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チョ・インソン~ジェミンに恋して

チョ・インソン~ジェミンに恋して

雨の章8

ジュノがソウルに向かう途中、友人のカンウから連絡が入った。

「今キヨノさんを病院に運んだ・・・。俺の車で運んだから心配をするな。

詳しいことは来てからだ・。」

「それでキヨノの容態はどうなんだ・・」

「あぁ・・今は手が離せない・・とにかく来てからだ。」

カンウはそう言って電話を切った。

『何が起きたと言うのだろうか・・。いったい・・何が・・。』

やがてカンウの病院に着くと、念のために裏口に回り病院内に入って行く

ジュノだった。

カンウの家は代々総合病院を経営し、友人のカンウは外科医として勤務を

していた。

外科病棟に行くとカンウが、丁度処置室から出てきた所で出会った。

「ジュノさん・・・久しぶりに連絡があったと思ったら、いったいどういう

ことなんだ・・キヨノさんがいったいどうしてあんなことになったんだ」

怪訝そうにジュノを見つめて聞くカンウ

「いや・・詳しくは俺もまだキヨノから聞かないとわからないんだ・・・そ

れでどうだ容態は?」

「今、輸血をしているところだ。傷はそう深くないがかなり失血をしてい

た。もう少し連絡が遅かったら、危ないところだったよ。」

「そうか・・今、逢えるか?」

「いいや、今は無理だ。病室を用意しておいたから、そこで待っていて。も

う少し、様子を診たら行くから。」

そう言って、カンウは病室に案内し、ヒョンスが抱いているローズに気がつくと

「本当は、病院内は動物を入れちゃいけないんだが・・ジュノさんの彼女じ

ゃ仕方ないな。でも廊下に出さないようにね。」

と優しく言ってドアを出かけたが、もう一度ヒョンスの方を振り返り、ヒョ

ンスの顔をまじまじと見てから首を傾げて出ていった。

ヒョンスは、不安な様子でジュノに言われるまま椅子に腰掛けると、ジュノ

がヒョンスの肩を抱き寄せ、なだめるように髪をなでる。

言葉少なに互いの気持ちを思いやることしか出来ない二人だった。

どれほど時間が経っただろうか、やがてカンウがドアを叩きジュノを呼び出した。

「ここにいろ。すぐに戻るから。」

そう言ってジュノは病室を出ると、カンウに招かれるまま部屋に入って行く。

「ああ・・すまない・・。」

「気にしないで、ジュノさんは俺の命の恩人だからな。高校生の時、ずいぶ

ん助けてもらったよ。」

苦笑いをしながらジュノは聞いた。

「それで、キヨノはどうだ?」

「あぁ・・やっと落ち着いたよ。腕の付け根をひと突き刺されていた。

もう少し場所が悪ければ、完全に命をなくしていたかも知れない。」

「そうか・・助かったよ。すまない・・。」

「そんなことより、いったいキヨノさんが何故あんなめに?」

「すまない・・今は何も言えないんだ。俺もキヨノに聞かなければ、何もわからない。」

ジュノはうつむきながら答えた。

「そうか・・・。」

カンウはそう言うと立ち上がって窓辺に立った。

「なつかしいなぁ・・喧嘩をして怪我をしてはこっそりこの病院で治療をし

て、ジュノさんのマンションに行って、キヨノさんの手料理を食べたのが、

俺達の青春だった。ジュノさんは喧嘩が本当に強かったな。俺達のあこがれ

だったよ・・。」

ジュノはふっと笑って

「遠い昔の事だよ・・・それにしても、おまえが本当に医者になるとはな・・・。」

「ジュノさんのおかげさ。あのとき・・ジュノさんが俺を助けてくれなかっ

たら、俺には未来なんかなかったよ。」

「もう・・忘れたよ。」

カンウが絡まれ、ジュノに助けを求め結果的にジュノが相手を刺してしまっ

た事件だった。

そしてジュノは韓国を離れることになり、キヨノとも離ればなれになった。

「とにかく、今夜は治療室にいてもらうが、ジュノさんはどうする?ここに

いるならあの病室を使ってくれてかまわないよ。」

「あぁ・・ありがとう。キヨノが気付いたときに側にいてやりたいから、こ

こにいさせてくれ。」

「わかった・・。それから・・。」

「何だ?」

「彼女のことだけど・・・。」

「彼女が何か?」

「どこかで見覚えがあるんだ・・・彼女はもしや、イ・ヒョンスさんじゃないの?」

ジュノは、驚いてカンウの顔をじっと見つめた。





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