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貧乏旅人 アジアの星一番が行く 世界への旅

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2025.08.13
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カテゴリ:作家



あらすじ
悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。大学は東京のM大学である。その間、小平由樹枝と良いお付き合いをした。大学2年になりとあるコンパで飲み過ぎて矢代美恵子と深い関係となる。小平由樹枝を愛していたが、愛想をつかされ振られてしまった。その後、美恵子とは変則的な付き合いを行い、1年先輩の美恵子は就職して大学もアパートも去った。悠介は大学4年になり就職活動も終わり、希望の会社に就職も決まった。そして友人高橋の結婚披露宴も無事終了。その後新婦の友人の唐橋由美子と親しくなったが、別れたいが別れさせてくれない。一方、美枝子は玉の輿と言える結婚する事になった。3月末、悠介は就職したが、実習中に由美子が自殺未遂をしたと言う連絡を受けて真っ青になった。由美子の父親に会い、慰謝料も支払い問題は解決した。悠介は希望の鹿沼工場に配属され社会人生活が始まったが、女性問題がありタイのシラチャへの出張が決まった。シラチャーでの仕事、恋愛も順調である。2年強のシラチャ生活を終え、鹿沼に帰り2年が経過した。そして2年振りに心がときめく女性を会う。



写真はネットより借用

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千恵子の家庭の話を聞きながら、ビールを飲んだ。家族関係を聞いて、さらに二人の距離が近づいた気がする。悠介も家庭事情を千恵子に話した。長男だけど、姉が家を継いで義理の兄貴も名前まで替えて家に入ってくれたので、親の面倒を見る事がなくて気楽なんだ、とも話した。

「そうだ、次のデートはどこにする?」
「え? 次のデートですか?」
「もう。嫌かい?」
「そんな事はないですけど・・・。」
「どこが良いかなー?」
「私、あんまり車で行った事ないので、どこが良いか・・・。」
「茨城県の筑波山へ行って見る?」
「筑波山ですか? 聞いた事あります。学校の遠足で行く事があったのですが、私はその時、風邪引いてしまって行けなかったのです。」
「あぁ、そう、それなら筑波山にしよう。僕も行った事がないんだ。」

そんな会話があって、次のデートが決まった。悠介は楽しいなー、と胸をワクワクさせていた。飲み終わり、食べ終った。悠介は千恵子をバス停まで送った。飲んでいるので車では送れない。握手をしてお休みを言った。

7月に入ったある日、製造現場にいる吉田と言う男性から電話があった。話があるので時間を作って欲しいと言う。悠介は何の話かな、と思いつつ、備品が足りないのだろうか、などと考えながら、応接室を予約した。吉田は予約した時間に正確に来た。
「製造2課の吉田です。」
「総務部の寺本です。」
お互いに初対面であるが、自己紹介した。
「すみません、と唐突で言い難い事なんですが、寺本さんは橋本千恵子さんとお付き合いしているのですか?」
「えー? 何だって?」
「ですから、橋本千恵子さんと付き合っているのですか?」
「どうしてそんな事を。僕は付き合ってなんかいないよ。」
「そう言う噂を聞いたのです。」
悠介は、どこからそんな噂が出たのか信じられない。デートは一度しかしていない。誰にも会わなかったはずである。もしかして居酒屋にいたの誰かに見られたのか?どんな話か知らないが、ここはしらばっくれて置こうと思った。

「実は、僕も彼女と付き合っているのです。何度かデートしました。キスもしました。ですから、彼女は僕の恋人と思っていたのです。ですが、僕の他に彼女と付き合っているのがいました。僕の1年後輩の笹川って奴です。彼から呼び出しを受けて話しました。彼も何度かデートしたと言っています。その時、総務の寺本さんも付き合っていると聞きました。」
それが本当なら酷い話である。二股どころか三股である。しかもキスまでしていると言う。純情そうな可愛い顔をして信じられない。

「信じられないね。そんな話。廊下で何度か話した事はあるけど、付き合ってはいないよ。誘おうかと思っていたけどね。」
「そうですか、では、僕が彼女と付き合いを続けても文句ありませんね。」
「それは、彼女次第じゃーないの? 彼女が付き合いたいと言うのならば、それは全く構わないと思います。しかし、彼女が別の男を選ぶならば、きっぱりと身を引く事だね。」
悠介は言質を取られないように、そのように言った。千恵子とは今週の日曜日デートの約束がある。本人にどうなのか聞いて見たいと思った。本当に3人もの男と付き合っているのか? 

吉田は納得しないまま、応接を出て帰って行った。こんな話である。勇気を出して来たのであろう。悠介は、そんな話を聞いても千恵子と別れようとは思わなかった。千恵子はそれだけ悠介にとっては魅力があるのだ。しかし会っていたらそんな3人もの男とデートしてキスしているとは信じられない。凄く楽しい雰囲気の時と、考え込むような時もあった。若しかしたら、他の男の事を考えていたのかも知れない。

日曜日になった。7月に入っていた。6日である。千恵子と筑波山へ行く日である。

朝から空は薄曇りだったが、雨の心配はなさそうだった。鹿沼駅前で待ち合わせた千恵子は、白いブラウスに薄い水色のスカートという清楚な服装で現れた。いつもの会社での制服姿よりも、いくらか大人びて見える。
「おはようございます。」
「おはよう。今日は楽しもう。」
そう言って車に乗り込み、筑波山へ向けて出発した。

高速道路を走りながら、車内にはラジオの音楽が流れている。しばらくは他愛ない会話をしていたが、悠介の心の片隅には、数日前に吉田から聞いた話が残っていた。千恵子の横顔を見ると、あの噂が本当なのかどうか、確かめたい気持ちがふつふつと湧き上がる。しかし、せっかくのデートの空気を壊したくもない。

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Last updated  2025.08.13 06:39:59
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