「ザ・俳句十万人歳時記」例句募集!新年4
第三書館「ザ・俳句十万人歳時記」(春・夏・秋・冬の部)では、ご協力ありがとうございました。
いま「新年の部」の編集の最終段階になり<行事の部>の初校中です。毎回ですが困っているのは季語にふさわしい例句がないこと。少ないことです。
現在「行事の部」の例句を募集中です。おかげさまで多くの例句をお寄せいただきました。募集は10月31日で締め切りましたが、このブログ上での応募(掲示板または私書箱)またはメールに限り11月30日まで追加募集します。よろしくお願いします。掲載されている句は応募いただいた句で掲載候補作です。(最終結果ではありません。また<松田ひろむ>の句は参考作です。)句友にもお知らせください!
行事の部
獅子頭の神事(ししがしらのしんじ) 御頭神事
一月から二月にかけて三重県伊勢市とその周辺で行われる獅子舞。「ジンジ」とも呼ばれる。悪疫退散や家内安全を祈る。宇治地区と呼ばれる伊勢神宮内宮領周辺にはこの神事は無く、伊勢神宮外宮領の山田産土八社で実施されてきた。その山田産土八社とは、箕曲松原神社、茜稲荷社、今ノ社、坂ノ社、藤ノ社、須原大社、牛頭社、世木神社である。舞手は、頭と尾の二名で踊り、踊り手の若者が御頭を奪いあう。昼間は神社境内周辺で舞を奉納し、夜には、ウチマツリと称して松明や大焚火が点火され、災厄を村外に送り出す形態をとる。獅子は藁をくわえ、火の中にほりこむと火は瞬時に燃え盛り舞は絶頂に達する。無形民俗文化財(一九七七年)に指定されている。
獅子頭の神事
伊勢東風の神事起す獅子頭 二日坊
獅子頭民の竈の神事かな 有山武彦
人々の顔照り映ゆる御頭神事 柳田芽衣
玉替祭(たまかえまつり) 玉替神事
福岡県久留米市の高良神社で一月十五日に行われていた行事。日没を待って社頭の灯を消し、指先ほどの金銀の玉六個を持った神官たちが参拝者のなかに混じり「替えましょ替えましょ」とお互いに声を掛け合いながら玉を交換する。合図で社頭の灯が点き、自分が持っている玉が神社のものであれば、その年は幸運に恵まれるという。鷽替と同じ換え物神事である。
玉替祭 玉替の闇を掴みし祭りの手 三枝青雲
玉替の六玉の熱し闇の中 長谷川ヱミ
欲捨てて玉替祭の玉を待つ 上田桜
誠より嘘の楽しみ玉替える 松田ひろむ
男にも柔きてのひら玉替祭 柳田芽衣
雑司が谷鬼子母神堂奉射(ぞうじがやきしもじんどうぶしゃ) 鬼子母神祭礼
かつて一月十六日に行われていた行事。奉射とは徒歩で矢を射ること。射手六人、各矢六筋を放つと『江戸名所図会』にある。一八三五年(天保六年)の『東都歳時記』では「近年このこと絶えてなし」となった。
雑司が谷鬼子母神堂奉射
かつて鬼子母神堂奉射あり男の子あり 柳田芽衣
鬼子母神祭礼の矢の射られけり 三枝青雲
鬼子母神祭礼絶えて石榴の実 宮沢子
雪花菜(おから)汁鬼子母神堂奉射をして 有山武彦
どこにある鬼子母神堂奉射のあと 上田桜
鬼子母神奉射に射られるひとりごと 松田ひろむ
新御霊御弓(しんごりょうのみたらし)
一月十七日に大阪市中央区の御霊神社で弓を奉射する神事。船場の商人や緒方洪庵、福沢諭吉、懐徳堂や適塾の塾生もお参りに訪れている。
新御霊御弓
新御霊御弓眺む心かな 柳田芽衣
新御霊の御弓参世之介と 有山武彦
諭吉ともここ新御霊の御弓に 松田ひろむ
二十日戎祭(はつかえびすまつり) 二十日戎
正月二十日に江戸で行われた戎祭。恵比須講の市が立つこともあった。商家が恵比須を祀り、鯛などで酒宴を開いたことが最初のようである。関西では十日戎。
二十日戎祭
父の顔二十日恵比寿となりにけり 三枝青雲
二十日戎のむんずと結ぶ鯛の口 長谷川ヱミ
右往左往二十日戎の頭痛膏 有山武彦
雪がくる二十日戎のうかれごと 松田ひろむ
大原野御弓祭(おおはらのおゆみまつり)
一月二十二日、京都市西京区の大原野神社の厄払いの神事。現在は廃れた。氏子の生年が務める役には弓太郎、上座侍、下座侍などがあった。弓太郎が射場で神座を拝してから、鬼の目をかたどった的へ五回射るというものだったという。
大原野御弓祭
大原野に御弓祭の弓太郎 柳田芽衣
