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チョ・インソン~ジェミンに恋して

チョ・インソン~ジェミンに恋して

雨の章7

ベッドルームが一部屋しかなく、ヒョンスとローズを寝かせるとジュノは

リビングのソファに横になった。

愛することの苦しみと幸せが交差する心の葛藤に、ジュノは翻弄されていた。

ヒョンスのすべてが欲しいという気持ちと、ヒョンスを守りたいという気持

ちが揺れ動く狭間で、ジュノはなかなか寝付けずにいた。

するとドアが開く音がして、ヒョンスがまくらと毛布をもって静かにリビン

グに入ってきた。

足音をたてない様に、そっとジュノが寝ているソファの下で、ヒョンスは横

になった。

「風邪をひくぞ・・。」

たまらずジュノはヒョンスに声を掛けると、ヒョンスは毛布を頭から被って

しまった。

ふざけているのかと思い、ジュノが毛布をはぎ取るとヒョンスは体を丸めて

枕を抱いて泣いている。

ジュノは慌ててヒョンスを抱き起こした。

「どうした?どこか具合が悪いのか?」

ヒョンスは静かに首を横に振り、ジュノの掌に指で

『こ・わ・い』と書いた。

「そうか・・・恐いのか・・それならここで眠るか?」

とジュノが言うと、ヒョンスはジュノの胸に顔を埋めて泣いた。

深く傷ついているヒョンスの心を思うと、ジュノは辛かった。

何も知らない今、ヒョンスをどうしてやることも出来ない。

計り知れないヒョンスの心の苦しみを、埋めてやることが出来ない歯がゆさ

をジュノは感じていた。

「俺がついているから・・・心配するな。いつでも、俺がおまえを守るか

ら・・・約束しただろ・・。」

ヒョンスの髪を優しくなでながら、ジュノが言った。

昨夜もヒョンスはあまり眠っていない・・それでも、今夜もまた眠れぬほど

の恐怖心を、持っていることが哀れでならなかった。

秋とは言え山あいの夜は冷え込んでくる。ジュノは暖炉に火を入れるとヒョ

ンスと床の絨毯の上に横になり、ヒョンスに腕枕をするように抱きしめた。

「これで安心だろ・・俺がそばにいるから、安心して眠れ」

ヒョンスは静かに目を閉じた。

一緒にいる時間が長くなればなるほど、別れが辛くなることをこの時ジュノ

は知る由もなかった。

自分の腕のなかで子犬のように安心しきって眠るヒョンスを、ただ心から愛

おしく思うのだった。


翌朝ジュノは、コーヒーの香りで目覚めた。

目を開けるとヒョンスが、笑顔でコーヒーを差し出した。

いつの間に起きていたのかと思いながら、ジュノは起きあがってコーヒーを

受け取ると、一口飲んだ。

「う~~ん・・うまいな・・目が覚めた。」

ジュノがおどけて言うので、ヒョンスが嬉しそうに笑う。

ヒョンスの笑顔がいつまでも続いて欲しいと、願うジュノだった。

テーブルにはもう朝食の支度が出来ている。

「じゃあ・・ローズを起こしてくるか」

そう言ってジュノは立ちあがった。

ヒョンスは笑って、自分も一緒にいくというそぶりを見せるので、ジュノは

嬉しそうに笑って腕を組んだ。

ドアを開けるとローズが、待ちくたびれた様に上目づかいで二人を見つめている。

二人は顔を見合わせて笑った。

「ローズ・・すねているのか・・。」

ジュノがローズを抱き上げると、きゅ~んと鳴く。

「腹が減って歩く元気もないのか?」

とジュノが言うと、ヒョンスは『私も』、と言うように自分を指さした。

「おまえもか・・仕方ないなぁ。」

そう言ってジュノはローズをヒョンスに抱かせ、ジュノがヒョンスを抱き上げた。

ジュノの胸元で、ヒョンスとローズが揺れた。

ジュノがヒョンスにキスをしようとすると、ローズがまたジュノの唇を舐めた。

「あぁ・・またおまえに邪魔された」

と言って笑った。

リビングでヒョンスを降ろすと、ローズを床に降ろしてジュノが言った。

「やり直しだ・・」

ジュノがヒョンスを抱きしめ、キスをしようとすると、突然ジュノの携帯が鳴った。

二人は顔を見合わせて照れ笑いをすると、ジュノは電話をとる。

「もしもし・・。」

その途端ジュノの顔色が見る見る変わっていく。

その様子を見て、ヒョンスからも笑顔が消えた。

「キヨノ・・今どこにいる・・。」

息も絶え絶えに、キヨノが連絡をしてきたのだった。

「わかった・・そこにいろ。絶対に動くなよ。高校時代の友達がその近くで

医者をしているから、迎えに行かせる。わかったな・・・しっかりしろよ。」

ジュノは電話を切るとすぐに、ソウルで外科医をしている友人のパク・カン

ウに連絡をした。

そしてジュノはヒョンスと、ローズを車に乗せてソウルに向かった。

『いったい何があったんだ。』

キヨノは深い傷を負っているようだった。

「ヒョンス様を・・・お・・お願い・・します。」

まるで遺言のような事を言っていた、キヨノのことが気がかりでならなかった。

ヒョンスが心配そうに、ジュノの顔をのぞき込んだ

「大丈夫だ・・・心配をするな。」

不安で顔をひきつらせるヒョンスを気遣いながら、ジュノは車を走らせた。


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