蒼き詩人の世界

2005/05/30(月)00:05

仮想現実 (5)

 俺との会話では強気な彼女も、詩の世界ではナイーブだ。 俺には詩なんて書く才能もないし、書いたのは中学校が最後だっけ? そんなんだから、彼女のページでの同じ趣味を持つ異性はちょっと気になった。 特に頻繁にやりとりをしていて、彼女もまんざらじゃなさそうなのが約一名いた。 そいつが、やたらと彼女の詩に割り込んで自分の詩を送りつけてくる。  俺だってさあ、彼女の心がわかりたくて何度も詩を読み返したさ。 でも、俺の心に浮かぶ言葉は「君が好きだ」とか「君のそばにいたい」なんて、シンプルなやつだけ。  そしてある日、そいつが彼女に送った詩に、彼女がお返ししたんだ。 それが、まるで本当の恋人同士のやりとりみたいで俺の疑念を増幅させた。 いったんは、その気持ちを抑えて彼女にやさしく接して、彼女も嬉しそうな素振りをしたけれど、堰を切ったように俺は彼女を責めてしまった。  彼女は自分を信じられないのかと逆に俺を責めたが、今度ばかりは俺は引くわけにはいかなかった。  なんて、呆気ない終わり方。 ああ、でもわかっていたんだ。 彼女が一番大切に思ってくれているのは俺だって事は。 今だって悔やんでいるんだ。 天使の様な君を失ったことに対して・・・ でも、それっきりになってしまった。 そしてそれ以来、彼女とは出会いのきっかけになったゲームサイトで顔を合わせることもない。 いつも彼女と議論しては言い負かされていた俺だけど、プライドってやつが根っこにあったんだ。  男の意地って、厄介だよな。 それが、たとえ言葉だけの世界でも。

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