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テーマ:合作ポエム しよ!(269)
カテゴリ:合作
その蕎麦の味に最後に触れたのは
父が旅立った後だった 食べようと思えば いつでも食べれるとそう思っていた 当たり前だった父の蕎麦 それは大きな間違いだった 最後に仕込んだ汁で 食べた時にはっきりわかった わたしにとって蕎麦とは この味以外になかったのだと これが最上の蕎麦だったのだと その味を兄に伝えぬまま父は去り 兄は手探りで父の蕎麦を模索する 容易くはあの味に辿り着けないだろう それでもいつか そう父の息子であればこそ 兄が会得してくれるとわたしは信じる ここに記したい 小江戸と呼ばれる街のどこかに その蕎麦屋がある事を 最上の味にはまだ遠いが その味を目指そうと頑張っている そんな蕎麦屋がある事を いつかわたしもその店で 父がもたらした最上の味に 再び巡りあう事を願っている お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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