テーマ:日本文学(19)
カテゴリ:本
やはりノーベル文学賞作家の作品はどこか違う。 ジタバタ、ドタバタせずに、向かおうとするところに真っ直ぐに進んでいく。 登場人物の言葉、ほんの小さな動き、その表情やしぐさを丹念に書き表している。 その一つ一つの文章を読んだときには何とも思わないが、やがて物語が進行し、小説の全体が見えてきたとき、その一つ一つが絶妙な効果を見せていることに気付くのである。 もう少し言えば、信吾という初老の人物を描こうとするとき、その人となりを一度に表そうとはしない。 ゆっくりとじっくりと、小説の進行に合わせながら、タイミングをみはからって、信吾のちょっとした動きで表したり、信吾自身の言葉で語らせたりしている。 なんといってもすごいのは、信吾の過去の感じ方や思考を信吾の今に反映させているところだ。 しかも、しつこいくらいに丹念に、何度も。 そういった作業があるから、信吾という人物に厚みが加わり、一層リアリティーを感じることができるのだろう。 そうやって人物を描くから、登場人物たちが「本を開くといつでもそこにいる」と感じることができるのだろう。 少し自分のことを言えば、自分もやっとこういった小説を読めるようになった、ということなのか……。 2007-12-11 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2019.09.08 17:34:17
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