カテゴリ:歴史あれこれ
_なぶり殺すに通じて怖い気もする「嬲沢(なぶりざわ)」は、秋田県横手市大屋寺内にある。 国道13号線と愛称「雄平フルーツライン」の雄平東部広域農道とに大屋沼と隣り合って挟まれた地である。 「嬲」は「なぶる」と読む。"なぶる"はもてあそぶの意だから、1人の女を2人の男が一緒にもてあそぶ姿を想像してしまう。 なんで「嬲沢(なぶりざわ)」なのか、気になって仕方がない。 「嫐」という字もあり、これは「たわむれる」と読む。こちらは2人の女が1人の男を間にして"いちゃいちゃ"している様子に思える。 もっとも、「なぶる」とも読むので、嬲と同様、もっと突っ込んだ関係も表わしている。 「嬲」を大字典(講談社)で引くと『たわぶる、なぶる。相戯れてみだるること。男女合わせてその義を示す。嫐と書くも同じ。』とあり、同様に「嫐」は『たわむる、なぶる。男女がなれ戯るること。又嬲に書くも同じ。』とある。 井原西鶴作の浮世草子「男色大鑑(なんしょくおほかがみ)」巻三に「嬲(なぶ)りころする袖の雪」がある。 そのあらすじは『伊賀の国守の小姓山脇笹之介は、すこぶる機転のきく美少年だったが、追鳥狩(おいとりがり)の折に、伴葉右衛門が庭籠鳥(にわこどり)を下男に放させて笹之介に獲らせようとしたことを縁に、男色関係を結んだ。西念寺の返り咲きの花見の時、葉右衛門が別の美少年の盃を受けたことを知って嫉妬した笹之介は、次に葉右衛門が訪れて来た時、厳冬の庭に立たせて入れなかったばかりか、雪の降る中で裸になるのを命じたりしてなぶり続けたので、葉右衛門は衰弱して死んでしまい、それを見た笹之介も切腹した。実は、寝間には床に二つ枕、酒盛りの準備までしてあったのだが・・・・・・。』とある。 いわゆる男色関係物語である。 一方、歌舞伎では「嫐」は「うわなり」となる。 wikipedia「嫐」は『うわなり うはなり 【嫐】。歌舞伎十八番の一。1699年初世市川団十郎が初演。一人の男に二人の女が嫉妬(しつと)でからむ所作で、後妻(うわなり)打ちの風習を劇化したもの。』とある。 後妻打ち(うわなりうち)は『日本の中世における夫が後妻と結婚するとき、先妻が予告のうえで後妻の家を襲う風習である。 かつては妻がいる上にさらに迎えた女性(妾など)を「うはなり」といったが、のちに先妻と離婚して新たにむかえた女性を「うはなり」といった。この「うはなり」を先妻が打擲することを古くは「うはなりうち」と云い、「御堂関白記」や「宝物集」などに「うはなりうち」のことが記されている。』とある。 浮世絵検索から広重の「うはなり」を描いたハーバード美術館所蔵の浮世絵を見つけた。 浮世絵を見てよく分かるが、なんとも勇ましい風習があったものである。 嬲と嫐、どちらも常識を超えた乱れた男女関係を示す用例が多いようだ。 「奻」という字もあるが、大字典(講談社)には載っていない。中国語サイト新華字典「女女」では「愚」とある。 男と女の漢字というサイトがあるので、以下はそれを参考にする。 同サイトで「奻」は「いいあらそう」となっている。 では「𤲶」はどうか。「嬲」と同じというから、なぶるの意となろう。 「姦」は、女3人寄ったら姦(かしましい)で、これはよくよく理解できる。 もっとも、姦計、姦通、という語があるように、よこしまな意や不義の意にも使われる。 姦の女を男に変えた字もある。 女3人でかしましいなら、男3人ではむさくるしいという人もいるようだが、国字で「たばかる」の意という。 「娚」は「喃、かたるこえ」とある。 一方、Yahoo!知恵袋:「娚」の漢字はなんと読むのでしょうか?の回答を見ると、娚は訓読みで「めおと」とある。 男と女の漢字サイトには𡣡、𡣠、𡢹の漢字も載っているが、いずれも字義は不詳となっている。 男と女に関する漢字については、まだまだ検証を深める余地がありそうだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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