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チョ・インソン~ジェミンに恋して

チョ・インソン~ジェミンに恋して

バリでの出来事64

イヌクはバリ島のホテルを買い取る準備をしていた。エージェントが入り、価格の交渉などを細かく打ち合わせをし、

プリントアウトしたそのホテルの写真を壁に貼って眺めていた。

これを見たら何と言うだろうか・・・スジョンの事を思いながら見ていると、たまらなくスジョンに会いたくなって、電話をした。

「もしもし・・」

スジョンが小さな声で答えた。

「今何をしていた?」

イヌクが聞くと

「寝ていたわ」

と隣で寝ているミヒに気遣って、小さな声で答えた。

「そうか・・ごめん。急に声が聞きたくなって。」

スジョンが嬉しそうに笑った。

「引っ越しをしなければ良かったな。そうすればすぐに会えたのに・・。そうだ今から行くよ、待っていて」

そう言うと電話が切れた。

「もしもし・・もしもし」スジョンは仕方なく、電話を切った。


その頃ジェミンは一人バーで飲んでいた。

(俺がこんなに苦しいのも、ヨンジュの腹いせおかげだったと言うことか。俺がどんな思いで、

スジョンを諦めようとしたかあいつにはわかっていないんだ・・ちくしょう)

酒の力もあって、怒りの納めどころがないジェミンは思わず店で暴れ出した。椅子を投げつけ、

カウンターの上のものをすべて落とし、グラスも酒も投げつけた。

慌てた店員が2人掛かりでようやくジェミンを押さえつけて、店から出した。ジェミンの心は、

スジョンへの想いで一杯になっていた。


イヌクがスジョンの家の前でタクシーを降りると、スジョンは寒空の中を外で待っていた。

「なにをしているんだ・・・寒いだろう・・・こんなところで・・」

イヌクが驚いて言うと、スジョンはわざと少し意地悪く言った。

「だって誰かさんが来るって言うから・・・もう遅いですよ」

「ごめん。俺も後悔したけど来ないわけにも行かず・・」

「どうして?」

「待っているから・・」

「だって来るって言うからだわ。」

イヌクとスジョンはじゃれ合うように話した。

「わかった・・・帰るよ」

「誰も帰れなんて言っていないわ・・」

するとイヌクが優しく笑って言った。

「良いんだ・・顔を見たら落ち着いたから。それじゃあ・・」

帰りかけたイヌクをスジョンは呼び止めた。

「何?話しでもあるのかな」

「気をつけて帰ってね」

「あぁ・・お休み」

「お休みなさい」

イヌクは2.3歩歩いたかと思うと急に立ち止まり、スジョンのもとへ駆け寄ってそしていきなり抱き寄せ、キスをした。

「じゃあ・・又ね」

イヌクはそう言って嬉しそうに帰っていった。

残されたスジョンは、唇に残ったイヌクのぬくもりを指でなぞっていた。

その様子をスジョンに会いに来ていたジェミンが、壁の影から見ていた。

ジェミンは、スジョンの心が遠くなっていくのを感じながら、暫く呆然としていたが、やがて溢れる涙を

抑えきれなくなって大声を上げて泣きはじめた。しかし、気付かれまいと必死で自分の口を押さえて、泣いた。


スジョンは部屋に帰って、そっと布団に潜り込んだ。

すると、幸せそうな笑顔が一瞬消えた。スジョンの心の中の大きな固まりが、イヌクとの幸せを素直に受け入れられなかった。

(イヌクとは結婚するな。俺が許さない・・)ジェミンの言葉が、心の中で渦巻いていた。



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