2013/10/07(月)01:03
RE: 5日の日記
■ 車いす用ベルト ■
前回の日記に
「また、介護技術や介護用品の発達によって廃止まではいかなくても
あまり使用されなくなってきた「拘束」製品もあります。
この辺はまた次に。」
と書いたのでその続きです。
使用されなくなってきた「拘束」製品は、車いす用ベルトです。
ちなみに、弊社の先代社長が車いす用のY字ベルトを日本で最初に
開発しました。商品名を「あすなろベルト」といいます。
取引がないため長年気が付きませんでしたが、
某車いすメーカーのカタログに、堂々と
「車いすY字ベルト(あすなろベルト)」と
記載してあるのを見て、仰天しました。形状は全く同じです。
ついでに言えば、
車いす用の「背延長キット」も先代社長が設計しましたが
松永さんに特注で制作してもらったら、
いつの間にか松永さんのカタログに自社製品として掲載されていました・・・・
さて、この車いす用ベルトも、今でこそ「拘束」ですが
「座位のとれない方」が、「車いすからずり落ちる」または
車いす上から「突然立ち上がる」のを防ぐには
どうしたらよいのか?
という課題から出発しています。
この車いす用ベルトが使われなくなってきた背景には「拘束」禁止の他
「車いすのポジショニング」
と言う概念が入ってきたところが大きいです。
車いす上で姿勢を正しくすると身体や精神に良い影響がある。
という思想です。
この思想に基づいて、お尻に敷く「車いす用クッション」や
身体の横倒れを防ぐクッションなどが開発されてきました。
<参考>
・車いす用クッション
http://www.simizushoukai.com/tuhan/ido/kurukan/kanrenindex.htm
ですが、一番大きい発明は「チルト車いす」だと思います。
一番初めのチルティングはタヒラの「スイング式車いす」です。
この車いすも業界に革命をもたらしました。
車いすの背と座が連動して(スイング)後へ傾くので、
ベルトを使わなくても、突然立ち上がったり、ずり落ちることがありません。
このチルティングという考え方も「拘束」と言えば言えるのですが
この車いすの出現でベルトが用済みになったのも確かです。
このスイング式車いすを開発したタヒラ(現在はピジョンタヒラ)は
車いすの専門メーカーでは無いにも関わらず、車いすに関しては
時折業界の歴史を書き換えるような発明をするメーカーです。
もう一つは、ベルトで背と座面を調節する車いすです。
セミモジュールなどが代表的で
背中の曲がり(円背)が大きいため、車いすに浅くしか
腰掛けることが出来ず、ずり落ちやすい方に向いた車いすです。
背中の曲がりに合わせて、ベルトで張りを調整します。
この機能のお陰で、円背の方も深く腰掛けることが出来るようになり
正面を向くことが出来るようになりました。
以前はフルリクライニング車いすに身体を横にして乗せるしかなかったので
技術的にも、コストの面でも大きな進歩だと思います。
ちなみにセミモジュールはこんな感じ
http://www.simizushoukai.com/tuhan/ido/kuruma/kurumais3/moju.htm
このベルトもつなぎのねまきと同じく、存在が消滅することは
無いでしょうが、介護技術と介護用品の発達により更に減ってゆくことは
間違いないと思います。
介護の業界にも、「介護方法の思想」の流行・廃れがあるので
それによって介護用品も変化します。