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2005.11.21
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――――姫さまは何処ですか?

まだそれは僕が幼いころ。
城の中には姫しか頼るものがなくて、いつもいつも一緒にいた。
その彼女がいない。
居場所のない僕に優しくしてくれた医者のお爺さんに聞くと、

「あぁ、『お姫様のお仕事』に行ったんだよ。」

そろそろ裏口からここに帰ってくる、と教えてくれた。
早く帰って来ないかな、寂しいな寂しいな。
小さい僕は医務室で待っていられなくて、裏口までそわそわしながら駆けていく。
お姫様のお仕事――― これが何を意味するかなんて、僕は知らなかった。


「どうし たんで すか、血 が…っ」

「殺したんだ、敵も 人 も。わ、私が… 私がっ!!」


人気のない城の裏口から彼女は帰ってきた。
黒い服に真っ赤な血を染み込ませて。
驚いている僕に彼女は何事もなく言葉を放ち。
それでいて語尾の震えは隠しきれずに。


「怖いだろ、私が。」
「…。」


怖くなんて怖くなんて――――
はっきりと言いきれない自分がここにいる。
唇はただ、音を発せず震えるだけ。
そんな僕をみて、寂しそうに笑みを浮かべる彼女。
華奢な体に不釣り合いな大剣を引きずり歩く姿が、とても痛々しくて。


―――彼女が何をしてきたか。


戦場での戦闘ののち、裏切り者や敵の処刑。
敵、それは人間などではなく闇の物。
魔物と呼ばれ、到底人間が太刀打ちできるものじゃない。
だから… 死にたくはないから…
恐怖や私欲のために、裏切り者もでる。
できれば人なんか殺したくない。
だって人を守るために戦うのに、逆に殺すなんて。

でも殺さなきゃいけない。

それを“仕事だ”と割り切って考えていても、彼女の意思に心も体も付いていかない。
だから体が動かず、戦闘中に必要以上彼女は怪我をしている。
僕を見る虚ろな瞳は、参ってしまった精神の現れ。
そして、そのことに本人はまるで気づいていない。
否、きっと壊れるまで気付かないのだろう。
まだ長く一緒にいるわけではないけれど、それくらいは分かる。
なにせ、一番近くにはいるんだから。
そんなに走り続けなくていいのに。
周りの全てを振り払う必要はないのに。
今の彼女は ヒトリ で、とても苦しそうに見えた。


「人を殺したやつを、怖くないやつなんていないよ…。」


そう笑って、彼女が僕の横を通り過ぎる。
先を見据える瞳、流れる髪。
凛と冴える横顔が、震えるぐらい綺麗だと思った。


これは昔と変わらない。


「レイス、剣しまっとけ!」
「はい!あとタオル… 血、ふいてください。」
「いらない!風呂で水あびる!」
いつもどうりの裏口から城に帰り、医務室のお爺さんに会釈をして。
会話をしながらもスタスタと早歩き。
「お前も血だらけだ、水あびた方が早いぞ?」
「じゃあそうします。」
彼女は今も、戦場をかけている。
剣を片手に人も魔物も切っていく。

変わらない。

でも彼女が浴びる血の半分くらいは、僕が受け持っているつもりだ。
もう帰りを待つだけじゃない。
護衛として、戦ってる。
「…お前まで汚れなくても、よかったのに。」
「僕が望んだことですから。」
僕のために、そんな哀しい目をしないで。
どうか気にしないで。
貴方を怖いと思わなくなった。
僕も怖がられる存在になったから。
早歩きをしながら、絡めていた互いの指を感じる。
時たま触れる手甲の冷たさ。
その彼女の甲に“騎士のたしなみ”程度の接吻を落として。
僕は一緒にいたいんだ。
だから僕は忠義を捧げる。
「馬鹿レイス… そんな忠義いらねェんだよ。」
「あ、アメ様なっ!??」
掴まれた腕、引き寄せられた体――――

頬に降る、甘い甘い姫の唇

「忠義なら… みんなくれる。全部くれよ、全部。忠義の他も。」
「君のためなら死ねる。」
「却下。だったら死ぬ気で生きろ。」
そう言いながらも微笑む彼女を見て、少し安心した。
「1人になんかしてみろ、絶対許さないからな?」
要はそういうことなのだ。
全部の感情を、彼女は奪いたいと言う。
守りたい。愛しい。故に憎い。
…全部。
「貴方が望むなら、なんなりと。」
「我が侭いっても??」
小首を傾げて疑わしそうにする。
「可能な限りならば。」
「戦え、でもずっと一緒にいろ。 …あと、風呂つきあえ。」

「後半ダメ。これこそ却下。」

「最近… 私のこと避けてるだろっ。」
頬ふくらましたって、胸ぐら掴んだって(かなり怖いけど)ダメ。
一緒のベッドで寝るのはまだ許されるよ?(護衛の特権)
蹴られたり誤解されたりするけど。
(前半は嬉しさ余って憎さ百倍、後半は人の視線が痛くなる)
風呂は無理。
外で着替え持って待ってるだけと言えばそうだけど。
それだけでも、かなり危ないんだから。
(そのまま出てくる彼女が悪い)
「…理性って言葉知ってますか?」
「知らん。」
「もう姫のバカー。」
「バカ言うな馬鹿。…人の気も知らないで。」
胸ぐらを掴んでいた腕が離される。
踵を返して走り去ろうとする彼女を、僕は引き留めた。
聞こえるか聞こえないかの最後の一言が、僕には聞こえてしまったから。
「人の気を知らないのは姫の方じゃないですか…」
「…昔は、私が戦ってる時以外いつも一緒だったくせに。 …最近は戦ってる時しか一緒にいらんない。」
耳まで赤く染めた彼女があまりに可愛いらしくって、確信犯で聞いてみたくなった。

「…つまり」

寂しかったんでしょう?

「恥ずかしい事言わせんじゃねェ馬鹿野郎ぉ…。」



―――――――――――――――――――――――
姫様シリーズ。
戦う女の子って心惹かれます。笑
ツンとした子に心惹かれます。
末期だよ… 自分;





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Last updated  2005.12.04 21:36:02
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