テーマ:猫のいる生活(135919)
カテゴリ:良平
カツは正門と反対にある裏門の前まで行き、そこで何かを探すように下を向いてうろうろしだした。 「何か落としたのか?・・・」 しばらくするとカツはただの石ころを拾い上げた。 「あれが願い石?・・・」 そして、そのまま石ころを手に握り、裏門を出た。 「あそこから出入りしちゃいけないのに・・・」 カツはそんなことおかまいなしで裏門の前に立ち、手に持った石ころを足元に置くと小さな声で 〔スタート〕 と、言って石ころを蹴った。 コロン・コロコロコロ・・・ 「なんだ、ただの石蹴りか・・・」 コロン・コロコロコロ・・・ だけどカツは真剣な表情で一蹴り、二蹴りと石ころを蹴っていく。 コロン・コロコロコロ・・・ そうして見ていると電柱3本くらい行った所でカツの蹴った石ころが道路の脇にある溝に落っこちた。 〔あぁあ・・・〕 カツは悔しそうな顔して、また学校の方にゆっくりと歩き出す。 そして着くとカツはまた下を向きキョロキョロして石ころを拾い上げた。 「カツのやつ何がやりたいんだ?・・・」 〔よし、今度こそ〕 そう言ってカツはまた同じように石ころを蹴りだした。 コロン・コロコロコロ・・・ 「また同じ事やってる・・・」 カツはさっきより順調に蹴り進んで電柱4本過ぎた三叉路まで行くと家の方へと曲がった。 「ほっ・・・何だか僕まで力が入るな」 しかし、安心するのはつかの間だった。 またすぐに石ころを溝に落とし、またまた学校へと逆戻りする・・・ 〔もう少しだったのに・・・〕 「家はまだまだ先なのに・・・カツは何処を目指してるんだろう・・・・」 カツは何事も無かったように学校に戻ると同じように石ころを探して足元に置いた。 〔今度は頑張るぞ〕 僕はもう黙って見ていられなかった。 あの調子じゃ帰るのが何時になるか・・・ 「カツ!」 〔あっ!お兄ちゃん!こんな所で何してるの?〕 「何してるって?カツが毎日帰るのが遅いって聞いたから様子をみにきたんだ、カツこそ何をしてるんだ?」 〔願い石・・・〕 「その石ころのことか?」 〔うん、これが目的地まで着けば願い石になるんだ〕 「目的地って家か?」 〔うん、家の前のマンホールまで〕 「マンホール?誰がそんなこと言ってたんだ?」 〔夢でおしゃべりな猫に教えてもらったんだ〕 「・・・やっぱり病気のことを願ってるのか?」 〔ううん、大きな願いは叶わないんだ〕 「じゃあ何を?」 〔お父さんやお姉ちゃんに会いたいとか・・・〕 「お父さん?お姉ちゃんがいたのか?」 〔いるよ、僕が大きな病院の近くに引っ越したから・・・お父さんは仕事があるし・・・〕 「・・・そっか・・・それじゃあ一緒にやってやる」 〔ほんと?でも、最初から最後まで一人でやらなくちゃいけないし、人の願いは願っても叶わないんだ〕 「それなら、見ててやるよ」 続く。 人気ブログランキングへ ↑皆に読んでもらいたい物語が沢山あります。応援してください。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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