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チョ・インソン~ジェミンに恋して

チョ・インソン~ジェミンに恋して

バリでの出来事~あらすじ5

怪訝そうな顔をして、ジェミンは立ちあがったイヌクを見上げたが、止めるまもなく

イヌクは早々に挨拶をすませて立ち去ってしまった。

ヨンジュも顔を曇らせ

「私も失礼するわ」と、ジェミンの返事を待たずに席を立ってしまった。

一人テーブルに残ったジェミンは、ワインを注ぎいらだつ心を抑えていた。

ヨンジュとイヌクの二人に漂うある雰囲気を感じ始めていたのだった。


部屋に戻ったヨンジュは、眠れずにホテルのプールで泳ぎ始めた。

レストランに残っていたジェミンはそれを見て、プールサイドにワインと二

人分のグラスを持って腰掛けた。

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夜のプールで光を浴びながら背泳ぎで泳ぐヨンジュの胸元が、豊かに揺れている。

それを見ていたジェミンは上着を脱ぎ、そのままプールに飛び込んだ。

ヨンジュはジェミンが飛び込んだ水の音に気づき、立ち止まり周りを見渡し

ていた。

そのとき、急にヨンジュの横からジェミンが浮かび上がり、

「今日のおまえはきれいだな」

と言うと、無理矢理ヨンジュの頬を押さえキスをした。

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イヌクに対するいらだちと、美しいヨンジュに惹かれていく気持ちがそうさせたのだ。

しかしヨンジュはジェミンから離れようと、もがいた。

「いやなのか」とジェミンが聞いた。

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「ええ、嫌だわ」

はっきりとヨンジュがそう言うと、ジェミンは黙ってプールサイドにあが

り、上着を肩からかけて帰っていった。

(今までいやがる女はいなかった・・むしろ誰もが俺に抱かれたがっているというのに)

ジェミンのプライドがそう心の中で言っていた。

ジェミンの後ろ姿を見ながら、ヨンジュは手の甲で自分の唇を強く拭いた。

(あんな男にキスをされるなんて・・・)

悔しそうに眉をしかめたのだった。



一方イヌクはホテルの庭を歩きながら、こみ上げてくる怒りを抑えられず思わず壁を拳で殴った。

(ちくしょう・・・あんな男と結婚するのか。ただ金があると言うだけで)

むなしさと怒りを押し殺しながら歩いていると、なにやら騒がしい声が聞こえてきた。


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野外プールのそばで男が二人、女をプールに落とそうとしていた。

「やめてください。私本当に泳げないんですから」

それは聞き慣れた韓国語だった。

その矢先に彼女はプールに投げ込まれた。

せき込みながらプールからあわてて出ようとする姿を見て、数人の男達が笑っていた。

「お客さん、冗談がきついですよ。私本当に泳げないんですから」

「そんなことより、これから飲みに行こうよ」

酔っぱらった観光客を相手に、彼女は

「明日早いですから。遅れないでロビーに来てくださいね」

と、引き留める男達を振り切って帰っていった。

一部始終を見ていたイヌクと彼女は視線があった。

するとその女は「何、見てんのよ」

と韓国語でふてぶてしく言って、きびすを返した。

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暫くしてイヌクはタクシーに乗ろうと、ホテルの車寄せに立っていると、

そこに先ほどの女が大きな声で電話をしながら近づいてきた。

「何で車を持って行っちゃうんですか!私帰れないじゃないですか。えっ、

タクシー?お金ないですよ。どうするんですか。迎えに来てくださいよ。も

しもし・・もしもし」

どうやら電話を切られたようだった。

そこにタクシーがやってきてイヌクが乗ろうとしたときに彼女は言った。

「エックスキューズミー」

英語で話しかけて、きょとんとするイヌクに続けて言った。

「日本人ですか?」今度は日本語で聞いた。

彼女はイヌクが韓国人ではないと思っていたのだった。

「何のようだ」

イヌクが韓国語で答えると、彼女は驚いていかにもばつが悪そうに苦笑いをした。

そして、こびを売るような笑顔を作り申し訳なさそうに言った。

「良かったら、一緒にのせてもらえませんか?」


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