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チョ・インソン~ジェミンに恋して

チョ・インソン~ジェミンに恋して

バリでの出来事24

イヌクはもうヨンジュとは関係がないことを、ジェミンにはっきりさせたかった。

そして、少なからず好意を寄せているスジョンを、ジェミンから守りたかったのだ。

イヌクは「夕食でも食べていこうか」と言って、スジョンを母親の店に連れていった。


イヌクの母は、店に初めて女性を連れてきたと言って、イヌクにどういう関係かと聞いた。

「隣に住んでいる人だよ」と紹介したが、スジョンが食べる姿をじっと見ているので、たまらずイヌクが母をつついた。

「あら・・ごめんなさいね。この子が女の子を連れてくるなんて初めてなものだから・・」

「えっ、初めてなんですか?」

とスジョンも少し嬉しかった。

帰り道

「お母さんっておきれいな方ですね」

とスジョンが言った。イヌクはにっこり笑って何も答えなかった。

「お母さんに似たのね。」

それでもまだ黙っているイヌクに

「イヌクさんが美男子だって言うことですよ」

と言うと、イヌクは照れくさそうに笑った。

「でも、いいなぁ優しいお母さんがいて・・・私はおぼろげしか覚えていないわ」

「他に誰か身内はいないの?」

「兄が一人・・・でもあまり会わないんです」

「何故?」

と聞くイヌクにスジョンは「いろいろ・・」と言ってうつむいた。

家に着くと縁台に人影が見えた。

「ス・・・スジョン・・・俺だよ」

スジョンの兄だった。寒い中、じっと待っていたのか凍えそうな声で言った。

スジョンは驚いた。そしてイヌクに兄の情けない姿を見られることが、少し恥ずかしい気がした。

そして言葉を荒げて言った。

「なにをしに来たの?チョ・サンベを見つけるまではここに来るなと言ったはずよ」

「俺だって、一生懸命探しているよ。大きなビラも作ったし、電話から離れず連絡を待ったりしてるんだ。

情報をとるにも飯代くらいは払ってやらないといけないだろう。だから10万ウォンほど出してくれないか?」

と兄が言うと、そばで聞いていたイヌクが言った

「チョ・サンベってあのバリ旅行者の?」

「えっ、ええそうですけど」

スジョンが驚いて答えた。

「それならこの間チーフの所に来ていたよ」

「えっ、それは・・いったいいつ頃の事ですか?」

「だいぶ前だが・・」

数日前にジェミンと食事をしたときのことを、スジョンは思い出していた。

「見つけてやろうか・・?」

あのときジェミンはすでにチョ・サンベの事を知っていたのだ。

知っていて面白がってからかっていたんだと、スジョンは腹がたって仕方がなかった。

「許せない!」

そう言ってスジョンは近くの電話ボックスに走った。

ジェミンの名刺を探したが、バッグに入っていなかったので、思い切ってジェミンのマンションに出かけた。


その頃ジェミンは遊び仲間と、女を侍らして飲んでいた。

しかし、楽しそうに騒ぐ遊び仲間をよそに、ジェミンはいらだっていた。

バリでイヌクがヨンジュの恋人だと言い放ったこと、死ぬほどイヌクを愛していると泣いていた

ヨンジュの事・・・スジョンがイヌクの家から出てきたこと、職場でも父や役員達がイヌクを

高く評価していること、そして今日イヌクがスジョンの肩に手を回して帰っていったこと・・・

自分の物がイヌクに奪われていくような焦燥感があった。

思わず飲んでいたグラスを壁にたたきつけて、寝室に入っていった。

遊び仲間達は一瞬驚いたが「いつもの事だ・・」と言って、また飲みだした。

暫くすると、ドアのチャイムが鳴った。

ジェミンの友達が出迎えると、来ていたのはスジョンだった。

「よお・・あのときの子だね」

場末のキャバレーにジェミンと一緒に行った時に、スジョンに会っていた。

「入りなよ」

スジョンは渋々入ったが、リビングで踊る男と女の姿に、思わず目を背けた。

自分とは住む世界が違う人たちだと思った。

「おい、ジェミンのこれが来たよ」

といって、小指をたてながらみんなに言った。

「だからジェミンが不機嫌だったのか・・?」

と言って友達が笑った。

「おい、例の子が来てるぞ」

ジェミンの寝室に呼びに行くと、ジェミンはベッドにうずくまっていた。

「例の子?」

ジェミンが起きあがってリビングに出ていくと、スジョンがたっていた。

「何の用だ」

いつもになく強い口調で言った。

「話があります。」

「言えよ」

「場所を変えましょう」

「寝室に来るか?」

「いいえ・・」と、答えるのも聞かずスジョンの腕をつかんで、寝室に引き入れた。

ドアを閉めると、そのドアにスジョンを押しつけながら

「言えよ」と、冷たく言った。

「手を離して・・」

「良いから・・・言えよ」

スジョンは仕方なく言った。

「チョ・サンベのこと知っていて何で黙っていたんですか?」

ジェミンはうっすらと笑って言った。

「そんなことで、こんなに夜遅く男の家にやってきたのか」

スジョンは黙ってにらみ返したが、ジェミンが続けた。

「全く・・うっとうしいぜ。女達のよく使う手だ。」

思いあまってスジョンが答えた。

「あんたにははした金でも、こっちは人生がかかっているのよ。何で黙っていたの?」

スジョンをドアに押しつけたまま、ジェミンは

「今更プライド立ててるのか・・・?おまえ、なんだかんだ言い訳つけて、本当は

俺と近づきになりたいんだろう?そうじゃないのか?」

と強い口調で言った。スジョンはじっとジェミンを睨んでから

「そうよ・・それがどうかした」

と、居直るように答えた。

「それならやって見ろよ、おまえの思うように落ちてやろう・・」

「どうやって?」

「こうやって」

と言うと、ジェミンはスジョンの顎を押さえつけてキスをしようとした。

スジョンが顔を背けると、今度は力一杯押しつけて無理矢理キスをした。

スジョンの上着を脱がそうとしたときに、スジョンはジェミンを力一杯押しのけた。

ジェミンは、ふっと笑って「態度がなってないな」と言い、ドアの前に立つスジョンを

押しのけてリビングに出ていった。

酒を飲んでいる遊び仲間の女の腕をつかみ、踊り始めると

「もう終わりかよ・・。」と、

仲間達がはやし立てた。

スジョンは悔し涙を隠すように、黙って部屋を出ていった。

何故かジェミンの心も空しかった。

自分の心を、素直に受け止めることができずにいたのかも知れない。

その晩ジェミンは良く眠れず、翌朝早めに出勤をした。

秘書が出社するとすでにジェミンが出社していたので、慌てて秘書が駆けつけた。

「おはようございます。今日はどうされましたか?」

「別に」

首を傾げて帰ろうとする秘書に向かって、ジェミンが言った。

「チョ・サンベを連れてこい」

「はい?チョ・サンベですか?」

心当たりがなさそうな秘書に、ジェミンが言った。

「あの臭い奴だ」

「ああ・・あの?それでどこに?」

と、秘書が聞くとジェミンは黙って書類を見ていた。

(探せと言うことか・・)秘書は「かしこまりました」と言って、部屋を出た。

ジェミンは、チョ・サンベを探しだして、スジョンを喜ばせたいと思っていたのだった。



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