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おいでやす。郡山ハルジ ウェブサイト。

5人の歌姫 - My 5 Sirens

【独身男性に捧ぐ5人のサイレンたちの歌声】

「サイレン」といっても消防車のことではない。その歌声を聞いた船員を惑わせて船を座礁させてしまうという伝説の海の妖精、転じて魅惑の歌声を持つ女性のことである。ここに並べたのは、オイラがかつてお世話になったか、今でもお世話になっているバンドの女性ボーカルの歌声のレビューである。このレビューを読んだ人にとくに聴いて欲しいサンプル曲も併記してみました。

Bjork Bjork --Sugarcubes「Birthday」
突然変異で東洋人の風貌を持って生まれたが、れっきとしたアイスランド人。オイラはニューヨークに住んでいた頃いちどライブで見たことがあるが、相当ぶっ飛んだお方らしい。10数年前に訪日した際、インタビューの最中にハナクソをほじくりはじめたり、ミニスカートの股を突然開いたりとかした話を雑誌で読んだことがある。ほんの数年前にもアメリカのどっかの空港で、マイクを突きつけてコメントを求めたインタビュアーにいきなり殴りかかってボコボコにしたのが報道されて有名になってたナ。ま、いわゆる「紙一重」なんでしょうねえ。オイラと同じ年のはずだが、彼女が18歳の時に生んだ息子(シンドリとかいう名前だったナ)はそろそろ成人する年のはず。ここ10年くらいはソロアーチストとしてのビョークしか知らない人が多いが、オイラはシュガーキューブズのボーカル時代のビョークの歌声にしかあまり興味がない。’88年のシュガーキューブズのデビュー当時オイラはたまたまイギリスに滞在していたが、デビューアルバム「Life’s Too Good」が当時のイギリスの音楽誌「NME」のレビューで10点満点中50点(つまり、満点のアルバム5作分)の評価がついていたのを覚えている。同LPに収録されている「Birthday」を聴くたび、当時童貞だったオイラはビョークの歌声にエクスタシーを味わされたものだ。この曲の最後のサビの部分の歌声を聴いて欲しい。彼女自身、歌いながらイッてるんじゃないかと思うような恍惚の歌声。「リンゴ追分」を歌う美空ひばりをかつて超えたのは「Birthday」を歌うBjorkだけだ--とオイラは信じている。

Liz3 Elizabeth Frazer --Cocteau Twins「Blood Bitch」
コクトートゥインズは日本でも比較的認知されているグループだろう。でもその知られ方は、アンビアント系のエコーの利きまくった音楽と、透き通ったボーカルの神秘的な歌声。--でも、20年前のデビュー当時のコクトートゥインズは、ほとんどポジティブ・パンクに分類されるようなドロドロした重苦しい音楽と、恨み節のような引き攣った歌声が印象的な、紛れもないゴシック系のバンドだったのだ。歌詞もスゴイ。『私は女。血みどろの雌犬。言われたままに咥える、奴隷娘…』まるで戸川純を本気にしたみたいな歌詞だナ(笑)。オイラはこの当時のコクトートゥインズにくびったけ(←死語)だった。この奴隷娘の歌は、彼らのデビューアルバムである「Garlands」の一番はじめに収録されている。ボーカルのエリザベスは、当時は独特の「引き攣り声」を混ぜて歌っていた。小節の終わりの声を「ヒィヒィヒィィィ…」とケイレンのようなコブシで引き摺るのだ。このヒステリー発作のような引き攣り声が、聴く者の背筋を掻き毟る。こんな唱法を使うボーカルはほかに聴いたことがない。--あいにくエリザベスは声帯にとんでもない負担を懸けるこの無茶な歌唱法のせいでこのアルバム発表後に喉を手術するハメになり、以降彼女のこの「引き攣り」ボーカルは聴けなくなってしまった。その結果なのかどうかは知らないが、エリザベスは地獄の歌声から天の歌声の持ち主として知られることになり、当時のオイラの熱も冷めてしまったのでした。

Dagmar Dagmar Krause --Art Bears 「Freedom」
ドイツの生んだ「ハルマゲドンの歌声」。一説によると、エライ富豪の娘だそうな。70年代からいろんなグループに参加して歌っていたみたいだが、何と言っても彼女が本領を発揮したのが紛れもなく80年前後に活躍した泣く子も黙るArt Bears。その歌声は、”声を使った凶器”とでも言おうか、強引なまでの勢いがあり、否応なしに聴く者の胸に響く。学校で真面目に声楽の勉強をしていただけあってその歌唱法にはしっかりした基礎の裏付けがあり(←これはArt Bearsのメンバー全員に言えることだが)、それに加えて誰もが真似できない”声のアクロバット”を演じてくれる。金切り声で叫ぶ、呪いように重く呟く、爽やかな透った声で謳う、泣く・嘆く…ありとあらゆる歌唱の表現方法を実験しているかのよう。そしてその歌声の背後でつねに彼女を突き動かしているのが、得体の知れない「この世に対するあてのない恨み」「絶望」のようなものらしい。おすすめLP10撰でも書いたが、Art Bears最後のアルバム収録の「Freedom」はDagmarの到達した真骨頂である。歌唱力のある(スターリンの)遠藤ミチローとか(ボアダムズの)山塚アイ、って感じか --いや、ぜんぜん違うな(笑)。

HarrietWheeler Harriet Wheeler --Sundays「Wild Horses」
この世を悟った処女の歌声。諦念と希望を同時に顕現する歌声。どんな頑なで硬化した心をも透過して癒してしまう歌声。--Harrietのその声は、思春期の少女のような屈託のない澄み切った歌声だが、それは決して「純真無垢」な者の声ではない。この世を達観した霊感師のオバハンみないな妙に落ち着き払ったトーンがその声に同居しているのだ。Harrietは神の声をチャネリングしているのかも知れない。90年代の初頭にリリースされたSundays の2枚目のLPの最後のこの曲は、ローリングストーンズのカバー曲だそうだが、酒臭い埃臭い放蕩者どもの曲が、HarrietとSundaysの手に掛かるとこんな爽やかな澄み切った曲になってしまう。この曲のHarrietの歌声を聞くと、自分も涙を流しながら改心して、明日からまっとうに生きていこう、なぁーんて気になってしまいマス。

[番外]
JunTogawa 戸川純 「パンク蛹化の女」「眼球奇譚」
オイラは10代の頃、この人の歌を聴くたび「この人はなんで自殺しないのかな、こんなに辛いのに。」といつも思ったものだ。
でも、いまはわかる。この人にとって、自殺は「ライフワーク」であり「生甲斐」なんだと。彼女が熱いお湯にガマンして浸かっているのは、冷水を浴びる快感を倍増させるためなのだと。
妹が自殺した時、葬式でTVのインタビューに答えてたが、20年前と同じアノ調子だったよ。今から20年後もアノ調子だったら、その時は、文化勲章でもあげてやってください、総理。


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