朝鮮日報・ 安倍談話:あいまいな「過去形謝罪」
安倍談話:あいまいな「過去形謝罪」村山氏「おわびという言葉を矮小化」安倍首相「繰り返し謝罪した」 A4用紙5枚分の談話 14日午後6時ちょうど、安倍晋三首相は上気した顔で東京・永田町の首相官邸記者会見場に歩いて入ってきた。安倍首相は「政治は歴史に謙虚なければならない」という言葉で戦後70年談話(安倍談話)を始めた。だが、安倍首相が読み上げたA4用紙5枚分の談話内容は謙虚とは言いがたい内容だった。村山富市元首相は出身地・大分県で安倍談話の内容を全て聞いた後「美辞麗句を並べているが、何を謝罪し、今後どうするかについて説明していない」「何のためにおわびの言葉を使ったのか、矮小(わいしょう)化されて不明確になった」「安倍首相が最初から(村山談話を)継承すると言えば、それで済んだ。本来なら談話を出す必要はなかった」と酷評した。なぜだろうか。 1995年に発表された村山談話の意義は、日本政府が植民地支配を初めて公式謝罪したという点にある。それ以降、歴代内閣は村山談話をそのまま継承した。村山談話のキーワードは「植民地支配」「侵略」「反省」「おわび(韓国語訳=謝罪)」だ。誰がどんな過ちを犯し、なぜ謝罪するのかを明確に述べたのだ。まさにこの点で、安倍談話は村山談話と大きく異なっていた。 村山談話の最初のキーワード「植民地支配」について、安倍首相は談話で、1905年の日露戦争で日本が勝利したのが「(西欧諸国の)植民地支配のもとにあった、多くのアジアやアフリカの人々を勇気づけた」と語った。日露戦争の直接的な結果が1910年の韓日強制併合(日本側呼称:日韓併合)だったということには一言も言及せず、すぐに「第一次世界大戦(1914-18年)を経て民族自決の動きが広がり、それまでの植民地化にブレーキがかかった」という部分に飛躍している。韓日強制併合は強国が弱小国を植民地とすることが国際法上、問題にならなかった時代のことだと遠回しに言っていると解釈できる。 安倍首相はまた「台湾・韓国・中国など隣人であるアジアの人々が歩んできた苦難の歴史を胸に刻み」と一括言及しただけで、韓国の苦痛がほかでもない植民地支配のせいだったとは一度もはっきりと言わなかった。「植民地支配によって苦痛を与えた」と謝罪した村山談話(1995年)、そのような植民地支配が「その(韓国人の)意志に反して行われた」と認めた菅談話(2010年)に比べて大きく後退したものだ。 村山談話の第二のキーワードは「侵略」だ。安倍首相は同日の談話で一度「侵略」という言葉を使ったが、今回もやはり「日本が侵略した」と淡々と認める直接話法ではなかった。安倍首相は日本が起こした戦争について「世界恐慌が発生し(中略)日本経済は大きな打撃を受けた。その中で日本は孤立感を深め、外交的、経済的な行き詰まりを、力の行使によって解決しようと試みた」と説明した。 談話では日本がアジアの複数の国で「何の罪もない人々に計り知れない損害と苦痛をわが国が与えた」と短く言及して認めた。しかし、それより先に、はるかに長く切々と読み上げた文章は「先の大戦では300万余りの同胞の命が失われた。祖国の行く末を案じ、家族の幸せを願いながら戦陣に散った方々。終戦後、酷寒の、あるいは灼熱(しゃくねつ)の、遠い異郷の地にあって飢えや病に苦しみ、亡くなられた方々。広島や長崎での原爆投下、東京をはじめ各都市での爆撃、沖縄における地上戦などによって、たくさんの市井の人々が、無残にも犠牲となった」と、加害国である日本の被害に対するものだった。その後「戦時下、多くの女性たちの尊厳や名誉が深く傷つけられた過去を、この胸に刻み続ける」と従軍慰安婦の苦痛に簡単に言及した。 村山談話のもう一つのキーワードである「反省」と「おわび」について、安倍首相は「わが国は、先の大戦における行いについて、繰り返し、痛切な反省と心からのおわびの気持ちを表明してきた」と述べた。本人が直接反省して謝罪するのではなく、過去に日本がそうしてきたと伝える「過去形の間接話法」だった。また「あの戦争には何ら関わりのない、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」と述べた。 さらに「私たちは、国際秩序への挑戦者となってしまった過去を、この胸に刻み続ける」としながらも「敵として熾烈(しれつ)に戦った、米国、オーストラリア、欧州諸国をはじめ、本当にたくさんの国々から、恩讐(おんしゅう)を越えて、善意と支援の手が差しのべられた」という言葉で、すでに米国など西欧諸国が日本の過去にふたをしてしまっていると強調した。談話発表に続く記者会見でも「あの戦争の後、敵だった日本に善意や支援の手を差し伸べ、国際社会に導いてくれた国々の寛容な声に対し感謝すべきであり、その感謝の気持ちは世代を超えて忘れてはならないことだ」とあらためて強調した。 安倍首相はこの日、談話発表直前の3日間、故郷・山口県で自民党員や支持者に会った。