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カテゴリ:作家
あらすじ 悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。大学は東京のM大学である。その間、小平由樹枝と良いお付き合いをした。大学2年になりとあるコンパで飲み過ぎて矢代美恵子と深い関係となる。小平由樹枝を愛していたが、愛想をつかされ振られてしまった。その後、美恵子とは変則的な付き合いを行い、1年先輩の美恵子は就職して大学もアパートも去った。悠介は大学4年になり就職活動も終わり、希望の会社に就職も決まった。そして友人高橋の結婚披露宴も無事終了。その後新婦の友人の唐橋由美子と親しくなったが、別れたいが別れさせてくれない。一方、美枝子は玉の輿と言える結婚する事になった。3月末、悠介は就職したが、実習中に由美子が自殺未遂をしたと言う連絡を受けて真っ青になった。由美子の父親に会い、慰謝料も支払い問題は解決した。悠介は希望の鹿沼工場に配属され社会人生活が始まったが、女性問題がありタイのシラチャへの出張が決まった。シラチャーでの仕事、生活は順調である。2年強のシラチャ生活も去ることになる。 ![]() 写真はネットより借用 =================================== 山下課長はそれで得心したのかどうか分からないが、まぁ、色んな経験は良い事だ、と許可してくれた。寮からそれほど遠くない。ワンルームであるが、タイでは珍しいと言われるキッチンが付いていた。バスタブはないがシャワー・トイレ付である。希望をすれば、寮でも食事は作ってくれる事になっていた。 週末には必ずハンサが部屋にやって来た。平日も来て泊まる事もあった。2年間、喧嘩もせずハンサと付き合って来た。上司たちも薄々二人の関係に気付いているようであるが、特に聞かれもせず波風も立っていない。ハンサは良い娘である。お金も使わない。おねだりもない。悠介といるだけで幸せと言った感じである。ハンサも23歳になっている。出会ったのが21歳だった。身体の関係も順調である。おねだりは一切ないが、旅行に出た時や、誕生日など何か買ってあげているが、お金のかからない娘である。 2年の間、タイ国内も結構出かけた。パタヤ、バンコクが多かったが、ダイビングのライセンスも取ったので、プーケットや、サムイ島でも潜った。悠介は海の魅力に憑りつかれていたのである。この2年間強、悠介にとっては忘れえない出来事だらけであった。出来れば、このままシラチャーに留まりたいがそう言う我儘も言えない。元々、出張であったのを強い希望を出して現地赴任にして貰ったのである。 ハンサとの別れが迫っていた。心も身体もぴったり合うと思うが、結婚となると戸惑いがある。理由を問えと言われると答えに困る。特別な理由もない。悠介にとって外国人であると言う事が心の中に引っかかっているのかも知れない。結婚したかった小平由樹枝に匹敵する関係であると言える。彼女の生活環境もある。日本へ一緒に行こうと言った場合、彼女の父母の問題がある。タイ人は家族思いである。家族を捨てて日本へ行くはずがないのである。ならば悠介がタイへ移住すればいいのであるが、それも簡単ではない。移住した場合、会社がそのまま雇ってくれるかどうか分からない。 そんな逡巡をしているが、悠介の帰国は、もう2週間先に迫っている。 その夜も外食してから、ハンサは悠介の部屋に来た。 「もう2週間したら、日本へ帰らねばならない。」 「分かっている。分かっているけど、そうとは思えない。ずっと悠介と一緒にいたい。」 「俺もそうしたいが、そう言う訳には行かない。日本からも帰国を要請されているし、これは最初からの約束でもある。短期の出張だったのをお願いして、無理に転勤にして貰った。これ以上の我儘は言えない。」 「それも分かっているけど、悠介がいなくなる生活は考えられない。」 「日本に来れないか?」 ハンサは暫く下を向いて考えているようである。 「無理よ、両親もいるし、私一人が日本へ行く事は出来ない。」 「そうだよな。これは何度も考えた。」 悠介はハンサの肩を掴み自分の方に引き寄せた。ハンサは自然と悠介の胸の中に顔を埋める形となった。ハンサは暫くそうしていたが、激しく悠介を抱きしめた。強い感情が襲って来たようだ。悠介も堪らなくなってハンサをさらに引き寄せ抱きしめた。自然と口づけを行う。もう何度そうしたであろうか? 悠介はハンサをベッドに誘った。2週間以降会えないと思うと身体の奥から燃え上がるものがある。ハンサも悠介に身体を預けたまま、ベッドに横たわった。いつもの手順でハンサに愛撫を行う。こうなると衣服は邪魔である。ハンサの身に着けた衣服を悠介が丁寧に脱がせる。ハンサも協力するから簡単である。そして悠介も全裸になった。ハンサの身体の上に悠介は覆いかぶさった。肌と肌の接触は気持ち良い。口づけを行う。そして右手でハンサの豊かな胸に手を置き弄る。不自然な体形でうまく愛撫が出来ない。悠介はハンサの横に身体を移動した。これで愛撫は可能である。 2人は十分な愛の交換を行った。ぐったりと横たわる二人である。快感に浸っている。しかしいつもの快楽の後の安心感が少ない。もう別れがすぐそこに来ている事が、そうさせるのであった。 「別れは寂しいな。」 悠介はハンサの身体に手を置いて言った。 「寂しい。」 「どこにいても、俺はハンサを愛している。そしてハンサが幸せな毎日を送る事を祈っているよ。」 「ありがとう。」 「これから会えなくなるけど、日本から手紙を書くよ。」 「うん、私も書く。」 「ハンサは美人だから、すぐにボーイフレンドが出来るよ。」 「そんな気持ちにはなれない。」 「恋を失った寂しさは、新しい恋ですぐに忘れると、ある作家が言っていた。大変申し訳ないが、俺の事は忘れて欲しい。」 ハンサの瞼から涙が溢れ出た。強い感情に押し流されるように咽び泣く。悠介は身体を抱き寄せる事しか出来ない。 暫く涙を流していたハンサであるが、涙を拭いて言った。 「私、悠介が帰る日まで毎日、会いたい。」 「あぁ、勿論だ。俺も、毎日会いたい。」 ================================== お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2025.05.05 10:23:47
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