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チョ・インソン~ジェミンに恋して

チョ・インソン~ジェミンに恋して

バリでの出来事~あらすじ20

             バリでの出来事~あらすじ20



その翌日、ジェミンは出勤するなりイヌクを呼びつけ、イヌクが作ったと思われる

20ページほどの企画書を、何度も何度も見直していた。

正確に言えば、見ているのではなくただページをめくっているようだった。

イヌクはジェミンの机の前にたったまま、ずっと待っていたがいっこうに終わりそうにないので、

ついに切り出した。


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「何か、足りないところがありますか」

「いいや」

ジェミンは、イヌクの顔も見ずに返事をした。

「他に、ご意見はありますか」

「いいや」

「何かご質問でも・・?」

とイヌクが聞くと、ジェミンはイヌクをゆっくり見上げて言った。

「昨日は何で休んだ?」

黙っているイヌクに、ジェミンは続けた

「女と旅行でも行ってたのかな?」

イヌクはうんざりした顔をしながら、

「他になければこれで失礼します」

とまともに取り合わず、ジェミンの部屋を出た。

ジェミンはヨンジュとの結婚をもう本気で望んではいなかったが、それでもイヌクとヨンジュが

つきあうことが気に入らなかった。

ジェミンのプライドが、許さなかったのだ。




一方、ジェミンの母親は何が何でもヨンジュと結婚させるつもりでいた。

ヨンジュの身辺調査をさせていたが、ついにイヌクとつきあっていたことを知ってしまった。

ジェミンの母親は、ヨンジュの母親に

「女が縁談を断ると、いろいろな噂が立って、ヨンジュのためにならないですよ」

と忠告をした。

お互いの利益が生まれる政略結婚を、どうしても諦めることができない両家ではあった。

そんな中でジェミンとの結婚を断ったにも関わらず、ヨンジュは早くジェミンと結婚を

するようにと、両家の親に言われてしまい、怒ってジェミンを呼び出した。


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「何でこの私が、あなたと早く結婚しろと言われなければならないの?」

突然ジェミンに言った。

「俺も自分のことで精一杯だ、おまえの事などかまっていられないよ」

「とにかく結婚はしないわ」

「あいつのせいなのか?死ぬほど愛しているんだろ」

少し面白がってジェミンが言うと、ヨンジュはふんと鼻で笑った。

「あなたは、そんな愛をしたことがないくせに・・」

「ああ、ないさ」

ヨンジュはまた鼻で笑った。

「おまえ、俺にはできっこないと思っているんだろ・・・」

「とにかく、あなたとは結婚はしないわ」

「そうか、これでも俺は結構いい男なんだけどな」

いたずらっぽく笑って言った。

黙っているヨンジュにジェミンは続けた。

「これが最後だ、本当に結婚しないな」

「ええ」

ヨンジュが答えるとジェミンはにっこり笑ってこういった。

「よし、この結婚はやめよう」

あまりの潔さに、ヨンジュは少しとまどった。

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ジェミンは立ち上がり、帰りかけてまたヨンジュのそばに近づいて肩に手を乗せて言った。

「後始末は、俺に任せておけ・・」

そう言って、ヨンジュの肩をぽんとたたいた。

ヨンジュは、自分から別れを言い出しながらも簡単に自分を諦めるジェミンに、腹立たしさを感じていた。




その晩、イヌクが残業をしているとヨンジュから電話が入った。

「今、どこにいる?」

イヌクに会いたいという電話だった。

そのとき、二人が話しているとも知らず、ジェミンが帰り支度をして部屋から出て来た。

イヌクが電話をしている目の前を、ジェミンはチラッとイヌクに目をやり、通り過ぎていった。

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イヌクが待ち合わせの店につくと、ヨンジュはもうすでに酔っていた。

学生時代に良く通った店で、イヌクとヨンジュの名前が書き込まれた壁を身ながらヨンジュが言った。

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「幼稚だわ・・」

「若かったからな」

「今日会いに来たのは、留置所から出したもらったお礼?それも私を逃がさないことにしたの?」

「両方だ・・」

イヌクは酒を飲みながら答えると、ヨンジュがふっと笑って答えた。

「やっと戻ってきたわね。呼べば来て、拒めば帰る素直なイヌクが・・。今までは、反抗期?」

イヌクは黙っていた。

「あの男とは終わったわ・・・それにしても、生意気な男。いくら私から拒んだとはいえ、結婚しないなんて・・。」

「なんで断ったんだ」

「恋人がいると言ったのよ」

イヌクは急に気が重くなった。


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「風にあたりたいわ・・」

ヨンジュは、酔ってふらふらしながら先に店を出た。




二人はヨンジュの車の中で抱き合い長い間キスをしていたが、イヌクが急に離れると

ヨンジュが又イヌクにキスを迫った。

イヌクがそれを拒むと

「どうしたの?」

と、ヨンジュが不満そうに聞いた。

「おまえこそ・・俺は代打か?」

イヌクにはわかっていた。


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ジェミンにあっさり結婚をしないと言われたことが、ヨンジュはおもしろくないのだ。

「あなたを愛しているのよ・・」

「何故?」

「愛に理由はいらないわ」

「それじゃぁ、愛しているから結婚でもしようと?」

「結婚?ええ、良いわよ。私を逃がしたくないでしょ」

「ああ、おまえと結婚できれば人生を逆転できる・・」

ヨンジュがふっと笑いながら言った。

「でも・・あなたとは結婚できないわ。わかっているでしょ・・」

イヌクが答えないでいると

「二人で事業を始めない?あなたが、ジェミンの下で働いているかと思うと、頭に来るわ」

と、言った。 

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自分のプライドでしか物事を判断できないヨンジュに、イヌクは目が醒めたかのように

「ヨンジュ、バリでも聞いたよな。俺はおまえの何なんだと・・・今、答えがわかった。」

と、言いひとり車を降りて帰っていった。

ヨンジュは慌てて追いかけて、イヌクに抱きつき

「お願い行かないで・・本当に愛しているのよ」


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と言うと、イヌクはヨンジュの腕を離しながら答えた。

「それは・・・愛じゃない。ただの所有欲だ。」

この時、イヌクはヨンジュの愛が、自分の追い求める愛ではなかったことを、確信したのだった。

遠く去っていくイヌクの後ろ姿を、ヨンジュはただ呆然と見送っていた。

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