5255734 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【お気に入りブログ登録】 【ログイン】

壁紙自然派

2017/02/12
XML
カテゴリ:歴史あれこれ




成瀬川と真人山

成瀬川と真人山 カレンダー入りの壁紙をDLする





掵の古文書

掵の古文書

1.「掵」地名は秋田県南に特化
 掵(はば)という珍しい字が付く地名が秋田県内に点在している。
 そのすべてが横手盆地に存在するもので、それも南部に集中している。
 マピオンで住所検索すると、次の32件が見つかった。そのいずれもが秋田県内である。
 秋田県湯沢市二井田二ノ掵
 秋田県湯沢市二井田掵上
 秋田県横手市増田町亀田掵
 秋田県湯沢市三梨町犬掵
 秋田県横手市十文字町腕越上掵
 秋田県横手市十文字町上鍋倉上掵
 秋田県横手市平鹿町下鍋倉上掵
 秋田県横手市平鹿町下鍋倉下掵
 秋田県横手市平鹿町下鍋倉中掵
 秋田県横手市増田町亀田上掵
 秋田県湯沢市駒形町大門掵
 秋田県湯沢市駒形町東福寺掵
 秋田県仙北市角館町白岩下掵
 秋田県雄勝郡東成瀬村田子内上掵
 秋田県仙北市角館町白岩新下掵
 秋田県横手市十文字町上鍋倉掵大道西
 秋田県横手市平鹿町醍醐掵下
 秋田県横手市増田町荻袋掵上
 秋田県横手市増田町荻袋掵下
 秋田県横手市増田町熊渕掵上
 秋田県横手市増田町熊渕掵下
 秋田県湯沢市川連町掵下
 秋田県横手市増田町荻袋菅生掵下
 秋田県湯沢市三梨町飯田掵下
 秋田県湯沢市川連町大掵下
 秋田県湯沢市川連町高掵下
 秋田県湯沢市駒形町大門掵下
 秋田県雄勝郡羽後町貝沢掵ノ上
 秋田県横手市増田町熊渕掵堂ノ下
 秋田県横手市十文字町上鍋倉掵下清水田
 秋田県横手市十文字町上鍋倉掵下中道添
 秋田県横手市十文字町上鍋倉掵下屋布後
 町村別に見ると、横手市(18件)と湯沢市(10件)で大半を占め、それに隣接する東成瀬村と羽後町に各1件ずつで、他は仙北市角館町に2件存在するのみである。それらを地図上で見ると、仙北市を除いてはみな、雄物川とその支流である皆瀬川や成瀬川に沿った地域にある。つまり、河川の両域に広がる河岸段丘に位置しているのである。
 このことから、河岸段丘に開かれた地を掵と呼ぶのであろうと類推できる。

2.「掵」は秋田県南で誕生した国字
 漢字辞典オンラインで「掵」の意味を調べると『人名や地名に用いられる字。「掵上(はばうえ)」は秋田県の地名。』とあり、さらに種別は国字となっている。
 秋田県以外に掵の字が地名に存在する可能性はゼロではないが、秋田県南特有の文字といって差し支えないだろう。
 この地域限定の国字はJIS第2水準の漢字に収録されている。そのため幸いなことに、この字はほとんど知られていないにも関わらず、パソコンなどの電子機器で苦労なく表示することが可能になっているのだ。

3.「ハバ」という地名は他にもある
 掵のほかに、羽場(はば)という地名もたくさん存在する。再びマピオンで住所検索すると、74件が見つかった。県別では岩手県 (22件)、宮城県 (19件)、秋田県 (18件)、長野県 (7件)、福島県 (3件)、石川県 (3件)である。
 秋田県の詳細は次の通りである。
 秋田県湯沢市皆瀬羽場
 秋田県大仙市下鴬野羽場
 秋田県湯沢市皆瀬下羽場
 秋田県湯沢市皆瀬中羽場
 秋田県湯沢市森熊ノ堂上羽場
 秋田県横手市十文字町植田羽場
 秋田県横手市増田町戸波羽場
 秋田県横手市増田町三又羽場
 秋田県仙北郡美郷町浪花羽場
 秋田県横手市増田町三又羽場下
 秋田県横手市十文字町植田上羽場
 秋田県横手市十文字町植田下羽場
 秋田県横手市十文字町鼎下羽場
 秋田県横手市増田町戸波下羽場
 秋田県横手市増田町三又五輪羽場
 秋田県湯沢市駒形町戸波上羽場山
 秋田県湯沢市駒形町三又上羽場
 秋田県横手市十文字町梨木羽場下
 羽場もやはりすべてが横手盆地に存在し、大半がやはり南部に集中していて、河岸段丘領域に属しているのは掵と変わりない。
 横方向の広がりの度合を指すのが幅であるが、大字典(講談社)によるとフチやヘリという意味もあるので、地名では傾斜地に使われていると類推できる。
 幅と巾も地名に存在する。
 マピオンで調べると、幅地名は全国に64件存在する。そのうち秋田県は次の6件である。
 秋田県湯沢市小野幅
 秋田県大仙市太田町川口幅
 秋田県由利本荘市西目町西目上幅
 秋田県湯沢市秋ノ宮幅ノ上
 秋田県湯沢市秋ノ宮下幅
 秋田県由利本荘市東由利宿幅野
 秋田県にはないが、幅と同義で使われる巾も地名に使われており、マピオンで検索すると全国に19件見つかった。

