ボージョレ・ヌーヴォー☆ランキング今日はボージョレ・ヌーヴォーの解禁日。さて、どこで飲もうかなと思ったら、日本橋・三越本店のフランス・フェアを思い出した。 わかるだろう。 百貨店は、いろいろなワインを試飲させてくれるのだ。 しかも、無料で。ハッハッハッ。 レストランでは、そんなことは絶対にできない。 今日は料理の鉄人・石鍋裕シェフのクィーンアリスの出店で、伝説的な定番「フォワグラ大根」とシャトー・カンボン(マルセル・ラピエール)のボージョレをいただくことになった。 いやあ、極楽、極楽。 醸造家のラピエールさんは、もう初老だが、安酒の代名詞だったボージョレを季節の銘酒にまで有名にした人物だ。 ワシも若いころ、ソーヌ川を下ってブルゴーニュを旅したときに、ワイン祭りで会ったことがある。縁があるなあ。 彼の自家所有のシャトーが「シャトー・カンボン」で、この酒はポール・ボキューズのワイン・リストにも載っている。 二酸化イオウのような防腐添加物も使わず、有機栽培したブドウを自然な酵母で発酵させるから苦味もないし、イチゴジャムのような香りと、スッキリとした甘さがある。 もともとボージョレというのは、ブルゴーニュ地方の「地域の名前」である。 北部のクリュ(村落)、ヴィラージュ(荘園)が地質もいいし、ブドウ畑の伝統や歴史もあって、値段も高い。 いわゆるボージョレ・ヌーヴォーは南部の地味の低いワインなので、新鮮だからおいしく呑めるが、1年も経つと瓶詰めだと当然、味が落ちる。 この地域で生産される早熟ワインが、この11月18日に全世界で解禁になるわけだ。 閣下のおすすめは、樽詰めのボージョレである。 これは、「ボージョレ 樽 ランチ」と、自分の住んでいる地域を検索すれば、飲めるレストランが出てくるだろう。 デュブッフのような大量販売品でも、樽詰めはうまいものが出てくるんだ。 樽の味も香りも、本当にいいものだ。 デュブッフというのは、醸造家でもなく、シャトーの領主でもなく、ボージョレの地酒を樽ごと買いつけて世界に売りまくる、「瓶詰め商社(ネゴシアン)」なのである。 みんな勘違いしているな。 「帝王」といっても、彼が自分で手をかけて生産しているわけではない。 中味は本当にボージョレなのか、隣接のものか、イタリアのが混ざっていないか、よくわからない仕組みになっている。 ニセモノ嫌いのワシは、どこでも見かけるような、どうでもいい酒なんか信用できないね。 _______________________________________________________ 最高にうまいボージョレといえば、やはりドミニク・ローランになるだろう。 この人はもともと菓子職人だったんだが、ワイン数奇が昂じて、自分でつくりはじめた人物だ。 契約農家から、いいブドウだけを選んで仕入れて酒にするから、品質が落ちることがない。 弓の初代・肥後三郎さんのような人だな。 だから、一本一本に間違いのない味が詰まっているんだ。 一口呑んで、本当にさわやかな気持ちになるぞ。 スポンサーにベルギーのユダヤ系投資グループがついて、自由に仕事をさせている。 食材や味にうるさいユダヤ人のお金持ちたちが投資対象として認めたワインだということ。 フィリップ・バカレという人のボージョレも面白い。 この人もワインが大好きでベンチャーのように、この世界に入った。ロマネコンティがヘッドハンティングしようとしたというニュースは有名だ。 ここも自作醸造家(ドメーヌ)としては少量生産なので、入手できれば大したもの。 帝国ホテルでは、名門のルロワ家、ド・ルーアン家のボージョレでも稀少なワインがそろっている。 まあ、それはそんなに急いで飲むことはない。 ド・ルーアン家は、ボージョレの中でも貴族出身のシャトー(荘園領主)だから、やはり味は確かだ。名前を貸しただけのブランドではない。 ルロワ家は、ロマネコンティの共同経営者だったから、醸造技術上はグランヴァン(別撰高給酒)の貴腐麹をつかって仕込む。 「完全主義の未亡人」といわれるマダム・ルロワと、醸造博士号を持つ二人の娘さんが家族経営で味を守りつづけている。 うまい酒、値段の高さには、確かに理由があるわけだ。 三越ではトゥール・ダルジャン、東急ではタイユヴァン、小田急ではトロワグロなど、三ツ星レストランの限定ハウス・ボージョレも出しているが、これは神戸や名古屋とかでは買えないから、別格で紹介だけしておこう。 通販なら買えるかな。無理することはない。 日比谷公園内の松本楼では、ピエール・アンドレがグラスワインで飲める。 アンドレさんも手摘み収穫で単一の自家所有のブドウ園から醸造しているから、考えによってはローランと互角のうまさではあるのだが、味わいの深さはローランが数段上だろう。 ローランはハーブを混ぜたのかと思うほど爽快な呑みごたえだ。 むしろアンドレの味はうすくちで軽めなので、限りなく果汁のように、ほとんど自己主張がない。 それはそれでよい。趣向の問題だ。 確かに松本楼のドミグラ洋食にはピッタリなのだ。 「苦いのは嫌い」というワイン初心者にもいい。 