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テーマ:楽しい俳句(373)
カテゴリ:現代俳句
第32回鴎座通信句会 選句結果のお知らせ 第32回鴎座通信句会は40名200句でした。選句と講評は作者名を伏せて鴎座代表、同人会長・編集長・副編集長・Ⅰ欄同人などに依頼しました。また投句された方の互選(任意・5句選)も行いました。句番号はランダムに変換されたものです。結果は「鴎座」に発表するとともにFACEBOOKなどにも発表します。毎月開催(締切24日)。鴎座俳句会 代表 松田ひろむ ![]() 〈第32回鴎座通信句会結果〉作者名は特選のみ追加記入しました。他は一覧をご覧ください。 石口 榮(編集長)選 27 冬はつとめて電子レンジのよく廻る 36青空や池の底まで紅葉して 特選45出口AB釣瓶落しの真っ直中/古川塔子 105失せ物が名乗りを上げる煤払い 161初冠雪ふわりと言葉置くように 168奪還の荒涼の地よ冬の旗 178ぎんなん炒るはじけてみたい八十歳 (選評)特選にいただいた45「出口AB」の句。秋の日暮は瞬く間である。電車に乗った時はまだ明るかった。しかし降車して地上に出ると、もうすっかり暮れて暗くなっている。電車のスピードより日没時間の速さが勝った瞬間を捉えた所に惹かれた。 27「冬はつとめて」の句。「冬はつとめて。雪の降りたるは、言ふべきにもあらず」の枕草子を踏まえた句。冬場は温かい物に限る。 36「青空や」の句。水面に映った紅葉ではなく、紅葉が池の底に沈んでいる景と読んだ。空の青色との対比で紅葉が一層鮮やかである。 105「失せ物」の句。探す時はなかなか見つからないのが世の常。「名乗りを上げる」の擬人化が楽しい。 161「初冠雪」の句。雪は天からの贈物とも言う。それを「言葉を置くように」とは言い得て妙。山は一夜にして優しい言葉に包まれた。 168「奪還の」の句。ロシア軍によるウクライナ侵攻は未だ終息に至らず、早期の停戦を望む。荒涼たる地に立つ「冬の旗」がなんとも切ない。 178「ぎんなん」の句。人生百年時代。フライパンの中の銀杏のように弾けて下さい。八十歳はまだ若い。 小髙沙羅(同人会長)選 10気が付けば晩年白菜漬け終わる 60こめかみに冬来る明日母の忌で 123皆既月食焼芋売りの声通る 139晩年の入口海鼠よく噛んで 特選161初冠雪ふわりと言葉置くように/白石みずき 172菊酒や覗かれているわが心 199落花生駱駝の話聞きながら (選評)特選にいただいた161「初冠雪」の句。どの山とも言ってはいないが、やはり富士の山であろう。今年は九月三十日が初冠雪で江平年より一日早い観測が発表された。中七下五の「ふわりと言葉おくように」にポエムを感じた。 10「気が付けば」の句。いままでは気が付かなかった「晩年」。まだ白菜を漬ける元気はある。気持ちも体もまだまだ晩年なんて思わなくても良さそうだ。 60「こめかみに」の句。母の忌は誰の忌日よりも忘れられない思い。「こめかみに」がその思いの肉体表現である。 123「皆既月食」の句。なんどもなんども月を見上げたあの夜だった。「焼芋売りの声」が現実に引き戻しているかのようだ。 139「晩年の」の句。晩年とはどんなものだろうか。海鼠を私も「よく噛んで」みようか。 172「菊酒や」の句。お酒を飲むと人が変わることがある。句は、不老長寿の菊酒に、心を覗かれている。 199「落花生」の句。千葉の御宿なのだろうか。落花生を食べながら、海鳴りを聞きながらの旅。ラクダとの取り合わせが効いている。 