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オトキチ日記

食料事情/見栄?

食料事情/見栄?


田畑は青々としてゐて、稲や玉蜀黍がよく育つてゐた。
風景を見る限りでは食糧危機とかは感じられなかつた。

しかし、むろん、これは「見てもよい農村」を見ただけの印象である。
そもそも山が多い国であり、もしかしたら平地の田畑がすべて青々と実つたとしても絶対的に足りないのか
も知れない。

「日本では田んぼや畑は個人の所有ですが、朝鮮ではさうではないのですよね?」
「わが国では土地はすべて国のものでありますから、田んぼもさうです」
「すると、どこを耕すとかいふのは、どうやつて決められるのですか?」
「集団ごとに農地が決められてゐて、農民はその集団の中で、あなたはここ、といふやうに決められてゐ
ます」

旅行記本文に記載の通り、平壌と妙香山では食料事情の違ひを感じられた。
が、なにせ「特別待遇」の「特別メニュー」づくしの旅行であつて、実際の食糧事情が分るべくもないのは
言ふまでもない。

その範囲のなかだけの感想となるが、牛乳・生ジュースの類ひは全く出されなかつた。
朝食にパンも出てきたのだから、牛乳・生ジュースが出てきてもをかしくはないのだが、つまりは「無い」
といふことだらうと思ふ。

さういへば羊角島ホテルにも香山ホテルにも最上階には回転式の展望レストランがあるのだが、案内もさ
れないし、話にも出てこなかつた。
もつともあの電力事情ではレストランが回転してゐるはうが不思議といふものだが。

量はとにかく多くて毎度毎度残すこととなつたが、ガイドさんも運転手さんも結構残してゐたのは意外だ
つた。

開城市では浮浪児らしき子供を見た。
親がゐないのか、家もないのか、あるいはその両方ともあつても単に貧しいだけなのか。
しかし、逆をいへばさういふ浮浪児(だと仮定して)でも飢ゑ死にすることなく生きられるのであれば、全
体としてはそれなりに食料の余裕があるといふことだとも言へるわけである。
全体が危機では浮浪児が生きられる余地さへありはしない。

なほ、毎度の蛇足だが、この浮浪児らしき子供を見た云々で北朝鮮全体を語る気などは毛頭ない。
キムさんの言ふやうに日本にだつてホームレスはゐるのである。だからといつてホームレスで日本中があふ
れてゐるわけではない。北朝鮮だつて浮浪児であふれてゐるわけではないだらうし、むしろ浮浪児のゐない
国を探すはうが困難であらう。

もうひとつ、北朝鮮を語るときに「やらせ」の疑惑を持つ人は多い。
普段はあんな遊園地で遊ぶやうな子供はゐないのに(そんな余裕はないのに)外国人が見てゐる前でだけは
「やらせ」で子供たちを動員してゐる、といふ類ひの疑惑である。

結論から言ふとそれはない、といふのが答へである。
そもそもそこまでして見栄を張るならもつと他のところでも見栄を張るだらうといふことだ。
もちろん観光客は「特別待遇」である。
しかしそれは見栄といふよりは「おもてなし」と「安全確保」だと解釈したい。

大体、子供たちを大量動員までして見栄を張るくらゐなら、フロントガラスにひびの入つた車に乗せるか?

北朝鮮が経済的には苦しい国であるといふことを素直に認めてゐることも意外だつた。
わが国は世界で最も豊かな国ですとか言はれるのかとも覚悟してゐたのだけれど。

「わが国は石油が乏しいですから、日曜日はガソリン車の使用は制限されてゐます」
「わが国は豊かではありませんけれども」
さういふ言ひ方をキムさんはした。

李さんは朝鮮統一について語るときに「わが国の政治力と南朝鮮の経済力がひとつになつたらすごい国が出来
ますね」といふ言ひ方をした。
また香山ホテルの食事については「ここは地方ですから食事はあまり美味しくありませんでしたね」とも言つ
てゐた。

95年頃からの経済危機については「歴史の正史」であるらしく、いろいろな説明のなかで語られてゐた。
もつとも「その最も苦しい困難な時期を見事に乗り切つた」といふ文脈で語られるのだが。

(17.8.16記す)


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