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2010.08.08
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註※このページは、本来「覚醒都市DiX」で公開する予定の「幻想水滸伝4」二次創作小説「クォ・ヴァディス」の改定ページ、新規ページを、サイトに先駆けて公開しています。
 そのため、後に「覚醒都市DiX」で公開されるものとは内容が変更される可能性があることをご理解ください。



クォ・ヴァディス39-3

  タルとビッキー、ネコボルトたちを送り出したマクスウェルは、猫型の愛らしい自分の住居にアグネスとヘルムートを招いて、陽気ではないが重要な会話を交わしている。

「ミズキさんの報告によれば、オルネラ将軍らは無事にラズリルに着いたようだ。
 ごく近いうちに、共同で海上演習を行うらしい」

 すでに海上での演習を充分に行っているマクスウェルらに比べて、行動が何日か遅れているが、マクスウェルらに比べて連合艦隊は大所帯である。
【オベリア・インティファーダ】とは事情が異なるだろう。
 ヘルムートがテーブルの上で軽く指をタップさせた。

「オルネラ将軍か。
 私は辺境の艦隊司令官に過ぎなかったから、中央の権力者である将軍とはじかに話したことはないが、有能な人と聞いている。
 だが、なにかにつけ正論に固執する癖があったようだな。
 その旨、何度かマルティン皇太子殿下から、もう少し視野を広げるようにと注意を喚起されていたようだ」

 その評価が誰かに似ている気がして、マクスウェルはこめかみを少しもんだ。
 カタリナだ。
 今でこそ、カタリナは一国を代表して騎士団を指揮するに足る度量を身につけているが、グレン団長の存命中は、周囲から気ぜわしく視野が狭い人物と思われていた。
 その視野の狭さが結果的に、マクスウェルをして、故郷であるはずのラズリル海上騎士団に対して複雑な感情を植えつける原因となった。
 無論、「昔の話」である。
 今はカタリナもマクスウェルも、一つの勢力を代表する身となった。
 いつまでも同じことをくどくどと言っていては、進む話も進まない。
 いまマクスウェルがカタリナに感じている複雑な思いは、別のことであった。

「そのオルネラさんに、なにか思うところでも?」

 アグネスに問われて、

「危うい」

 と、マクスウェルは言った。

「カタリナさんとリノ陛下、そしてオルネラ将軍。この三者の結びつきは、危うい。
 俺とヘルムートさんは、お互いに現実的な「利」を分け合うことで協力できている。
 だが、カタリナさんたち三者を結ぶものは、いまのところ、政治的な思惑でしかない。
 しかも、オルネラ将軍の側にどのようなメリットがあるのか、いまいち分からない。
 果たして、どこまでこの協力関係が維持できるか……」

 マクスウェルは、リノ・エン・クルデスの元で活動した経験と、シャルルマーニュから経済を学んだことで、「利害関係」というものがもたらす影響について、少しずつ考えるようになっていた。

「オルネラ将軍も軍政官として、グラスカやハルナで鍛えられた人だ。
 情誼的な動機のみでのこのこ出てくるほど、お人よしではなかろうが……」

 ヘルムートの指が、テーブルを叩く速度を上げる。
 口で言っているほど、ヘルムートもオルネラに全幅の信頼を寄せているわけではない。
 確かに、軍政官としての能力に問題はないだろう。
 先のクールークの崩壊事件における実績をみれば、実戦指揮における手腕も充分信頼できる。
 だが、クールーク国内での戦いと、この群島における戦いでは、明らかに違う点がある。
 この群島での戦いとは、つまり海上での戦いである。
 これまで内陸部で活躍してきたオルネラやバスクに、海上戦闘や艦隊戦の経験があるとは考えにくい。すべてが初体験にちかいのではないか。
 これが、オルネラがカタリナやリノ・エン・クルデスと共闘する上で大きな懸念になるのではないか。
 ヘルムートはそう思っている。

「最後までリノ国王とそのオルネラ将軍をひきつけておくことができれば、カタリナ団長の実力は本物だ。
 戦争を勝利することができれば、ラズリルは群島の覇者として、確実にオベル王国にとって変わることができるだろう」

「でも、もし上手くいかなかったら……」

 小さなテーブルの上で、オベリア・インティファーダの最高幹部が顔を突き合わせて表情を暗くした。
 アグネスの心配。もし、ラズリル、オベル、そしてオルネラ一派の協力関係が、なんらかの原因で崩れ去ってしまったら。
 そのときは、戦争の勝利どころではない。オベル王国に続いて、ラズリルも存亡の危機に陥ってしまうだろう。
 しかも、オベル王国のときよりも数段、状況が悪くなる。
 外部から突き崩されるのであれば、そちらにむけて内部は一致団結できるが、内部の不協和音によって瓦解してしまった場合、修復するのはほぼ不可能に近い。
 マクスウェルにとっては、ラズリルもオベルも「故郷」であった。
 知らぬ顔を決め込むことができるはずもなく、大きくため息をつく。

「アグネス、これはエレノアの発案だそうだが、カタリナさんたちのフォローについて、ターニャはエレノアから何か言われているのかな。
 策をバラ撒いて自分は高みの見物、というのであれば、俺はエレノアを見損なうぞ」

 自分の師匠に対して予想外の酷評を寄せられて頭にきたのか、アグネスは口を尖らせた。

「ターニャさんに何が言われているかは、私には知らされていませんが、エレノア様はそんな無責任な方じゃありません。
 群島解放戦争のときそうだったように、今回も、ご自分の策には最後まで責任を負われるはずです」