安倍首相は党員らに「祖父・岸信介の回顧録を久しぶりに読み返した」と言い、来月の自民党総裁選を念頭にもう3年政権を執る意志を表明した。東京= 金秀恵(キム・スへ)特派員 , 東京= ヤン・ジヘ特派員朝鮮日報/記事入力 : 2015/08/15 08:54安倍談話:「日本は繰り返しおわびの気持ちを表明」安倍首相、直接の謝罪表現を避ける「子孫に謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」とも韓国外相「日本は誠意ある行動を」中国外務省「侵略戦争について誠意ある謝罪を」 日本の安倍晋三首相は14日発表した「戦後70年談話」(以下、安倍談話)で、過去の植民地支配や侵略戦争について直接の謝罪を避けた。1995年に日本政府が発表した「村山談話」を全体的に引き継ぐとしながらも、植民地支配や侵略戦争を反省し謝罪するという文言は引き継がなかった。 安倍首相は談話で「わが国は第2次大戦における行為について、繰り返し痛切な反省と心からのおわびの気持ちを表明してきた」と述べた。村山談話以降、」、4回にわたって発表された日本政府の談話は「植民地支配や侵略戦争に対し反省し、おわびする」という主体がはっきりした文言を用いてきたが、安倍談話はこれを崩したというわけだ。在韓日本大使館はこの日、安倍首相が言及した「第2次大戦における行為」について「侵略戦争はもとより植民地支配に対するおわびの気持ちを含む概念だ」と説明した。だが、安倍首相は談話発表後の記者会見で、このような内容についての言及はしなかった。 とりわけ安倍首相は「日本では戦後生まれの世代が人口の8割を超えており、あの戦争には何ら関わりのない私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」と主張した。 安倍談話の発表直後、岸田文雄外相は韓国の尹炳世(ユン・ビョンセ)外交部(省に相当)長官と電話会談し「歴代内閣の歴史認識は今後も揺るぎない」と説明した。これに対し尹長官は「日本政府の誠意ある行動が何よりも重要だ」と返答した。 一方、中国外務省はこの日、公式のコメントを発表し「日本は軍国主義による侵略戦争の本質や戦争責任について明確に告白し、被害国の国民に対し誠意ある謝罪をすべきだ。軍国主義による侵略の歴史を徹底的に掘り下げるべきであり、これを隠そうとしてはならない」と主張した。東京=金秀恵(キム・スヘ)特派員 , 李竜洙(イ・ヨンス)記者朝鮮日報/記事入力 : 2015/08/15 07:38安倍談話:韓日の専門家はどう見たか「慰安婦問題に初言及するも主体をあいまいに表現」 14日に発表された「安倍談話」には、1995年の村山談話の中心的な4大キーワード「植民支配」「侵略」「反省」「謝罪」が全て入っている。それでも、これはそういうふりをしているにすぎず、真剣味が感じられない、というのが専門家らのおおよその見方だ。 特に問題になっているのが、植民地支配をめぐる安倍首相の歴史認識だ。東北アジア歴史財団のナム・サング研究委員は「安倍談話は植民地支配を、あたかも第1次大戦後に西欧列強が作り出した世界的潮流であるかのように表現し、日本の直接的な責任は回避した」「『日露戦争は、植民地支配のもとにあった、多くのアジアやアフリカの人々を勇気づけた』と言ったが、これは、日露戦争後に本格化した日本の侵略のせいで大きな被害を受けた韓国の立場を全く考慮していない」と語った。 東西大学のチョ・セヨン特任教授は「『謝罪』や『侵略』という単語は入っていたが、謝罪する際にも間接話法を用い、過ちを犯した主体をあいまいにした」と指摘した。慰安婦問題に初めて言及する際に「戦場の陰には、深く名誉と尊厳を傷つけられた女性たちがいた」というあいまいな表現を使用したのも、こうした事例の一つだ。また、戦争の苦痛は繰り返し強調しつつも、韓国のような、日本と戦争しておらず、植民地支配で苦痛を受けた国に対する言及がない点も指摘した。ソウル大学のパク・チョルヒ教授は「中心的キーワードに全て言及しつつも、植民地支配の部分をあいまいにしてやり過ごしたのは、日本の右派を意識したもの」と分析した。 日本の専門家の反応には差があった。早稲田大学の重村智計教授は「『謝罪』という表現は入っているものの、それを(首相)本人の言葉としては言わなかった。慰安婦問題についても、『慰安婦』という名称は用いず、それに対する謝罪もなかった」と指摘した。これに対し、小此木政夫・慶応大学名誉教授は「村山談話を認めただけでなく、慰安婦問題にも(初めて)言及した」と語った。また一橋大学の吉田裕教授は「思ったより『反省』と『謝罪』が多く入っている」と述べつつも「中国や東南アジアに対する被害は比較的細かく出てきたが、韓日問題は談話に出てこなかった」と指摘した。呉允熙(オ・ユンヒ)記者朝鮮日報/記事入力 : 2015/08/15 07:40