って〕

「はい・・・」


〔********〕
〔そこはいけない、そこは精霊たちが座る場所、私の横に座りなさい〕

「あっ、すみません・・・」

ボクは長老の隣に座った。

〔*****************〕
〔よく会いに来てくれた。私もみんなもとても喜んでいる〕

「はい、ボクも嬉しいです」

〔*********〕
〔まだここを思い出せないかい?〕

「ここですか?・・・思い出せません・・・ボクの空想の世界なんですよね?」

〔****************〕
〔元はそうだだが、今はそれとは少し違う〕

「・・・」

確かにボクの空想や夢の感じがしない。理解できない・・・

〔****************〕
〔まぁ、そう考え込まず、ここを楽しみなさい〕

「はい」

ボクは考えずに楽しむことを得意としている。

〔************************〕
〔それでは、歓迎のしたくができるまでこの村とこの世界をゆっくり見るといい〕

「はい、ありがとうございます」

そうしてボクは長老の言葉に甘え、村の中を散策することにした。それは、ほのぼのとした原始的な生活・・・

「なんだかなぁ・・・」

便利な物はなくてもみんな幸せそうに笑っている。ここでは不便が当たり前なのだ。

そこでやっぱり気になるのがグローブのような大きな手・・・

「あんなに大きくて不便じゃないのかなぁ・・・」

と、初めはそう思ったけど見るかぎり不便そうではなかった。いや、むしろここでの生活には便利にも思えた。

ボクのように携帯電話やパソコンを使うわけでも箸やペンを使うこともない。

「ここではボクがこっけいなんだ・・・」

そういえば幼い頃、大人の手がやけに大きく見えた。とくに父さんの大きな手が大好きで憧れていた・・・そんな気持ちがここを生み出したのかもしれない・・・

そうこうしていると、あっという間に夕暮れ。

村人たちが村長さんの所に集まりだして、ボクもすぐに呼ばれた。

〔**********〕
〔歓迎の宴をはじめよう〕

すると、村人たちはボクと長老が座っている円形に並ぶ石を囲んで座った。

「!」

突然、村人たちが歌いだした。

〔アウレェエーヤッ!〕

と、叫び、

バンッ!

と、大きな両手で地面を叩く。

〔アウレェエーエ~ヤ〕

バンッ!

今度は正面で普通に手を叩く。

〔アウレェエーヤッ!〕

バンッ!

そして、空に向かって手を叩く。それを繰り返す・・・

「・・・手が楽器になってる・・・」

それは凄い迫力で空に大地にボクの心に響いた。

長老が空に大地にこだまする声が精霊を呼ぶ歌声だと説明してくれた。

「あうれぇえーやっ!」

ぺしっ!

ボクも参加してみた・・・

なんだかとっても楽しくてどんどん体が軽くなっていく感じがした。長老が今、ここで精霊たちが踊っていると言う、もちろんボクには見えなかったが

そして、それが終わると食事が始まった。

村長さんは祝いの料理と言ったが・・・

水分があるのにもさもさした感覚の白い芋のような物に何かの肉が乗っていた。もちろん、何かは聞かなかった。いや、聞けなかった・・・

それから、しばらくすると今度は村人たちが1人づつボクのところに来て言葉をかけてくれた。とっても丁寧にとっても優しく・・・そして、テントに帰っていく・・・

「もう終わりか・・・」

時間は分からないが辺りは真っ暗だった。みんなが帰り、村長さんと2人・・・

〔********〕
〔私たちも休もう〕

「はい」

ボクが答えると、村長さんはその場で寝転んだ。

「えっ!ここで?」

〔**************〕
〔私は家を持たない。私の家はここだ〕

「はい・・・」

大丈夫なのか?と不安に思っていると、気づけば村長さんはもう寝ている・・・

仕方なくボクもその場で寝転んだ。

やがて、唯一の光の火も消え、真っ暗になった。

「・・・凄い星・・・」

暗闇の中、夜空には無数の星・・・まるで宇宙に浮かんでいるようだった。

その夜、ボクはここで暮らす夢を見た・・・幸せが何かってことが分かったような気がする。

朝、目を覚ますとあやめちゃんが迎えに来ていた。

〈どうでした?〉

「うん、とっても楽しかった・・・」

〈それでは参りましょう〉

「うん・・・」

村長さんを中心に村人たちが大きな手を振ってボクに別れを告げた。

〔**********〕

「ありがとう。また・・・」

そして、ボクは元のビルへと戻った。あれだけの経験をしたというのに時間は進んでいなかった・・・

「また会える?またここに来られる?」

〈さぁ・・・でも、たまに空を見上げてみてください〉

「うん」


                     終わり。


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