 そうだろう、とはマクスウェルも思うが、なにより、敵であるラインバッハ二世の下には、グレアム・クレイがいるのだ。
 大国クールークの海軍を私兵に仕立て上げてみせたあの策士が、この隙を黙ってみているかどうか。
 ヘルムートが言った。

「思えば、オベル国王が先だって、「群島諸国連合」構想で、卿の懸念と同じミスを犯している。
 政治的な思惑を先走らせて周辺諸国を抱き込もうとした結果、ナ・ナル島の反動分子が離脱し、ミドルポートの裏切りにあった。
 この教訓は、カタリナ団長も充分、胸に刻んでいるはずだが」

 やや皮肉を込めたヘルムートの批評に対して、さきほどのアグネスのように、今度はマクスウェルが少し表情を険しくした。
 彼はリノ・エン・クルデスと決別にちかい別れをしたとはいえ、先日までの自らの主公に対しての敬意は、一分子も損なわれていない。
「群島諸国連合」は、マクスウェルもリノ・エン・クルデスとともに、その充実に心血を注いだ大構想である。
 決して一面的な見方から批評できるものではないのだが、それはエレノアの策にも言える事であった。
 当事者か第三者かという差もあるし、結局は、目的を同じくしていても、ものの見方や価値観までが完璧に一致するわけではない、ということであろう。
 表面的には何も言わず、ひとつ頷いて、マクスウェルがアグネスに視線を向けた。

「カタリナさんは俺たちに対して、対等の同盟を結ぼうとまで言ってくれている。
 どちらにしろ協力関係は構築しなければならないが、そうなるとあとは一蓮托生だ。
 あちらが強力な連合勢力なることができるならそれが一番望ましいが、どんな理由であれ、原因であれ、共倒れになるのだけは避けたい。
 エレノアの策はエレノアの策として、それとは別に、俺達もなにか対策を練っていたほうがいい」

 だがアグネスは、この快活な軍師らしくなく、黙り込んでしまった。
 マクスウェルはアグネスに、暗に「エレノアの考えに固執せずに、自分の識見で考えろ」と言っている。
 自分はマクスウェルに「リノ・エン・クルデスから独立しろ」と焚きつけたアグネスであるが、自分自身がエレノアから独立することなど、考えたこともなかった。
 未だエレノアの壮大な策が成らぬ中、果たしてその一端の完成を任された自分が、エレノアの考えの下から羽ばたいていいものかどうか。
 沈黙するアグネスを見ながら、ヘルムートが言った。

「マクスウェル提督、気になることがある。
 卿のこれまでの話は、カタリナ団長にリノ国王とオルネラ将軍を纏める実力が無い、という前提に成り立っている。
 私としては、卿がそこまでカタリナ団長の実力を過小評価する理由が知りたいな。
 卿とカタリナ団長は師弟の間柄であったと聞いているし、先の事件でも戦場を共にしている。
 卿こそが、彼女の実力をもっとも高く評価してしかるべき人間ではないのかな」

「決して過小評価しているわけではないさ。俺はそこまで自信家じゃない。
 ただ、何事にも「絶対」ということはない。
 俺たち【オベリア・インティファーダ】には、まだ自信にできるほどの強さは無い。
 ラズリル側との関係がこちらの戦略に必須である以上、あちらの動向を気にしてしすぎることはないと思う。
 それに……」

「それに?」

 マクスウェルは一度目を伏せて深く息を吐き出してから、ヘルムートに向き直る。

「これは笑ってくれていい。
 俺は正直、今のカタリナさんが、恐い」

 これには、ヘルムートも、アグネスも驚いた。

「恐い? あのカタリナ団長がか」

「ああ。カタリナさんは変わった。
 今のカタリナさんは、俺が知っていた頃の彼女ではないんだ。
 表面では随分と落ち着いたし、内面では恐ろしく強かになっている」

 マクスウェルが知っていた頃のカタリナなら、敗戦したばかりのオベル海軍に、ラズリルに入るための条件を出したりはしなかったろう。
 無条件でラズリルに受け入れ、リーダーシップをリノ・エン・クルデスに譲り、次の戦いのために協力を申し出たに違いない。
 ラズリルがオベルの風下に立つ、という状況になってしまうが、それを打開するための決断力は、以前のカタリナにはなかったのだ。

「だがそれは、エレノア師とターニャの助言があったゆえではないのか」

「いや、グレン団長もそうだが、以前のカタリナさんも、そういう人の汚い部分を肯定する策を嫌っていた。
 それがガイエン海上騎士団から続く精神的な風潮だった。
 ターニャが話を持っていっても、きっとはねつけたと思う。
 はねつけて、リノ陛下と共に、正面からラインバッハ二世にぶつかっていったはずだ」

 それが、リノ・エン・クルデスとクールークの勢力を利用して自分の勢力を強化し、マクスウェルを利用して結束を乱しそうな要素をラズリルから出し、結局は、オベルではなくラズリルを反ラインバッハ陣営の中枢に仕立て上げてしまった。

「状況に流されて結果的にそうなった、とは、俺には思えない。
 エレノアの策が底にあったとしても、それにしがみついているだけにしては、カタリナさんは落ち着きすぎている。
 そこまで信頼しきるほど二人の間に親交は無かったはずだし、この状況で開き直れるほどの大胆さも、俺の知っているカタリナさんはもっていなかった」





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最終更新日  2010.08.08 16:30:28
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