カテゴリ:歴史あれこれ
五斗蒔田桜(福島県郡山市) 「刈」地名と「百万刈」 「五百刈」や「千刈田」、「五千苅」など「刈(苅)」の付く地名は数多い。 歴史民俗用語 Weblio辞書によると「百刈」は『出羽最上地方で用いられた上地面積の単位で、田1反歩。』とある。 最上地方に限らず、東北各地にこの表記が見られる。「刈」の数値も実に千差万別で、秋田県内だけでも次の例がある。 秋田県秋田市金足鳰崎三十刈 秋田県鹿角市八幡平五十刈 秋田県男鹿市脇本樽沢七十刈 秋田県南秋田郡井川町北川尻下田面八十刈 秋田県男鹿市五里合琴川百刈田 秋田県秋田市外旭川四百刈 秋田県横手市外目五百刈 秋田県横手市下境八百刈 秋田県横手市平鹿町浅舞千刈田 秋田県秋田市寺内三千刈 秋田県能代市二ツ井町五千苅 秋田県横手市百万刈 山形県鶴岡市に「千束刈」という地名がある。このことから、束を省いて「千刈」などと呼称するのが一般的になったといえる。 「百刈」を1反歩とすると、五十刈なら150坪、千刈田なら1町歩、五千苅なら5町歩となる。 これが「百万刈」なら1,000町歩という、桁違いに多い面積となる。 菅江真澄は自身の著・雪の出羽路に「百万刈」についてこう記している。 『百万刈 この村は鵜渡川(うとがわ・大戸川の古名)の西にある。田を刈といい、「魚斗(魚へんに斗・石)」という。処々にその間違いがある。およそこれ(百万刈)をいうならば2万3千3百33石3斗となってしまう。(注;2万は3万の誤記か。) 「百万刈は、百曲がりの俗言を、百万刈に書き記したことが由来であるといえる。」 ある記録に、「古い制度に知行わりを百貫、千貫という。今、奥州などにこの呼称が残る。(中略)千坪を一貫という。たいてい十貫は百石、百貫は千石に当たる。上中下田により一定ではない。」と見える。』 百万刈は、大戸川がくねくねと蛇行していたことから付いた地名という説である。それなら納得できる。 しかし、大戸川はそんなに蛇行してはいない。 この辺り一帯は、佐竹氏の出羽国入部に際して改易となった小野寺氏の旧臣(角間川給人)75人が久保田藩の許可を得て開拓した地であり、一気に耕地が増えたことから「百万刈」の地名が興ったとする説があってもいいような気がする。 大戸川の左岸に百万刈 貫高制の地名 江戸時代は武家の知行高を「石」で表わしていたが、より古い時代は貫高制だった。 田の収穫量を通貨に換算した「貫」を単位にしたわけである。 その名残から、東北地方に田の収穫量に関連した「貫」地名も存在する。 宮城県多賀城市八幡六貫田 岩手県一関市花泉町永井八貫 青森県十和田市洞内五十貫田 宮城県登米市米山町中津山千貫 秋田県大仙市九升田は、収穫量がそのまま地名になった。 種蒔き地名 種籾を蒔く量から田の面積を表わした地名も存在する。 福島県田村郡三春町実沢大一斗蒔田 愛知県豊田市篭林町三斗蒔 福島県福島市瀬上町四斗蒔 福島県郡山市富田町五斗蒔田 福島県南相馬市原町区江井九斗蒔 面積そのままの「反田」と「町田」 田の面積そのままの地名も数多い。 岩手県二戸市浄法寺町一反田 岩手県一関市山目三反田 青森県弘前市高杉五反田 福島県いわき市四倉町長友七反田 秋田県湯沢市上関八反田 青森県弘前市一町田 愛知県西尾市一色町池田三町田 茨城県行方市五町田 京都府亀岡市宮前町宮川七町田 町田市ホームページ町田市の歴史(れきし)によると、一説に『「町」は田んぼの区画のことで、「町田」は区画された田んぼという意味。』とある。 「石」は近世に定着 室町時代までは、米高(年貢高)や貫高(かんだか)、蒔高(まきだか)、刈高(かりだか)などが用いられていたが、それを統一したのは豊臣秀吉である。 秀吉は、いわゆる太閤検地によって確定した石高を基準とするようにした。(参考・コトバンク-石高制) 徳川家の直轄領は800万石、加賀藩の前田家は100万石、薩摩藩の島津家は73万石、秋田藩の佐竹家は20万石だった。 石高がそのまま地名になった地もある。 京都府京都市山科区小山一石畑 北海道日高郡新ひだか町三石稲見 石川県羽咋市鶴多町五石高 福島県いわき市富津町八石 福島県相馬市山上十石 新潟県燕市五千石 燕市の五千石は、かつて五千石村で、いかにも穀倉地帯らしい地名である。 長野県に五千石街道がある。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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雪をバックに桜ですねえ、見事です。
農耕をしていたため、その関係の地名が多いのかなと思いましたが、こちらでは、見ないような気がします。 (2017/03/04 06:03:00 PM)
この桜は好きですね、行ったときにはできるだけ寄るようにしていますよ。
ただ立ち位置と光の関係がとても難しい木の一つです。 (2017/03/05 07:24:51 AM)
野の花2517さんへ。
>雪をバックに桜ですねえ、見事です。 >農耕をしていたため、その関係の地名が多いのかなと思いましたが、こちらでは、見ないような気がします。 地域によって地名のおこりは違うのでしょう。 こちらは田に関した地名は非常に多いです。 (2017/03/05 10:44:55 AM)
たそがれの写真家さんへ。
>この桜は好きですね、行ったときにはできるだけ寄るようにしていますよ。 >ただ立ち位置と光の関係がとても難しい木の一つです。 この時は、いい具合に雪と一緒に撮ることができました。 (2017/03/05 10:48:07 AM) |
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