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チョ・インソン~ジェミンに恋して

チョ・インソン~ジェミンに恋して

バリでの出来事~あらすじ22

       バリでの出来事~あらすじ22


翌朝早く、スジョンがゴミを出しに行くと、イヌクは丁度ジョギングから帰ってきたところだった。

「ずいぶん早いね」

先にイヌクが声をかけた。


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「あっ、おはようございます」

「今日から出社するのかな?」

いつもより早く起きている様子の、スジョンに聞いた。

「いいえ・・あの人とは何の関係もないのに色々世話になりすぎましたから・・・。」

なにか言い訳がましく、就職したい気持ちをおさえて言ったが、イヌクにはその気持ちが

見透かされているようだった。

「差し出された手を、つかまないのもおかしいよ・・」

そう言ってイヌクは、部屋に帰っていった。

P財閥グループで働けることがどんなに名誉なことか・・・スジョンはイヌクの手前もあって

迷っていたのだが、イヌクにそう言われて心が決まった。

そしてゴミを出そうとしたとき、そこにイヌクとヨンジュの写真が破られて捨てられていた。


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スジョンが出社を決めて、会社に着くと偶然イヌクと会った。

「あの・・やっぱりあなたのおっしゃるとおりだと思いまして・・・」

言い訳がましかったが、イヌクにはわかってもらいたかったのだ。

二人でいるとそこにジェミンが通りかかり

「よぉ、来たか」

と、ジェミンが声をかけると、イヌクはすっとその場から離れていった。

その瞬間、昨夜の光景が互いの脳裏に浮かんだ。

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ジェミンは秘書にスジョンの就職の手続きをさせていた。

「私、就職できたんですか?」

「パート扱いですが・・・」

「ええ、結構です。それでどんな仕事を?」

スジョンは受付を担当することになったが、ジェミンの口利きで入社したことで、

初めからあまり好感を持たれないようだった。

特にスジョンが初めてジェミンを訪ねてきた時にいた、受付嬢はスジョンの入社を喜ばなかった。

その彼女がスジョンの担当になった。

研修室に連れていき、今日中に内線番号を覚えるように指示したとき

「内線番号は別に覚えなくてもメモしておけば良いのではないですか?」

とスジョンが言うと、すると今までの上品さをかなぐり捨てて

「良いから、覚えな!」と机をたたいて出ていった。cap387-6.jpg


役員の顔と部署も覚えなければならず、スジョンは積まれた書類の山をみてうんざりしていた。


そのころジェミンの兄はジェミンの秘書と部屋で話をしていた。

「今度は就職か?」

兄が言った。

「ええ、またいつもの気まぐれですよ」

「いいや、今回は違うような気がするな・・・。金を貸した上に就職させたわけだから・・・

そばにおいておきたいんだろうな」

「そうでしょうか?今回はなんの取り柄もない女ですから。世間知らずの方なので、

単なる同情心だと思われますが・・」

「まぁ、今度はいつまで持つかだな・・」

「はい、今まで一番長くても3ヶ月でしたから」

「それで、どこに配置した」

「総務部に欠員がありましたので、受付に・・」

と、聞くと兄はにやりと笑って言った。

「ほぅ・・受付ね・・・良いぞ。どうせなら一番目立つメインデスクに配置しろ」

「はい、かしこまりました。」

二人は笑った。

「そう言えば、カン・イヌクと例の女はどうなった?」

「はい、ただ今調べております」

と、そこに突然ジェミンが入ってきたので、二人は慌ててその場を取り繕った。

ジェミンが自分の秘書を見て

「何故、おまえがここに?」と聞いた。

「あっ、お渡しする物がございまして・・」

「ご苦労、もう良いぞ」

秘書が出ていくとジェミンは弱々しく言った。

「兄貴・・助けてくれないか?」

「何事だ?」

「ヨンジュとはもう終わった。父さんに言ってくれないかな・・。俺が言うとすぐに灰皿が

飛んでくるし・・・聞いてくれないから。兄貴から何とか説得してくれないかな」


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ヨンジュに後始末は任せろと言った手前、何とかしなければならないジェミンであった。


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「わかった・・・何とか話してみよう」

兄はにやりと笑って引き受けた。

「ありがとう・・感謝するよ。今度可愛いお姉ちゃんを紹介するからさ」

「ああ、期待してるぞ」

数年前に離婚をして、今は一人でいる兄にお世辞のように言って、ジェミンはほっとして兄の部屋を出ていった。



しかし、ジェミンが自分の部屋に戻り暫くすると、ジェミンの父である会長が怒鳴りながら入ってきた。

ジェミンをめがけて殴りかかろうとしたが、ジェミンは慌てて机の下に隠れた。

そのジェミンを「この親不孝物!おまえはいったい何を考えているんだ・・」

と怒鳴って、何度もジェミンを蹴飛ばしていた。cap394-6.jpg

少し遅れて入ってきた兄は、それを見て薄ら笑いをし、一呼吸おいてから会長を止めた。

ジェミンが立ち上がって言った。

「ヨンジュとはうまくいきません。これ以上無理です。」

「何をいっとるんだ。結婚するまで本家に戻って来い」

会長が怒鳴った。

「なんと言われようと、もう終わったことです。もっと良い女を捜しますから・・」

と、ジェミンは精一杯言って部屋を出ていった。

社員達が聞き耳を立てていた。イヌクにもまた聞くともなしに聞こえていた。

どうにもならない気持ちのままジェミンは駐車場に向かった。

帰ろうかと鍵を探したが、残念ながら車のキーは部屋においたままだったのだ。

「ちくしょう・・」

今更部屋にも戻れず、ジェミンは空いている会議室に入ってごろんと机の上に仰向けになった。


やがて退社時間が過ぎ、研修室の様子を見に来た案内嬢は、机に顔を押しつけて眠り込んでいる

スジョンの姿を見て、起こそうとして手を止めた。

彼女は部屋の電気を消してそっとドアを閉めて出ていった。



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机の上で思わず寝込んでしまったジェミンは寒くて目が覚めた。

