12月歌舞伎公演(日生劇場):勧進帳
日生劇場の夜の部、勧進帳を観劇。海老蔵の弁慶、松緑の冨樫、染五郎の義経。海老蔵の弁慶、まず花道から出てきてからの第一声がよく、低い声に凄みがあり、まずいい弁慶だなという印象。セリフに関しては、その後、多少聞き取りにくくなるところ、少々間延びする箇所があるものの、よくなってきたと思いました。それから、いいと思ったところを挙げてみると、■1.良く効く目。 例えば、序盤の「最後のつとめをなさん。」で、冨樫を睨む目のするどさ。 それから、中盤の義経を打擲する前、「判官どのに似た剛力めが、、、」で 左右に踊る目。 いずれも芝居として目が生きていて面白いと思いました。■2.見得の力感。 勧進帳を読み終えての「不動の見得」、問答後の「元禄見得」、 それから唯一のツケの入る「石投げの見得」。 それぞれがこれぞ市川家の十八番という荒事の見得になっていました。■3.芝居のうまさ。 これが意外?かも知れませんが、要所要所の芝居がうまいと思いました。 例えば、1.の目のところで書いた義経を打擲する前のところ。 冨樫に判官に似ていると言われて、絶対絶命のピンチのところも目を 上手に使って、とてもスリリングで、面白かった。 いかにも、「これはヤバイゾ、、」という思いが出てましたが、かと言って、 冨樫に悟られないようにというのが、とても良く表現されていて面白かった。 それから、酒を酌み交わすところ。ここもやる人によってはダレがちなところですけど、 この弁慶はここがとても面白かった! 小さい杯をあっという間に飲み干すところ、それから葛桶を指して、こちらへ寄こせと いい、飲み干して、笑う豪快さ。とてもいきいきとしていて、面白かった。 あと、延年の舞の四天王と義経に、行け。と指示をする仕方がうまい。 あまり、露骨にやると、冨樫に遠慮がなくなってしまうが、冨樫に悟られず、 また、それとなく、行っていいと分かるように、扇をササッと扱う具合がとてもうまい。 その他弁慶で気づいたところ: ・詰め寄りでの金剛杖は両手ともに下から持つ形。 ・「今はきっと、」で金剛杖をつかず。今月の初日は下に突いていたと思う。また、冨樫の松緑は、セリフが明瞭なのがいい。あと、憂いが欲しいところ。泣き上げるところは、上半身から上に向いていたけど、形からすると、顎をくっと上げるくらいがいいのでは?染五郎の義経は、3人の中で最も安定。悲運なところも感じられ、品よくやっていてよかった。花道は、傘に手をかざさずに、七三で少々減速してそのまま入る型。長唄は、巳紗鳳、巳吉。三味線7、唄7。