2008/02/04(月)00:03
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部屋で帰る用意(といっても、パソコンくらいですが)をしていると、ノックの音がして、そっとドアが開き、彩が入ってきました。
「楓。」
にっこり笑って名前を呼ぶ彩。部屋の中を興味深そうに見回し、
「懐かしい。すごく久しぶり。ここに入るの」
と言いました。私がここを出て行くまでは、よくお互いの部屋に泊まりあったりしていたから。ベッドに腰を下ろしながら、
「全然変わってないのね。」
といい、
「そうだ、悠斗、フジシマくんとじいちゃんと、無事対面できた?かなり緊張してたけど」
私は、うなずきました。でも、彩は私の少しの表情の変化にも敏感です。顔を曇らせて、
「何かあったの?」
と聞きました。私は、しまいかけたパソコンを取り出し彩の隣に座りました。
『悠斗は何もないの。フジシマくんとも、おじいちゃんとも、仲良くなれたと思う』
「じゃあ。、、、楓自身のことなの?その暗い顔は」
と聞かれ、うなずくしかありませんでした。
「どうしたの?だけど、、お兄ちゃんのこと、、じゃないよね?」
私がうなずくと、
「それじゃあ、何?」
彩は私が続きを打ちあぐねている間に、思い当たったのか、
「楓。、、もしかして」
『うん、謙吾のこと。やっぱり、悠斗に話さないわけにいかないし、だけど、話したら、、、』
「それじゃ、楓、悠斗のこと、本当に?」
私はうなずいて、
『うん。でも、悠斗のすごいパワーについ、ほだされちゃったけど、やっぱり、私、図々しいよね。謙吾をあんな目に合わせておいて、自分だけ』
彩が、私の手を握って打つのをやめさせました。
「楓、そんな風にあきらめないで。謙吾とのこと、確かに、ほめられたことじゃないかもしれないけど、あの時、ああするしかなかったの、私、分かるよ。私は、自分でも甘チャンだと思うし、、説得力ないかもしれないけど、私、楓のことだけは、よく分かるもん。だから分かってる。。悠斗だって、ちゃんと理解してくれるはずだよ」
彩は、私の目をそらさせないようにしっかりと見つめていいました。ありがと、彩。
『ありがとう、彩。心強い』
彩はほっとしたように、息をつき、
「第一、そんなことくらいで、楓への気持ちがどうこうなるくらいなら、大したことない相手だってことだよ。バカなんだよ、楓をそんなことくらいで手放すんだとしたら。楓ほど素敵な女の子はいないよ?だから、楓は堂々としてればいいのよ。楓は楓らしくいれば、十分だもん。」
強引な言い分に、私は少し笑い、気が楽になりました。
『そうね。何とか、話す勇気もてるように、、がんばるわ』
「うん。でもね、楓、悠斗は、きっと楓が自分のこと好きなんて知ったら、、楓のこと、何があっても、、もう離さないと思うよ、私は。見ててこっちまで切なくなるくらい、悠斗は楓が好きなんだもん」
悠斗がそう思ってくれていたとしても、、、私はその気持ちを受け取っていいのかどうか、分からない、、というのがそのときの私の正直な気持ちでした。
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