後藤よしみ(副編集長)選 61煩悩に色を付ければ冬桜 107過ぎ去りし日もこれからも霧の中 116十二月八日港町ブルース 138山眠る活断層の滑る音 149ぬっと出で鯉の口から小春かな 特選150遠き町冬青草に核残る/木野俊子 161初冠雪ふわりと言葉置くように (選評)特選にいただいた150「遠き町」の句。大都市から遠いところに原発は作られる。福島の原発は広範囲に核汚染を引き起こし、未だに残っている。青草の生命力が訴えかけてくる。 61「煩悩に」の句。自分の煩悩の色を考えるのも煩悩。冬桜は淡紅色で、次第に白へ。煩悩も軽くなるかのようだ。思いを可視化すると煩悩も染み入るものに変わる。 107「過ぎ去りし日も」の句。松本清張の「日本の黒い霧」のように戦前戦後も霧が立ち込めていた。二十一世紀の現在も同じである。人生に重ね合わせた句になっている。 116「十二月八日」の句。開戦日であれば、淡谷のり子の唄を思い出したい。慰問コンサート中、特攻兵士たちが立ち去ろうとした時、こう叫んだ。「あんたたち、死ぬんじゃないよ!」鎮魂の一句。 138「山眠る」の句。阪神淡路大震災は活断層による被害であった。日本中に断層が走り、耳をそばだてれば音が日々聞こえる。山眠るとの対比がよい。 149「ぬっと出で」の句。真冬まで間のある水のまだ柔らかい昼。水面へ口から現れる鯉。小春日が活写されている。 161「初冠雪」の句。この時期、南西の富士、北東の筑波を眺める。柔らかな白いベールの姿はまるで語りかけてくるようだ。詩情が伝わってくる。 小平 湖(Ⅰ欄同人)選 13十一月と思えぬ今朝の温度計 24冬三日月明日の服を決めている 113小雪やたった五文字のありがとう 128「元気か?」の余白のむこう柿落葉 138山眠る活断層の滑る音 145人恋しくてときどき流れ浮寝鳥 特選161初冠雪ふわりと言葉置くように/白石みずき (選評)特選に頂いた161「初冠雪」の句。初冠雪は夏を過ぎて、初めて雪が積もること。ふわりと置かれた言葉とはどんな言葉だったのか、そんな想像が広がり、少し近い感じもするが一読して清潔な印象が残り惹かれた。 13「十一月」の句。暖かいのはありがたいが、これも異常気象に関係あるのだろうか。十一月とおもえぬ共感。 24「冬三日月」の句。尖った冬三日月と明日の服選びとの対比。あれこれ迷う女性の楽しい時間。 113「小雪」の句。「ありがとう」の一言があると無いとでは関係が変わってきたりする。大事にしたい言葉だ。 128「元気か?」の句。柿落葉の向こうに自分のことを気遣ってくれる人がいる。暖かくほっとする句。ただ「?」は無くても。 138「山眠る」の句。地震国日本はいつもどこかが揺れている言はれるが、「滑る音」の発見と「山眠る」の季語も効いている。 145「人恋し」の句。水に浮いたまま眠っている浮寝鳥は春になると北国へ帰っていく。浮寝鳥も人が恋しくなるとは軽いウイット が洒落ている。 白石みずき(Ⅰ欄同人)選 57よちよちとおむつ重たし柿落葉 82寄せ鍋に妬心ひとさじ隠し味 87休みが一番勤労感謝の日 104ブロッコリーのような髪型年詰る 112傘一本をコンビニに走る初時雨 特選137「ただいま」の声待っている夜寒かな/高橋透水 166落葉踏む昭和のままの音を踏む (選評)特選にいただいた137「ただいま」の句。奥さんが出掛けていて手持無沙汰 のご主人、夜も更けて寒くなってきた。早く帰って来ればいいのにと。一読して男性の寂しがり屋を感じた。 57「よちよちと」の句。まだ歩き初めの赤ちゃんの姿が手に取るように見えてくる。柿落葉の赤い大きな葉の中をお尻ふりふり無中になって遊んでいるのだ。かわいい! 82「寄せ鍋」の句。妬心ひとさじ、いいなー、羨ましい。嫉妬心があるなんてまだまだ若い、どういう味がするか寄せ鍋を食べてみたい。 