離島から転勤のため長崎に住むことになった。その年の5月頃、広報誌に仔犬をあげる記事が載っていた。借家では飼ってはいけないのだが、大家に内緒で飼うことになった。生後1,2ヶ月のまるまるした仔犬である。白と黒のふさふさしたかわいい、ぬいぐるみみたいな犬である。犬小屋もないため、ダンボールを利用した玄関に寝かせたが、いつのまにか私の布団へ潜り込んで寝ていたものだ。朝には早く顔をなめられて目を覚まされた。まず家族を起こして廻るのが日課であった。また、元気があるので、よく隣家の植え込みを荒らしてよく怒られたものだ。
その後15年が経過して、平成17年5月2日3時頃、学校へくろが亡くなったと電話がかかり、急遽家に帰ってみると、いつもの犬小屋で静かに横になっていた。ダンボールへ入れて、翌日市役所から引き取りに来てもらうことになっていたので、1昼夜は“くろ”との名残を惜しむことになった。この数週間は食も細くなり、身体もがりがりでいまにも倒れそうな状態であった。足も弱り、かろうじて犬小屋から出て太陽を浴びるのを見ると痛々しさを感じた。犬でも高齢化が進んでいて色々な介護補助器具があることを聞く。あの元気な仔犬から15年も経過したのかと目を疑いたくなる。なんとか助けてあげたくても言葉はわからない。老衰を待つのみであった。好物のりんごすら見向きもせず、完全に食べなくなってしまった。歩くのすら満足にできずどうしようもできなかった。 つづく
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Last updated
2006年02月20日 08時47分58秒
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