2018/02/19(月)09:43
パーイからチェンマイへ 超短編小説あり ~
まぁまぁ、気楽にゆったりと過ごしたパーイですが、帰る日が
やって来ました。
朝は、宿にもパンとコーヒーの朝食が付いているのですが、町へ
お粥を食べに出かけました。
30バーツです。大体、100円ですね。
宿に帰り、無料だから、パンを1枚とコーヒーでも飲むか、と
準備していると、白人のおばちゃんが来ました。
「パーイは、うるさくて好きじゃーない。」っていきなり言います。
「え? は?」、と思いましたな。だって静かですから。
そしたら、夜中の1時頃、話し声がして寝られなかった、と言うのです。
あぁ、そうか、そう言えば、昨夜、話し声が聞こえたなー、あれは、夢でなく
誰かが、大声で話していたのか、と分かりました。
メーホーソンの方が、好きだと言った、そのおばちゃん、フランス人でした。
タイ1ヶ月、ラオス1ヶ月、合計2ヶ月の休暇だそうです。
欧州人は、たぶん、そのように、2~3ヶ月の休暇を、タイとか、
ラオスとか、カンボジャで過ごすのでしょうね。
これが、パーイから、チェンマイへ移動するミニバスです。
ミニバスの中です。
やはり、町を歩く人々と同様、白人と中国人が客です。
日本人は一人もいません。
ラオスや、マダガスカルのように、ぎゅうぎゅう詰めの車内ではなく、
一人一座席ありますから、ゆったりです。タイは進んでいますね。
さて、昨夜の夕食です。
安くて美味しい食堂で、ビールを飲みます。
ガキが騒いでうるさくて、本も読めませんが、途中で、ガキども、どっかに
行ってしまったので、その後は、本を読めました。
村上春樹の、「ダンス・ダンス・ダンス」って本ですが、進行が遅くて、
面白くないなー、と読み始めました。 が、途中から面白くなって来ました。
心理描写が細かくて長いので、早く進めてくれー、と思いますな。
つまみは、野菜炒めです。豚肉チャーハンとか、そんなものばっかり
だったので、野菜を食べたくなったのです。
つまみには、丁度良かったです。
まだ、小腹が空いているので、チェンマイでも、良く道路端で
売っている、寿司を買って見ました。
1個5バーツで、6個買いました。
美味しいとは言えませんが、まぁまぁ、食べられなくはないです。
ちょいと、つまんで食べるには、良いですね。
さて、この食堂に、イギリス人らしい、老人が一人座って、ビールを
飲んでいました。
それで、超短編を書いて見たくなりました。
===========================
男は、一人でビールを飲んでいる。
パーイの片隅にある、小さな食堂である。
道路に面している。
男は、道路を歩く、若い女性たちや、カップル、老年の夫婦を、
じっと見つめている。
みんな楽しそうに、見える。
男は、ジョンと言う。イギリスでは、ありふれた名前だ。
名前の通り、ジョンは、ありふれた人生を過ごして来た。
ジョンは、孤独を感じている。
故郷から遠く離れた、アジアの片田舎で、俺は何をしているのだ。
俺は幸せなのか、不幸せなのか?
彼は、一昨年、仕事を辞めた。
まだ働きたかった。会社は、定年を過ぎても働かせてくれた。
が、業績が悪くなったと、ジョンに辞めて欲しいと言って来たのだった。
嫌も応もない。辞めるしか、方法はなかった。
その後、やる事もなく1年が過ぎ去った。
ジョンには、愛する妻も、可愛い娘も、頼りがいのある息子もいる。
しかし、孤独を感じるのであった。
人生の悲哀を味わうのであった。
俺の人生は、これで終わりなのか? と。
こうやって、何もせず、1日1日が過ぎ去って、死んで行くのか、と。
そして、行った事のない、遠い所へ行きたいと思った。
どこが良いのか、分からない。
人種の異なる地域、国へ行きたかった。
真面目に働いてきたが、資金が潤沢にある訳ではない。
自然と、物価の安い国が好ましいと言う事になり、諸々、検討したが、
タイを選んだのであった。
旅に出たら、何かがある。
そう願ったのである。
しかし、同じだ。何もない。旅の地にいても、孤独は変わらない。
道路を眺めていた視線を、ふと食堂の真向かいに移した。
男がいた。
アジア人らしい。中国人か? と思った。
この地は、欧州人と中国人が多いからだ。
その男も、道路を歩く人々を、眺めていた。孤独そうに見える。
同類の男と感じて、親しみを覚えた。
じっと男を見ていたら視線を感じたのか、自分を見た。
目が合った。
ジョンは、唯一知っている、中国語で、「ニィハオ」、と言って見た。
男は、肩をすくめるだけであった。
中国人でないのかも知れない。韓国人か、日本人か?
ジョンは、韓国語も日本語も全く分からない。話しかける事も出来ない。
アジア系の男は、また、道路を歩く人々を眺めている。
哀愁を感じる男である。
「人生って、こんなもんか・・・」
ジョンは思う。
「こんなもんなのだろうなー」
今、幸せそうに歩いている、カップルだって、いずれ孤独になるのだ。
ジョンにもそんな時期があった。妻と恋人時代だ。
世界中で俺が最も幸せな男だ、と思ったものである。
今も妻を愛してはいる。
だが、幸せも色あせて来るのである。
これから、どう生きていくかなー?
男は、ごくりと、コップのビールを飲んだ。
相変わらず、若い娘や、カップル、老夫妻が、楽しそうに歩き去って行く。
==============================
世界の先進国では、孤独な老人が多いと言われています。
チェンマイで充実した毎日を送る方々とは、別の人種のようですね。