つまり、本当にうまい酒の味を知っていて、それを追求している人が、こだわり、愛情、手間とコストをかけて、良心的につくっているワインがうまいのだ。 特にピエール・アンドレやラピエールのように、ブドウの産地がはっきりしているのが一番いい。 そこで、すべてを試飲した曹操閣下のボージョレ・ランキングを公開しよう。 レストランで、「ありますか」と聞いてみたらいい。 1. ドミニク・ローラン ボージョレ・ヴィラージュ・ヌーヴォー 750ml 4,200円 *昨年ヌーヴォーを初リリースして大ヒットした。 2.ジョゼフ・ドルーアン ボージョレ・ヴィラージュ・ヌーヴォー 750ml 2,730円 *ブルゴーニュの中心地、ボーヌに位置する歴史あるファミリー・カンパニー。 3.ルロワ ボージョレ・ヴィラージュ・プリムール 750ml 4,200円 *ルロワ家の造るコクのある辛口ワインは、ヌーヴォーとしては例外的に長く品質を保つ。グランヴァンと同じ品格。 4.フィリップ・パカレ ボージョレ・ヴァン・ド・プリムール 750ml 3,360円 *自然派の新進気鋭が生み出す大地のヌーヴォー。 5. マルセル・ラ・ピエール "シャトー・カンボン" ボージョレ ヌーヴォー 750ml 3,570円 *完全有機製法を実施し、酸化防止剤無添加、無ろ過で瓶詰め。 6.オリヴィエ・ラヴィエ ボージョレ・ヴィラージュ・ヌーヴォー 750ml 2,730円 *ボージョレを知り尽くした醸造家、オリヴィエ ラヴェ氏の手から生まれるヌーヴォー。芸術的な”ブレンディング”の妙。 7. ピエール・アンドレ ボージョレ・ヌーヴォー 750ml 1,995円 *1923年ブルゴーニュのアロースコルトン村に誕生したドメーヌで、こちらのヌーヴォーも、単一畑”レ ロジエール”のぶどうからのみ造られている。でも割安だから安心。 8. ピエール・アンドレ ボージョレ・ヴィラージュ・ヌーヴォー 750ml 2,205円 *このヴィラージュ ヌーヴォーは、単一畑”ラ トレイユ”のぶどうからのみ造られている。 9.ジョエル・デュポン ボージョレ・ヌーヴォー レ・ピエール・フィーヌ 750ml 2,205円 *レ・ピエール・フィーヌ(美しい宝石)というキュヴェ名は、ぶどう畑を覆っている小さな小石が太陽の光を受けて輝く様を表した名前。つまり、産地がしっかりしている。 10.クロ・デュ・フィエフ ボージョレ・ヴィラージュ・ヌーヴォー 750ml 2,940円 *これもジュリエナ村の”ロベール”という単一畑のぶどうのみで造った、個性が感じられるヌーヴォー。 11.フランク・ジュイヤール ボージョレ・ヌーヴォー・キュヴェ スパシアル 750ml 3,150円 *家族経営の伝統的製法で、少量生産のワインを造り続けるジュイヤール。サンタムールとジュリエナ村近くの畑から。 12. ド・ラ・プレーニュ ボージョレ・ヴィラージュ・プリムール 750ml 2,835円 *オーナー夫人が「ボージョレの星」協会のレニエ村代表を務めるなど、地元では大変評価の高いドメーヌ。収穫は100%手摘み。 13.シャトー・ド・マラドレ ボージョレ・ヴィラージュ・ヌーヴォー 750ml 2,415円 *百十年余りの歴史を誇るシャトー・ド・マラドレ。サンジュリアン村の自社畑のぶどうのみを使って造られる限定ヌーヴォー。 14.シャンパニョン・ムーランアヴァン ボージョレ・ヌーヴォー 750ml 2,100円 *北部のクリュ・ボージョレの10村のアペラシオン(銘柄)で、普通のワイン造りもしているムーランアヴァン村のドメーヌ。 15.ブシャール・エイネ ボージョレ・ヴィラージュ・ヌーヴォー 750ml 2,205円 *250年の伝統と守り続けるブシャール エイネ社のヌーヴォー。 16.ポール・サパン ボージョレ・ヌーヴォー ”キュヴェ トラディション” 750ml 2,835円 *30年前のヌーヴォーの造り方を再現したスペシャルキュヴェ。ボトルのキャップも昔ながらの蝋でかためたワックスキャップ。 17.シャサーニュ ボージョレ・ヴィラージュ・ヌーヴォー 750ml 3,360円 *最高品質のボージョレを生み出す村として有名なランティニエ村産のヌーヴォー。 18. シャトー・ド・ブリュイザール ボージョレ・ヴィラージュ・ヌーヴォー 750ml 3,360円 *ボージョレ地区のクリュ・ボージョレであるブルイィ地区に位置するドメーヌ元詰めヌーヴォー。ブルイィ山の麓にブドウ畑がある。 19.モメサン ボージョレ・ヌーヴォー ”セダクション・キュヴェ・リディ” 750ml 2,940円 *ボージョレの名門、モメサン社のヌーヴォー。より長い時間をかけて発酵を行っている。”セダクション”とは、”魅惑的”という意味。 20. シャトー・ド・ピゼイ ボージョレ・ヌーヴォー 750ml 3,045円 *14世紀から続く歴史あるシャトー。伝統の上に改良と努力を重ねて作り上げられてきたワインは信頼の味。 ☆乾杯。 |