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チョ・インソン~ジェミンに恋して

チョ・インソン~ジェミンに恋して

葛藤10

スジョンは食欲がなかったが、ジェミンが心配そうにのぞき込むので

フォークを手に取ると、その様子を見てジェミンが察して、フォークをとり

オムレツを一口スジョンの口に運んだ。

「食べなきゃだめだ」

スジョンは小さくうなずき、ジェミンの手からオムレツを口に入れて

もらうと、優しい味が口の中に広がり、急に胸が熱くなって何故か涙が

溢れた。

ジェミンは驚いて

「どうした?まずかったか?」

と慌ててたずねた。

スジョンは首を横に振って「ううん・・おいしいわ」

と答えると、ジェミンは嬉しそうに笑い

「そうか・・おまえが泣くほどおいしかったんだな」

いかにも満足そうに、エプロン姿で胸をはってみせた。

スジョンはジェミンに愛されている幸せをかみしめていた。

その幸せが涙となって、とめどなく・・・とめどなく溢れてくるのを

とめられなかった。

「どうした」

ジェミンはスジョンを喜ばせたい一心で作ったオムレツだったが、それ

を食べて泣き出してしまったスジョンを前にとまどっていた。

「どこか痛いのか?」

スジョンは思わず、ジェミンの首に手を回して抱きついて言った。

「幸せだから・・・涙が出るの」

ジェミンは、心が締め付けられるほどスジョンを愛しいと思った。

一日も早くスジョンを、悪夢から救い出したいと心から願い、ジェミン

も強く抱きしめた。


「さぁ、今日は俺が掃除をしよう。暫くおまえは休んでいろ」

食事を運んだトレーに乗せてある赤い花を、スジョンの髪に挿しながら

言った。

寝室のドアを開けたまま、ジェミンが洗い物をする音や、掃除機をかけ

る音が聞こえてくる。

スジョンはベッドに横たわったまま、いつかジェミンが言った言葉を思

い出していた。

『掃除は他の人間にやらせろ』

『だって私の仕事が掃除なのに』

『俺の女らしくしろ』

そう言っていたジェミンが、今はエプロンをつけて自ら掃除をしている。

スジョンは幸せを感じながらも、何不自由のない生活を捨ててしまった

ジェミンに申し訳のない気もしていた。


「シャワーを浴びるか?」

暫くするとジェミンが寝室に顔をのぞかせて、スジョンに聞いた。

ジェミンはスジョンのために何かをすることが嬉しかった。

自分のそばにいてくれる幸せを実感していたのだった。



夕暮れになって、スジョンが眠りについた。

疲れ切った精神状態の中で、やっと少しだけ心安らいできたように思えた。

スジョンの寝顔を見ながらジェミンは、イヌクと会わなければならないと

心に決めた。

ジェミンはジュリに電話をかけ、少しの間スジョンを見て欲しいと頼んだ。

「どうしてもやらなければならない仕事があるんだ。2時間ほどで戻るから」

そして、ジェミンはイヌクのホテルに向かった。


フロントで確認をして、イヌクの部屋のチャイムを鳴らす。

「俺だ」

暫くしてイヌクがドアを開けた。

「入れ・・スジョンはどうしている」

と、開口一番にイヌクが聞いた。

すると、ジェミンはいきなりイヌクを殴りたおした。

「これ以上あいつを苦しめるな」

ジェミンの顔は怒りに満ちていた。


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