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チョ・インソン~ジェミンに恋して

チョ・インソン~ジェミンに恋して

バリでの出来事63

翌朝、ジェミンの秘書がスケジュールを説明していると、ジェミンは流通部門の会計資料を揃えるように言った。

仕事に興味を持たなかったジェミンが、急に仕事熱心になった様子に秘書は困惑を隠せなかった。

「それから本日は、チェ会長ご夫妻と奥様、お母様との昼食会になっておりますので・・。」

と付け加えて部屋を出た。

ジェミンは憂鬱だったが、ヨンジュの父であるチェ会長の誘いを断れなかった。

しかし、行ってみるとチェ会長は急な出張で姿をあらわさなかった。

「チェ会長のお忙しさは、韓国の全員が存じていますわ」

ジェミンの母が言った。

「本当にごめんなさいね。うちの人も婿との約束は守らなければ・・と言っていたんですけど、どうしても行かなければならなくて。」

ジェミンに向かってヨンジュの母が言ったが、ジェミンは全く上の空だった。

「そう言えば、おめでたはまだかしら」

話を逸らすようにジェミンの母親がヨンジュに聞いた。

「あら・・子供なんて、新婚生活を楽しんでからで良いんですよ」

と、ヨンジュの母が答えると、ジェミンはヨンジュの様子を横目で見た。

新婚旅行からジェミンは、一度もヨンジュにふれたことがなかったのだ。ヨンジュはただ黙って食事をしていた。

子供の話が暫く続くと、ジェミンは急に立ち上がり

「仕事が山のようになっていますので、これで失礼します」

と言って、早々に店を出てしまった。

残ったヨンジュの母がジェミンの母を、どういうことかと言わんばかりに睨み付けた。


ジェミンはその足でスジョンのアルバイト先に行った。

ゲームをしながらスジョンの様子を見ていたが、他の客もいてなかなか思うように話ができなかった。

「もしもし、ビリヤード場ですがジャージャー麺をひとつお願いします」

スジョンが電話をかけると

「あっ、店員さん。俺の分も頼む」

と、ジェミンが言った。

ジェミンは口の周りを汚しながら食べると

「店員さん、ティッシュを・・」

と、スジョンに言った。スジョンは仕方なく、ティッシュを持ってジェミンの席に置くと、そのスジョンの腕をつかんでジェミンが言った。

「おまえ、結婚が望みだったなら初めからそう言えよ」

スジョンはあきれて、フッと小さなため息をついた。

「イヌクとの結婚は絶対にするな。俺が許さない」

ジェミンが真顔で言うと、スジョンはその腕を振りきって

「それより、口の周りを拭いたら?」

と言って、自分の席に戻っていった。

「いくらだ」

「ゲーム代とジャージャー麺で1万ウォンです」

スジョンが仕事口調で言うと、ジェミンは2万ウォンを置いて言った。

「食事代は俺のおごりだ」

スジョンは、何故か心からジェミンを憎むことができなかった。


会社に戻ったジェミンは、会計資料と会計顧問を3人呼び、すべての資料を洗い出し始めていた。

兄が何を企んでいるのか、イヌクと何をしようとしているのかを何としても突き止めねばならないと思っていた。


仕事を終えてジェミンがリビングで一人テレビを見ていると、ヨンジュが酔って帰ってきた。

「あら、ジェミンさん、いつ帰ったの?」

しかし、無視をするようにテレビを見続けるジェミンにヨンジュが

「聞こえないの?私を馬鹿にするなと言ったはずだわ・・」

そう言って、ジェミンが持っているテレビのリモコンを取り上げ、テレビのスイッチを切った。

ジェミンはそれを軽く取り返そうとすると、ヨンジュはさらに持ち替えた。

ジェミンはムキになって、それを取り上げるとテレビのスイッチを入れ
「おまえも何をしても良いから、俺にかまうな」

と言った。

「かまうなですって?フン・・あなたの女遊びには興味もないわ」

酔っているヨンジュが話を続けた

「私が何故、イヌクを好きになったかわかる?彼には魂ってものがあるのよ。あなたなんかには縁がないでしょうけど。

私は今まで、彼みたいに賢くて素敵な男は見たことがないわ。何故、私があなたと結婚したと思う?」

ジェミンは苦笑いしながら、視線はテレビにむいていた。

「俗物だから?・・・残念だけどそうじゃないの。そんなに素晴らしい男がこの私を捨てて、

あんなゴミみたいな女のスジョンを愛し始めていたから・・・腹いせにあなたと結婚したのよ。」

ジェミンもさすがに

「もういい加減にしろ」

と言ったが、ヨンジュは続けた。

「後悔しているけど仕方ないわ。自分で選んだ道だもの・・そうでしょ。」

ジェミンは我慢の限界だった。

今まさにスジョンをイヌクに奪われそうになっているジェミンにとって、聞きたくない話だった。

ジェミンhあいきなり立ち上がり、上着をとって出ていこうとしたが

「何処に行くの」

ジェミンの背中にしがみついてヨンジュがいった。

「また、あの女の所なの?」

しかし、ジェミンはヨンジュをふりほどき、部屋を出ていった。

残ったヨンジュは、大声を上げて泣いた。後悔と寂しさと屈辱の中で、涙を流すことしか残されていなかった。


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