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2009/03/11(水)01:21

BOOKレビュー【武士の娘】と幸田文

よむ(54)

武士の娘 著者:杉本鉞子 /訳:大岩美代 本屋で物色中に出会った文庫本です。 ぱらぱらと中を見ただけで「これは!」といういいしれぬパワーを感じたのは ひさしぶり。 とはいえ、ずいぶん昔に出版された、しかも渡米した女性がアメリカで出版した本の 翻訳でございます。 長岡の家老職にあった武家の末娘として生まれた著者が 過去の思い出をふりかえりながら、その生活を書き綴った本であり 海外で事業をしていた男性の元に嫁ぎ、異国での生活に戸惑いながら 当たり前に思っていた日本という国の長所・短所を鋭く描いています。 武家の厳しいしきたりの中で培われる凛々しい姿や また当時の日本で行われた季節の行事を通しての、美しい暮らしぶりの描写が まるでそのにぎやかな声が耳元で聞こえそうなくらいに 色鮮やかに描写されています。 小さな字で380ページ近くの長編ではありますが、とても本を置くことができず 一気に読んでしまいました。 この本を語ると日記何件にも渡るので割愛しますが(笑 武家の生活がこうだったなら、さて下々の町人たちはどのように生きていたのか。 時代は少しずれますが、今年の2月から3回に渡って毎月出版予定の 「娘に伝えたい幸田文の3冊109編」はいかがでしょう。 幸田文しつけ帖 2009/2/4 幸田文台所帖 2009/3/4 日本の作家で一番好きなのが幸田文なわたしとしては 出版されてすぐ飛びつきましてん。 娘である青木玉さんが、幸田文の書いてきた膨大な文章のなかから ●しつけ ●だいどころ ●きもの の3つのテーマで選定したものです。 幸田文しつけ帖では、父親の幸田露伴が、母を亡くし継母とも折り合いが悪かった娘に しょうがないと、家事のいろはを教えるくだりは有名で といいますか露伴の死後に書いたその随筆によって、幸田文の名前が知られるようになったので おもしろくないはずがない(笑 ああなんとめんどくさい親なのだろうと思いながらも、日本の住生活に即した生活の知恵や 町くらしでの礼儀作法など、当時の親がどのようにして子供にしつけて 恥ずかしくないおとなへと導いていったかが非常によくわかります。 幸田文の爽快な文章が大好きで大好きで、 ひえええと思いながらも噴出しちゃうユーモアにあふれていて 好きなところに赤線を引けるなら、真っ赤になってしまうでしょう。 小説と照らし合わせるなら「流れる」流れる改版」がオススメです。 改版が出てるんですね。わたしのはもうずいぶん昔に買った古い本です。 何度も読み返していてボロボロです・・・ 家族を失い生活に困り、芸者の置屋の女中に入ることになった主人公が 独特な世界に戸惑いながらも、主婦として培った才覚で気働きしていく様子が かっこいくて素敵。 ■幸田文台所帖 は4日に発売されたばかりなので未読ですが やはりこれでしょう。  台所のおと 台所をテーマにした中編小説がいくつか入っています。 それぞれの舞台は違いますが、厳しい現実にキリリと奥歯を噛み締めながら 生きる努力を続ける主人公たちに強く惹かれます。 来月発売の「きもの帖」にはズバリ、「きもの」ですね(笑 そこそこ名のある家柄に生まれた末娘は幼いころからなぜか着物に関してだけ 強いこだわりを持っていた。そのことに不安を感じる賢い祖母。 田舎育ちゆえに控えめである母親に代わり、さまざまな生活の機微を教え込む祖母の 厳しく暖かい機知に満ちた言葉は、主人公だけでなく読む者の心にも染みこんできます。 姉妹たちの結婚、母の死、関東大震災などの事件を通し成長していく主人公が結婚するまでの その様子がシビアに描かれています。 もちろん、それぞれの素材の手触りを感じるくらいに着物のこともたっぷり描かれています。 どちらの作家の本も、いまではほとんど失われてしまった 日本という国の大きな特徴である部分を描いています。 当時と今のどちらを選ぶかと聞かれたら、もちろん便利ないまを選びます。 けれども、その不自由さの中にある精神的な豊かさに、うらやましさを覚えるのもまた 事実なのでした。 幸田文のことに関しては過去日記でも書いていますが、 ずいぶん前なので探すのがめんどくさい(笑 たぶん「よむ」カテのどっかに沈んでいることでしょう。

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