4.「掵」には横方向の広がりの意味もある
 資料として掲げた古文書を見ていただきたい。
 この中に「堰口掵壱尺」の記述があり、掵は横方向の広がりを示す幅と同義に扱われている。
 この文書は、横手市のある村々が水を取り込むための水路口の幅を取り決めした文書の一部である。明和元年(1764年)、水路の幅を巡って4か村にいざこざが発生したため、宝永2年(1705年)に取り決めした文書を探し出して再確認し、藩の役人に差し出した内容となっている。
 稲作中心のこの地域では、田圃へ引く水を確保することは死活問題であった。掵に命が含まれていることに、ある重要な意味が隠されているような気がする。

5.木偏の「椧」もある
 掵ではなく、「椧」の字の付く地名が唯一秋田県にある。
 秋田県大仙市四ツ屋字椧田
 「椧田」は「ばばだ」と読む。
 ただしgoogleの地図検索では「椧田」を「ばば田」と表示している。椧はJIS第1、第2水準漢字に登載されていないからである。
 掵で代用している地図も見受けられる。

 中国サイト新華字典で椧を検索すると、韓国漢字で寺名として表示され、意味はガーターつまり溝となっている。
 実際、韓国サイトで、椧は地名として多数出てくる。
 椧谷里(명곡리 ミョンゴッリ)・大邱広域市
 椧溪(명계 ミョンギェ)・慶尚北道慶州市
 椧洞(명동 ミョンドン)・慶尚南道梁山市

 こうして見ると、韓国では椧が南部の地名に多い。
 慶尚南道は倭が支配したとされる任那日本府と重なり、日本との交流が深かった地でもある。
 稲作の歴史は中国長江流域から始まり、朝鮮半島を通じて日本にもたらされという説が有力である。

6.木偏と手偏の紛らわしさ
 結論から先にすると、韓国で作られた「椧」の字が、朝鮮半島の渡来人から日本の秋田に持ち込まれて同様の意味を持つ崖地名のハバに充てられ、その多くが「掵」に変化したのではないかと私は考えている。
 それを示すために木偏と手偏の関係を調べてみる。
 実は、木偏と手偏は古くから混用されてきた歴史がある。
 実際、掲載した古文書の掵を見ても、偏は扌(てへん)にも、木(きへん)にも読み取れる。

 『西方指南抄』、『三帖和讃』における親鸞聖人の漢字字体の特徴について(鎌倉時代語研究第17巻 藤田夏紀著)によると、書写体においては木偏の字が手偏に書かれることはよくあることしている。また『干禄字書』には、正字が木偏、異体字が手偏の漢字(枉、横、様)が3組記され、その逆の正字が手偏、異体字が木偏の漢字が(札、杞、栓、枉、桓、棒、棧、櫛、構、檢、櫓、椳、楓、樻、梯、横、極、様など)24組記されているとある。
 さらに、木偏に関してみれば、『打聞集』では71%、『法華百座聞書抄』では26%、『三宝絵詞』で43%に、『宝物集』では84%の字が手偏で書かれているのに対し、『三帖和讃』は手偏で書かれるものは一例もなく、すべて木偏で統一されているとしている。
 一方、手偏に関しては、「權、極、樣、構、模」は全用例が手偏で統一されている資料が多いが、『三帖和讃』、『西方指南抄』はこれに反し木偏で書かれる用例が多いとしている。
 さがみ【相模/相摸】もほう【模倣/摸倣】のように木偏、手偏双方が使われている例もある。
 このように考えると、椧が掵に、つまり木偏が手偏に変化したのは自然の成り行きと考えることができる。崩し字では「オ」の形状が木偏とも手偏とも紛らわしいからである。

 写真は成瀬川橋(横手市増田町)から望む景色である。この周辺には「掵」や「羽場」の付く地名がたくさんある。

【追記 2017/03/12】
 難語地名辞典(東京出版)に「掵」の例として、『「掵上(はばうえ) 秋田県湯沢市二井田」。「掵田(ばばだ) 秋田県大曲市(現大仙市)四ツ屋」』とあるが、「掵田(ばばだ)」は「椧田(ばばだ)」が正しいので、これは誤記である。






Last updated  2017/03/12 04:20:04 PM
コメント(2) | コメントを書く

PR

Calendar

Comments

koba0333@ Re[1]:殉難の碑に咲く師走の紫陽花(12/10) New! 野の花2517さんへ あきらかに秋色アジサ…
野の花2517@ Re:殉難の碑に咲く師走の紫陽花(12/10) New! こちらだと、山に入ると秋色に変身した紫…
koba0333@ Re[1]:白鳥飛来(12/09) New! 野の花2517さん 雪国へ覚悟して飛来して…
野の花2517@ Re:白鳥飛来(12/09) いつも、餌をとっていた場所が、真っ白に…
koba0333@ Re[1]:庭の雪景色(12/08) 一凜 阿修羅さんへ 今朝起きたら、30セ…

Archives

Favorite Blog

まだ登録されていません

Keyword Search

▼キーワード検索

Category

Freepage List


Copyright (c) 1997-2018 Rakuten, Inc. All Rights Reserved.