87「休みが一番」の句。そうその通り。勤労感謝の日なのだから。何も言う事のない明白の一句である。 104「ブロッコリー」の句。最近若者の間で面白いカットの髪型が流行っている。横を短く刈り上げるタイプ、あまりいいとは思わないが、ブロッコリーとは言い得て妙である。 112「傘一本」の句。実際に目の前で同じような光景を見ていた事がある。それも俳句になるんだ、と感心していただいた句。 166「落葉踏む」の句。どうしても昭和の良き時代が忘れられない。落葉の踏む音までも懐かしく哀愁を感じてしまう。ノスタルジアの一句。 鈴木 砂紅(招待)選 76冬眠や献体書類そろひけり 84ヒゲあわきホスト勤労感謝の日 99ひまわりの枯れてのこるや泣きぼくろ 141秋夕焼たまには夫の遺影拭く 158大食いの癌よ痩身がしばれます 177北窓塞ぐ本当は出忠実です 特選179クリスマスの愛だなんだの自動ドア/吉村きら (選評)特選に頂いた「クリスマス」の句。クリスチャンにとっては大切な行事だが、この国では楽しいイベントに過ぎないクリスマス。ドアの向こうにあるのは愛なのか、喧騒なのか。自動ドアの明るさと軽さが俳諧味を醸し出す。 76「冬眠」の句。虎は死して皮を留め人は死して名を残す、と言う。名の代わりに体の方が他者の役に立つはずだ、という作者の思いが書類に記される。 84「ヒゲ」の句。ホストも確かに勤労者に違いない。それも薄い髭の少年ならば哀れさも感じる。「ヒゲあわき」で俗を超えた一句になった。 99「ひまわり」の句。ひまわりの顔の泣きぼくろから、想い出の人が甦る。向日葵が枯れて行くさまを写生しつつ、抒情句として訴えるものがあった。 141「秋夕焼」の句。生前のあれこれを思い出せば恨み言もあるけれど、たまには顔を拭いてあげるわ、という妻の本音。さらりとした情感が漂う。 158「大食い」の句。全身を食い荒らす癌はまさに大食い。痩せた我が身を厳しい寒さが襲うという闘病句であるが、印象が明るいのは作者の姿勢故か。 177「北窓」の句。本当は出忠実と言いながら、作者は家に籠る。寒さ以外にも何か外出を阻む理由がありそうだと思わせる。 松田ひろむ(代表)選 2「トリクルダウン」サンタの袋は軽いまま佳代子 19着ぶくれてインフレの海化石賞 53カミノルス民は国歌を歌わない 100新嘗祭居ないと思った神がいる 106バラライカ戦争指揮す冬将軍 特選111落葉しきり長子家去る気配なし/鈴木砂紅 準特選113小雪やたった五文字のありがとう/安原南海子 171転職も部屋も決めた娘冬茜 195バンクシーの頬に一粒冬の雨 準特選197シュレディンガーの猫の生死や日向ぼこ/荒井類 199落花生駱駝の話聞きながら (選評)特選にいただいた111「落葉しきり」の句。作者自身の家庭のことではないだろうが、中村草田男の「蟾蜍長子家去る由もなし」の句をふまえつつ、現代の八〇五〇問題をも提起している。「落葉しきり」の季語もひと捻りである。 準特選の113「小雪や」の句。小雪は十一月二十一日ごろ。あまり使われない季語だが、この場合は小洒落ている。確かに「ありがとう」は、たった五文字でもなかなか言えないもの。この句に「ありがとう」。 同じく準特選の197「シュレディンガーの」の句。猫と日向ぼこは、類想類型のパターンだがシュレディンガーとの取り合せに驚かされる。「シュレディンガーの猫」とは量子力学の思考的実験のこと。 2「トリクルダウン」の句。サンタの袋はいつまでも軽い。結局アベノミクスのトリクルダウンを期待しても駄目だったということ。 19「着ぶくれて」の句。日本は気象変動対策を怠った国として化石賞という不名誉な賞を受賞した。