大原野鬼の目を射る御弓祭 三枝青雲
大原野御弓祭や鬼を撃て 松田ひろむ
ポケットに絵地図大原野弓祭 宮沢子
箆宮祭(ののみやまつり) 箆岳白山祭
一月第四日曜日、宮城県涌谷町の箆岳白山神社の豊作祈願と予祝神事。前夜の予祝行事では一升餅を食べる福田会が行われる。当日は馬を使わない流鏑馬が行われる。当る場所をもとに稲・麦・豆・蚕・天候の「作だめし」が行われる。最後は暗闇のなかで松明の先導によって、次期当番を引き継ぐ。
箆宮祭 箆宮祭一升餅にうなされて 柳瀬亜湖
豆蚕箆宮祭作だめし 松田ひろむ
肩の荷を置いて箆宮祭かな 有山武彦
浅草観音追儺(あさくさかんのんついな)
浅草寺の修正会の行事。大晦日から正月六日までの毎夕行われる追儺の儀式。太鼓の乱打のなかを僧の一人が鬼面を被って逃げ、もう一人が方相(ほうそう)氏(し)の仮面を被って柳の牛王杖を持って追う。方相氏が鬼を追う立場であるのは非常に古い形式である。
浅草観音追儺
浅草観音抱への鬼の追儺かな 柳田芽衣
浅草の観音追儺通りゃんせ 有山武彦
観音追儺逃げる鬼面のややずれて 長谷川ヱミ
浅草の追儺に走り方相氏 松田ひろむ
浅草史観音追儺絵を添えて 渡辺みどり
東本願寺修正会(ひがしほんgんじしゅうしょうえ)
一月一日から三日まで。京都市下京区の東本願寺の御影堂と阿弥陀堂で仏恩感謝の思いで新年に向うために修する法要のこと。両堂の灯明をすべて灯し、仏華の若松や鏡餅で荘厳する。
東本願寺修正会
修正の灯の海東本願寺 三枝青雲
修正会の身こそを東本願寺 松田ひろむ
修正会仏華の香の大谷派 有山武彦
天狗の宴(てんぐのさかもり) 愛宕寺の天狗宴・絃召酒盛・愛宕寺牛王加持
正月二日、京都の六波羅にあった愛宕寺で門前に住み弓弦を作り、沓を作る仕事をしていた「つるそめ」と呼ばれていた人々が、牛王加持の宴を行った。
天狗の宴 六波羅の天狗の宴高らかに 三枝青雲
愛宕寺のつるそめならば牛王加持 松田ひろむ
有職も天狗の宴鼓打ち 有山武彦
をみなごのまぎる天狗のさかもりぞ 柳田芽衣
初祖師(はつそし)
正月三日に、東京都杉並区堀ノ内の妙法寺や、池上本門寺などで開祖日蓮を祀った堂を参詣すること。いまは初詣と区分されていない。
初祖師 初祖師のしんと抜け道裏藪に 長谷川ヱミ
初祖師の帰り寄り道して来しと 柳田芽衣
初祖師の夕陽のなかの潜り門 有山武彦
初祖師の詣でみやげや揚げ饅頭 丸若加壽子
初祖師に詣でて恋の一里塚 松田ひろむ
両大師詣(りょうだいしもうで) 両大師廻り
正月三日、江戸上野の東叡山寛永寺山内の両大師堂を詣でること。両大師とは慈恵大師(良源)と慈眼大師(天海)のこと。
両大師詣 両大師詣でて叔父の家に行く 上田桜
両大師詣でいても凶を引く 柳瀬亜湖
両大師詣をしたり霊と肉 柳田芽衣
両大師詣は垂れ目表情筋 有山武彦
両大師詣の次はカルビ焼 松田ひろむ
浅草寺牛王加持(せんそうじごおうかじ)
正月五日、東京浅草の浅草寺の本堂で加持された牛王宝印という護符が参拝者に授与された。『東都歳時記』(天保九年)に「柳の枝へ挟むゆゑ柳の牛王といふ」とある。
浅草寺牛王加持
浅草寺牛王加持礼鳩の豆 柳田芽衣
合掌を解きて牛王の護符を受く 長谷川ヱミ
牛王加持ハブ空港に江戸小路 渡辺みどり
浅草寺柳に加持の護符結ぶ 三枝青雲
指切って牛王宝印浅草寺 松田ひろむ
東福寺羅漢供(とうふくじらかんく)
正月五日、京都東山にある東福寺で行われていた行事。この日明兆(一三五二-一四三一)筆と伝えられる「五百羅漢図」五十幅を僧堂にかかげ法要が行われたが、今は廃れた。
東福寺羅漢供
羅漢供の図絵見たけれど こは石仏 伊丹三樹彦
東福寺羅漢供経の一節を 柳田芽衣
東福寺羅漢供ならば手をひろげ 松田ひろむ
● 11月30日締切
自作(新作・旧作問わず)でも、第三者の句の推薦でもけっこうです。
姓号・出典(旧作、推薦の場合)を明記してください。
僭越ながら採否は当方にお任せください。
●いっさいの費用は掛かりません。
『ザ俳句十万人歳時記』編集長 松田ひろむ
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