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カテゴリ:作家
あらすじ
悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。2年の春、写真部の新入生歓迎撮影会で、小平由樹枝に会う。その後、恋人関係になる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行。大学の推薦が決まった後、上高地へ出かけ二人は結ばれる。実力試しに受験したW大学に合格するも、M大学に進学する。そして1年が過ぎた。春休み、希望大学に合格した由樹枝が東京にやって来た。短いが二人の同棲生活である。 ![]() 写真はネットより借用 =================================== 悠介がタオルで身体を拭きながら風呂から出て来た。 「ビールね?」 由樹枝は、冷蔵庫からビールを取り出して、悠介の前に置いた。 「由樹も座れば?」 マーボー豆腐を持ってテーブルに置いた由樹枝が言った。 「ちょっと待ってね。飲んでいて? もう一品炒めてからね。」 美味しそうなマーボー豆腐である。ほどなくして、豚肉野菜炒めを作って持って来た。 「由樹も少し飲めば?」 悠介が由樹枝のコップにビールを注いであげた。 「じゃー、乾杯だ。」 「うん、乾杯!」 「どう、料理は?」 「うん、美味しいよ。受験で忙しかったのに、どこで覚えた?」 「全然、今日、料理本を買って、その通りに作ったの。」 「そうかい? 仲々、美味く作れているよ、大したもんだ。」 「私、料理を作るの好きみたい。毎日、作るからね。」 楽しい会話である。バイトの疲れも全く忘れてしまうようである。 「土日だけどさ、東京のどこへ行きたい?」 「う~ん、分かんないけど、渋谷とか行きたい。」 「渋谷か、何があるのか分からないけど、渋谷へも行こう。」 食事の間、東京見物の話題が続いた。浅草や、上野、東京タワー、皇居などへも行く事になった。悠介は、それを元に、もう一度、ガイドブックで行き先を確認しようと思った。 悠介はビールを飲み終えたが、まだ飲み足りない気がする。ウィスキーも買ってあった。それを水割りで飲み始めた。記憶が飛ぶので、飲み過ぎに注意せねばならないが、由樹枝もいる自室である。安心して飲めるのであった。こんな毎日が続くならば、結婚って良いなー、と心底思った。 翌日も翌々日もバイトであった。帰れば由樹枝が料理を作って待っていてくれる。二人で話しながらの食事も楽しい。夜は一つの布団に一緒に寝る。由樹枝も悠介も寝る前には必ず交合をするものと思っている。若いのである。毎晩でも全く問題はない。誰にも邪魔されず心行くまで愛し合う。そして心地よい疲れに熟睡する。これほど健康で健全な暮らしもないであろうか? 土曜日がやって来た。ようやく1日中、一緒にいられる日である。年寄り臭いかもしれないが、まず皇居に行った。アパートから近い事もあったが、皇居を散歩したかった。観光客はいたが、大混雑でもない。二重橋も見た。ここに天皇陛下が住んでいるのか、と雲上の人の事を思った。 皇居をゆったりと手を繋いで散歩した後は、東京タワーへ行く。大展望台が地上150m、特別展望台は250mもある。二人は特別展望台の地上250mまで登った。快晴のこの日。遠く富士山まで見える。 「ねぇ、アパートは、どの辺り?」 「あそこが今行って来た皇居だろう? その向こう側がアパートのある所だよ。」 「見える?」 「分からないなー。」 東京湾も良く見える。絶好の観光日和である。 「ねぇ、見て見て! あそこ、凄い桜見たい。行って見たい。」 「皇居に近いね。たぶん、千鳥ヶ淵じゃーないかな? 桜の名所だよ。」 「行こうよ、あの桜、近くで見たい!」 「良いよ、渋谷へ行く予定だったけど、その前に、靖国神社も行こう。」 東京タワー付近で昼食を食べ、靖国神社へ移動する。多くの人達が歩いている。 千鳥ヶ淵の桜は、満開である。 「凄い綺麗ね。」 「桜も凄いけど、人も凄いな。これじゃー、迷子になりそうだよ。」 「綺麗ねー!」 二人は手を繋いで、千鳥ヶ淵を横目に見て、そして満開の桜を見ながら歩いた。これだけの人がいるのに知り合いはいない。混雑の中で二人だけを感じながら。 靖国神社へもお参りした。二人とも、戦争は全く知らないが、戦没者の人達が眠っているのは知っている。 次は若者が多いと言われる原宿を目指した。まだこの頃は竹下通りもない頃である。それでも若者は多い。アイスクリームを買って舐めながら歩いた。 「何か買いたいものある?」悠介が聞いた。 「う~ん、そうねー? 記念に部屋に置くものを買うかなー?」 ===================================
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久々の小説ですね。50年以上も若返った気がします。
我が学生時代、その頃は恋人など眼中に無く、自動車部に入部して、つな着(作業着)を着て油だらけで自動車の整備をしていました。 女性の入部もありましたが、免許取得が目的、私は高校時代に大型自動2輪車と普通自動車の免許は持っていましたから言わば教官で乗用車の屋根を剥ぎ取った車で運転を教えていました。 部の女性とは仲間意識、全日本学生自動車連盟のラリーに参加したり,スポンサーを探し遠征をしたりていました。 女性との個別な付き合いは就職してからと、それ以上のことは考えない時代でしたね。 (2020.11.27 21:03:21)
ご隠居さんへ
若い時に、何かに打ち込む事が出来れば、それだけで幸せですね。 時間があるのは、学生時代、仕事を始めたら、その時間は少なく なります。 自動車に熱中したのは、いい思い出ではないでしょうか? 寺本悠介は、その点、バイト以外は何もしていないノンポリで且つ 何もしていません。熱中派ではないのですね。いつも冷めた目で みています。 (2020.11.28 06:51:09) |