結果ではないだろうが「インフレ」も深刻となっている。われわれの対策は「着ぶくれ」なのだろうか。 53「カミノルス」の句。神の留守をカタカナで表記した工夫。それは批判でもある。拙句にも「君が代がだんだん眠く雪催」がある。「君が代」でない「民の代」がいい。 100「新嘗祭」の句。神がいるといって、諧謔性のある句となった。それもめでたい新嘗祭である。 106「バラライカ」の句。やや知的構成が気になるが、戦争のロシアを冬将軍と告発している一句。 171「転職も」の句。いつのまには親離れの娘。うれしいのかかなしいのか複雑な冬茜である。 195「バンクシーの」の句。いよいよバンクシーもウクライナに現れた。この一粒は涙なのだろうか。 199「落花生」の句。動物園なのだろうか。落花生を食べながらの句はありそうだが、」ラクダへの転換が楽しい。 (互選高点句)○数字は点数 3点以上 一位178ぎんなん炒るはじけてみたい八十歳 ⑧ 白石みずき 二位161初冠雪ふわりと言葉置くように ⑤ 白石みずき 二位199落花生駱駝の話聞きながら ⑤ 古川和美 四位111落葉しきり長子家去る気配なし ④ 鈴木砂紅 四位16 冬薔薇人拒みつつ人恋し ④ 磯部薫子 四位27 冬はつとめて電子レンジのよく廻る ④ 古川塔子 四位46 冬の陽にかざす皺の手ありがとう ④ 小髙沙羅 四位61 煩悩に色を付ければ冬桜 ④ 石口 榮 四位82 寄せ鍋に妬心ひとさじ隠し味 ④ 吉村きら 四位105失せ物が名乗りを上げる煤払い ④ 行成佳代子 四位107過ぎ去りし日もこれからも霧の中 ④ 中村ふみ 十二位2「トリクルダウン」サンタの袋は軽いまま③ 行成佳代子 十二位100新嘗祭居ないと思った神がいる ③ 石黒宏志 十二位10気が付けば晩年白菜漬け終わる ③ 岡崎久子 十二位15薬より酒を愛して師走くる ③ 津田文江 十二位36青空や池の底まで紅葉して ③ 中村ふみ 十二位50野水仙生き急ぐなといはれても ③ 荒井 類 十二位80男根を清めておこう降誕祭 ③ 松田ひろむ 十二位104ブロッコリーのような髪型年詰まる ③ 小髙沙羅 十二位123皆既月食焼芋売りの声通る ③ 小平 湖 十二位137「ただいま」の声待っている夜寒かな ③ 高橋透水 十二位139晩年の入口海鼠よく噛んで ③ 小平 湖 十二位166落葉踏む昭和のままの音を踏む ③ 石口 榮 十二位168奪還の荒涼の地よ冬の旗 ③ 高良和子 十二位172菊酒や覗かれているわが心 ③ 増田萌子 十二位179クリスマスの愛だなんだの自動ドア ③ 吉村きら 十二位184冬ざれや内緒のひとへ土産買う ③ 安藤利亮 (第32全句データ)掲載番号・作品・点数・作者の順 1日向ぼこ浦島太郎のその後かな 1 吉村きら 2「トリクルダウン」サンタの袋は軽いまま3行成佳代子 3天高し親子五人の五十鈴川 1 古川和美 4マトリョーシカ羆(ひぐま)のなかに羆いて0松田ひろむ 5七五三誰の祝よ和服ショー 0 石黒宏志 6湯気立てて法律相談捗りぬ 0 百目鬼英明 7初鴨や一期一会の声ひとつ 0 増田萌子 8若作りのアバターの顔冬麗 1 石黒宏志 9八十がぶら下がっている菊膾 2 小平 湖 10気が付けば晩年白菜漬け終わる 3 岡崎久子 11母性観の晶子らいてふ冬の雷 1 近田吉幸 12記念写真あの手この手の七五三 0 磯部薫子 13十月と思えぬ今朝の温度計 1 古川和美 14三島の忌男ヌードの週刊誌 0 高矢実來 15薬より酒を愛して師走くる 3 津田文江 16冬薔薇人拒みつつ人恋し 4 磯部薫子 17北塞ぐ弾道弾の来ぬように 0 後藤よしみ 18履歴書に追加はないが七五三 0 岡崎久子 19着ぶくれてインフレの海化石賞 