時計を見るととうに退社時間は過ぎている。

「なんだ、もうこんな時間か・・」

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冷たくなった体をさすりながら起きあがり、ドアを出た。

廊下を歩いていると突然横のドアが開き、誰かがジェミンにぶつかった。


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「な・なんだ!」

ジェミンも寝起きで、突然の事だったので驚いて言った。

「すみません・・」

飛び出してきたのは研修室で寝込んでいたスジョンであった。

驚いたジェミンは「何をしていたんだ、今まで」と聞くと

「つい、うっかり寝込んでしまって・・・」と照れ笑いを浮かべながら答えた。

まったく・・・と言いながら、優しい顔でスジョンに聞いた。

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スジョンは嬉しそうに答えた。

「ええ、とっても。本当に色々お世話になってしまって・・・ありがとうございました。

お礼に一度お食事でもおごらせてください。」

するとジェミンは真顔になって振り返った。


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怒っているようにも見えるその顔を見たスジョンは言葉に詰まって

「あ・あの・・・二回くらいにしましょうか・・」

と詰まりながら言った。

すると

「駐車場で待ってろ」

と言って、ジェミンは車のキーを取りに行った。

駐車場でジェミンを待ちながら、スジョンは困っていた。

まだ給料をもらったわけでいないので、食事に行ったとしてもお金がないのだ。

心細く待っていると、やがて意気揚々とジェミンが来た。

「あのぉ・・・今日じゃなければだめですか?」

スジョンがおそるおそる聞いた。

「何故?ああ・・・社交辞令だったのか」

あきれたようにジェミンが言った。

スジョンはむきになって否定した。

「それでは誰かと約束でも?」

「いいえ・・」

「それならかまわないだろう・・」

そう言ってジェミンは助手席のドアを開けて手招きした。

仕方なく、スジョンは渋々乗った。cap407-6.jpg



レストランに着くとジェミンは自分の好みを次々に注文していた。

スジョンは気が気ではなかった。テーブルの下で財布の中身を確認して、ふっとため息をもらした。

「ワインも?」

すました顔でジェミンが聞いた。

「えっ。ええ・・・」

スジョンは困りながらも答えた。cap409-6.jpg


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ジェミンは育ちの良さがすべてににじみ出ていた。

美しく整った顔と187センチの長身は、誰からも目をひく容姿だった。

美しい長くて細い指をさしながら

「何にするの?」

とジェミンはスジョンに聞いた。

「あ・・・私は」

メニューを見ていてもスジョンは金額しか見ていなかった。

「わたしは・・・クラムチャウダー」

ジェミンは不思議そうに聞いた。

「クラムチャウダー?スープだが・・」

「ええ、これが食べたいんです」

ジェミンはスジョンの考えていることがわかっていた。そしてわざと聞いた。

「それだけで足りるのか?」

「はい・・こう見えても私はとても少食なんです」

そう言うスジョンに、そうかといってオーダーをすませてメニューをウエイトレスに渡した。

「就職のお祝いに、今日はご馳走をしようと思っていたんだが・・・」

ジェミンがそう言うとスジョンはすぐさま振りかえって「すみません、もう一度メニューを

見せてください」とウエイトレスに声をかけた。

思った通りの反応にジェミンは思わず笑った。

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食事をしながらジェミンが言った。

「スジョンさんの金を持ち逃げした奴は見つかったかな?」

「いいえ・・まだです。今、探してもらっています。」

「誰に?」

「あまり当てにならない人ですが・・・仕事が落ち着いたら、私も探すつもりです」

ジェミンは何故か楽しくて仕方ない様子で言った。

「探してやろうか?」

「どうやって?」

真剣に聞くスジョンを前に、ジェミンは自慢げに答えた。

「この業界も情報が命だ・・そのくらいできないでどうする・・。見つけたらどうする?」

「それは、ありがたいですけど・・」

ジェミンはまた嬉しそうにくすっと笑った。

そして続けた

「カン・イヌクさんとは以前からの知り合いだったのか?」

そう聞かれてスジョンは思わず

「いいえ・・それが不思議なんですよ。バリでも私の隣の部屋に泊まっていたんですよ。

裏道の安下宿だったのに。それから、帰ってくるときの飛行機も同で・・・それも隣の席でした」

と、嬉しそうに話した。cap412-6.jpg

「偶然に?」

「ええ・・」

目を大きくしてスジョンが答えた。

「それでここでも隣同士に?」

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「そうなんですよ。私は友達の家に居候しているというのに・・・本当にすごい偶然です」

ジェミンの心がざわめいてきた。cap425-6.jpg



そしてスジョンが続けた

「きっと・・・運命なんです・・」

と、うっとりした表情で言った。

すると突然ジェミンは

「ああもう腹一杯だ」

と言って、食べているスジョンにお構いなしに席を立った。cap423-6.jpg

急に不愉快になったジェミンは、さっさと支払いを済ませた。

スジョンは慌ててジェミンを追いかけて車の前まで行くと、

「じゃぁな」

と言って、スジョンを乗せようとせずにさっさと一人で帰っていった。


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唖然とするスジョンは、何がなにやらわからない様子でジェミンの車を見送っていた。

(私何かおかしな事を言ったのかしら・・・。)



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