カテゴリ:明日のための一年戦争
何かを保証する話では無いのでご注意を。
さて自分がイイトシしてなお作家を目指していることは、このブログの常連さんはご存じだと思います。朝日ソノラマ全盛の頃から物語を作る仕事はしていましたが、『具体的に』作家を目指すにはそれなりのノウハウが必要で、もう一つ挙げるなら『その賞応募の要求仕様は何か?』という『照準の仕方』というものが結構重要です。 例えば、出版が同じ角川グループでも、涼宮ハルヒの憂鬱を出してる『角川スニーカー文庫』と、メディアワークス編集部の『電撃文庫』は審査基準が明確に違います。 この両者で決定的に『違う』審査基準の内部パラメーターに『殺人描写』があります。スニーカーは作中に殺人行為があっても通ることがありますが、電撃はまず通りません。同じく次の二点は、描写があると『すごい作品』ぐらいでも刎ねられます。 ・未成年の飲酒・喫煙・ドラッグ ・性的描写 「美少女が出てこればたいてい脱がされるラノベで何を」と思われるかもしれませんが、これはもう『商売的な大人の事情』なのでかなりどうしようもありません。なぜなら、露骨に電撃あたりはもうコミカライズやアニメ化ありきなので、メディアミックスに制限を受けそうなネタは編集部としても取り扱いにくいからです。つまり『作品』として完成されていても、『商品』としては難しい場合は落選します。 『次点じゃなく落選』になるのも割とドライな話で、編集部としては『デビュー作』をそこそこロングランにしてすぐにメディアミックスしたいからです。最近のラノベの場合、デビュー作をそのまま出世作に『構築する』ように編集部もなってきています。 落選しても有望な人には担当付きますし、そこで仕様を固め直して執筆→審査→入選→『入選作品』という鳴り物入りデビュー、なんてこともあります。いずれにせよ編集部も『商売』なので、ネームバリューの無い新人に自分がリスクを抱えるようなブツを任せるようなことはしません。 ちなみにこの話の根っこには、『青少年健全育成条例』があります。 『青少年の健全な育成を気にする人々』という生物は、現実とフィクションの区別が付いていないので何でもかんでも、表現に限らず思想まで規制しようとしています。活字の時は目立ちませんが、アニメ化まで行ったときに叩かれるとやっかいです。しかし現在のコンテンツ不足を補うにはデビュー作からメディアミックスを予定しなければなりませんから、最初からもう安全運転にならざるを得ません。私はどちらかというと攻性な人間なので、この『表現規制に対して十分なマージンを取る』というスタイルが、どうもなじまない部分があります。 もっともそれはデビューまでの話で、二作目からは少しずつ違うことが出来るようになりますし、メディアミックスという視野をあまり考えなくて良いノベルズあたりはずいぶん状況が変わります。 いずれにせよ『表現規制のさじ加減』によって夢破れる作家志望さんが居るのは間違い無いところ。先日10日、電撃大賞も〆られて下読み始まっているはずですが、面白い面白くない以前に『NGワードやNGネタが入っていたから没』と最後まで読まれない人は、大量に出ているでしょう。つーか5000本以上の応募、審査員だけじゃ審査出来ませんし。 世知辛い話ですし夢も希望もない話ですが、少なくともデビュー段階までは『青少年健全育成条例』の要求仕様を満たす執筆活動を意識した方がいいです。個人的には面白くない話ですが、職にするなら『プロとして』仕様を満たさなければなりませんし、先ほども言ったとおり相手は現実とフィクションの区別がついていません。そんなキ○ガイに限りなく近い生物が、不幸なことに規制をかける側にいるわけです。商売の都合上、編集部もそこにケンカはなかなか売れません。 バカ売れした『化物語』のアニメのオーディオコメンタリーでは、メメ(おっさん)のたばこの描写に触れられています。新房監督はバイオレンスでもエロスでもその辺かなり恐れを知らない攻めっぷりを発揮する作風ですが、喫煙シーンはダメだった模様。つーか自分の場合『やりたいこと』とか『好みの作風』については、十年前ならいざ知らず投稿作では結果出すの難しいですね。けだし当然、『無難なネタ』あるいは『ヌルい物語』を書くわけですが、それが『自分の書きたいこと』と一致しているかというとそんなことは無いわけです。 ゆえに『好きなことを書いて飯を食ってゆく』という夢は、売れてから考えましょう。優先事項は『いかに編集部の仕様を満たした商品』を出せるか。『良い物を書けば!』というのは商売に必ずしも直結しないので、その辺は了解の上で投稿したほうがいいです。 ちなみに、未だ作家としてはプロになれていない自分がいつもやっている事。 ・各出版社の受賞作家作品は買う ・その受賞作家作品を丸写し(個人的には『写経』と呼んでいる)する この作業で各編集部の傾向はずいぶんと分かります。編集者の好みも見えてきますし、情報の蓄積としては面白いです。ただしめちゃくちゃ地味な作業ですが。でもこういう地味な蓄積が無ければ、けっこうどうにもならないのは確かです。 編集者がさくっと作家に転身する例も多くありますが、それは編集部のノウハウ蓄積があるから基本的な地雷は避けられる上に、『売り物になるノウハウ』の蓄積もあるから効率的なのも関係しています。 そういう『下積み』は、『無駄なこと』と思わずに、きっちりやりましょう。最近の若い人は下積み嫌がるんですが、『急がば回れ』はかなり真理に近いです。 さて、次の原稿書くか。
最終更新日
2011年04月18日 20時40分08秒
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