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2004/11/18(木)12:54

ハンティング禁止法案 と 中国フ・ジンタオのラテンアメリカ訪問

今年はあさって10月22日金に英国の議会が終了する。 議会終了に向けて与党労働党は最後のぎりぎりの折衝を続けている。 その3本の法案のうちの一つがキツネ狩り禁止法案である。労働党は全面禁止を求めているが、上院議員は保守党のとりでであり、全面禁止に反対し、ライセンス方式により一部認めるよう譲歩を呼びかけている。 英国の上院議員は選挙で選ばれるのではない。政府から貴族が指名を受けて就任するものである。上院は力を制限されており、法案の実施時期を一年延長する力しか与えられていない。 上院の議論を無視して下院が法案を通すことも可能である。パーラメンタリーアクトと言うらしい。(parliamentary act1991 and 1949のことと思われる。) しかしテクニカルな問題があり、パーラメンタリーアクトを使用すると、下院が主張している実施時期3年後の規定が発動されず、成立から3ヶ月後に実施されてしまうらしい。 労働党、下院は3年後を主張している。 キツネ狩り禁止によりイギリス北部の業者が失業する。3年の間に新しい仕事を見つけてくれという趣旨である。 来年総選挙があり、特に不満分子が総選挙で労働党に強い影響を及ぼすことをおそれる労働党は3年を強く主張している。 労働党党首のトニーブレアは3年を守るためなら上院への譲歩もかまわないと考えている。 しかし、下院労働党はこれに反対した。妥協無しを打ち出したのだ。 トニーブレアは下院労働党と上院保守党、自民党に挟まり、つらい折衝を続けている。明日議会が閉会する。それまでに決着しなくてはならない。 小泉首相の姿に重なる。 議院内閣制は行政府トップの力の強さが特徴といわれる。日本は例外的に弱いが、議院内閣制はアメリカの大統領制に比べてその強力さが特徴だと言われる。行政府がやりたいと思ったことは国会を百パーセント通過するからだ。 実際法案通過率は日本より高い。 伝統的に首相の力の強い英国でも党首・首相が党員をまとめるのに苦労する場合がある。 結論的にはどうやらパーラメンタリーアクトを使って法案を成立させる方向に進みそうだが、なかなかおもしろいテーマであり、BBCもこの話題で持ちきりとなっている。 <中国プレジデントフ・ジンタオのラテンアメリカ訪問> スーダンの紛争鎮圧に中国がプレッシャーをかけたり、バングラディシュへの支援を強めたり、ワールドニュースで中国のプレゼンスがかなり高まっているが、このたびは中国のプレジデントがラテンアメリカを訪問して経済的な連携強化を図っている。 アルゼンチンで中国は次の10年で1000億ドルを投資するという約束をした。10兆円である。アルゼンチンの白人大統領がありがとうありがとうと腰を低くして中国の主席と握手している姿が世界に報道され、中国の力が誇示された。 ブラジルでは、ブラジルの飛行機を最低10機買うことおよび、50-70億ドル(5000億-7000億)の投資を行うことを約束した。 中国の外交はすごく派手で目立つ。BBCも中国から目を離さない。アメリカ合衆国の次の覇権国かもしれず、行く末が見守られている。 (日本のYAHOOニュースなどで報道されていない要なので、心配になる。中国ニュースといえばフカキョンの好感度が中国で高いとかそういうニュースになるが、どうでもいいじゃないか。ばか娘の動向なぞは一部業界人にまかせとけばいい。) <現在の日本の首相-議院内閣制だが大統領制に近い> この流れで一つ付言しておきたいと思う。 日本の小泉首相は大統領制下大統領に近い選出のされ方をした。 大統領制は国民の選挙により行政府の長が選ばれる制度だ。論理必然的に必ずしも大統領は議会の多数派ではない。 その代わり、(米国では)議会に正当性を頼らないため、内閣不信任決議に基づいて辞職をしなくてはならないという制度がない。行政府が安定的に4年間継続する。 しかし行政府の安定という長所が得られる代わりに、議会で多数議席を保有しない場合には法案通過にエネルギーが係、たまには仕事が完全にデッドロックするという問題がある。 政治学者から米国の大統領制は議会が強すぎるという批判がなされることがあるがそれはこの文脈である。アメリカの政治学者は一般にイギリスの議会制度に高い評価を与える傾向にある(see Kabanagh)。 一般に日本には、米国型の大統領制を強いリーダーシップを発揮できる、すなわち大胆に改革を遂行できる政治体制だという通念があるのではないかと思われるが、少なくとも米国政治学者の見解からすると、否である。多分に民衆の前で演説する大統領のテレビイメージに影響されていると言える。 米国政治学者は、むしろ英国型議会制度がよい、と言う。 (もちろん例外はある、これは上記kavanghの見解。また比較行政学で有名なLijphartも支持しているらしい。ちなみにLIJPHARTは政治理論で有名なDahlとも近いようである。知っている人はDahlの名を聞けば、まあ政治学のコミュニティの中では主流と見て良いだろうと分かると思う) 日本は言うまでもなく英国型議院内閣制を採用している。しかし小泉首相は郵政民営化法案などの国会通過に苦労している。なぜか。抵抗勢力が多いからだが、これは比較行政学的には、プレジデンシャリズム(大統領制)に近い制度が運営されているとして理解すればわかりやすい。また既存の研究からいろいろ示唆を受けることができる。 小泉首相は自民党議員の多数はとれなかったが党員票を集めたために自民党総裁となり、行政府の長となった。そのためもともと議院内閣制が前提とする議会の多数をコントロールする力は有していなかった。この点において大統領制に非常に近い現象を生じたといえる。 この議論は、次の問題に一定の解答を与えるのではないだろうか。 郵政民営化法案などが国会成立前に自民党との妥協をやむなくされ、新聞や雑誌などから批判されるが、この批判は妥当なのか。 米国型大統領型の政権である以上法案成立に妥協はやむを得ない。むしろ行政府の専横に対するチェックアンドバランス機能を議会が適切に果たした結果と言えるであろう。 米国の行政府と立法府の権力分立はまさにこうした双方による権力抑制を予定してつくられたのであり、日本の現在の状況がそれに近いことを考えれば、米国型制度が意図した理想がしっかり行われていると高く評価すべきだろう。 したがって「この国はどうなっているのか」「小泉はリーダーシップがかけている。この男を引きずりおろさないと国の未来はない」と言った批判は全く当を為さない。 まあそういう批判をする連中はそういう連中なので相手する方がヴォケかもしれないが、一応まともな参政権を有した有権者のために議論しておきたかった。 ところで、残りの議論だが、 なぜ日本は内閣キャビネットの力が弱いのか。英国では考えにくい現象だ。これをとく鍵はオーストラリアの教授のAURELIA GEORGEのJapan's failed revolutionに記述されており、なかなかthoughtfulであると言える。

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