1 信岡さすけ 20壇ノ浦日向拡げる小春かな 0 近田吉幸 21減る緩む物体の身や枇杷の花 1 高良和子 22大根のすぽすぽ抜けて穴だらけ 0 川崎果連 23日溜りに猫うっとりと撫でられて 0 高良和子 24冬三日月明日の服を決めている 1 石口りんご 25冬浅し逢魔が時の暮るるまま 0 飯島 智 26湯豆腐の飽きっぽい人一途な人 0 石口りんご 27冬はつとめて電子レンジのよく廻る4 古川塔子 28ブルマーの死語となりしや冬木の芽0 荒井 類 29割り箸の二本にするとき根深汁 0 安原南海子 30タコ足のもつれるコード冬ざれる 0 川崎果連 31サッカーの日本代表守り切れ 0 飯島 智 32山茶花は咲いて穏か陽に優し 0 福島芳子 33秋の暮今日は歯医者で明日は何処 1 斎藤 藍 34こおろぎや最後の声を草にあずけ 0 福島芳子 35少し暗くてところどころが立冬 0 古川塔子 36青空や池の底まで紅葉して 3 中村ふみ 37瞑想中の仏よ蔦がせまります 0 鈴木ひろ子 38吊し柿吊りていつから世直し派 1 翠 雲母 39博物館の尖る鉄柵石蕗の花 0 安藤利亮 40南瓜切る翌日手首に湿布薬 1 中村ふみ 41ふる里の匂いと甘さふかし藷 1 古川和美 42ウクライナの事には触れず冬ざるる0 石口りんご 43現世の身体離るる日向ぼこ 1 百目鬼英明 44白鳥の羽根の大切防衛費 1 小平 湖 45出口AB釣瓶落としの真っ直中 1 古川塔子 46冬の陽にかざす皺の手ありがとう 4 小髙沙羅 47煮凝りの隙間に透けている昨日 1 岡崎久子 48シーツ干す空の天晴れ神迎 1 川目智子 49上野毛の新そばそぼろ丼セット 0 小髙沙羅 50野水仙生き急ぐなといはれても 3 荒井 類 51瞑想の間も伸びてゆく冬すみれ 1 福島芳子 52酉の市三の酉まで行ったのに 0 渡辺すみれ 53カミノルス民は国歌を歌わない 1 川崎果連 54白鳥や月まで一寸出で行けり 0 近田吉幸 55餅代の時代経し身に米支給 0 高良和子 56杖借りて天守目指すや落葉霏霏 1 近田吉幸 57よちよちとおむつ重たし柿落葉 1 磯部薫子 58戦争と平和人間臭きシクラメン 0 松田ひろむ 59予備兵は皆んな白旗着膨れて 1 翠 雲母 60こめかみに冬来る明日母の忌で 1 増田萌子 61煩悩に色を付ければ冬桜 4 石口 榮 62留守電は非通知ばかり小六月 1 増田萌子 63酷寒のウクライナへ衣送りたく 0 飯島 智 64年末ジャンボ夢の確率百% 1 百目鬼英明 65銀杏黄葉両手を空けて君を待つ 2 石口 榮 66暖冬の出番待ってる白コート 0 渡辺すみれ 67ひととせの毒を消したりふぐと汁 0 川目智子 68凍鶴になって勤労感謝の日 1 吉村きら 69日溜まりの朴落葉踏み八十路へと 1 安藤利亮 70冬ざるる光の並木六本木 0 斎藤 藍 71根深汁月食ショーの幕間に 0 鈴木砂紅 72藁塚に女児追う女児も八海山 0 安藤利亮 73初霜や讃岐うどんはぶっかけで 1 宮 沢子 74辞世句を詠んで湯豆腐濁さざる 0 川目智子 75冬紅葉レポート五枚の徹夜かな 1 渡辺すみれ 76冬眠や献体書類そろひけり 2 荒井 類 77今こそは飛車の成りすて寒椿 0 信岡さすけ 78狂い花名は知らねども真白なり 0 津田文江 79死にたいの手助けします神の留守 0 石黒宏志 80男根を清めておこう降誕祭 3 松田ひろむ 81ひさびさに腕組みましょう冬紅葉 1 白石みずき 82寄せ鍋に妬心ひとさじ隠し味 4 吉村きら 83路地を行くのぼさんの声酉の市 1 宮 沢子 84ヒゲあわきホスト勤労感謝の日 1 川崎果連 85鯛焼の口唇薄く黙秘権 2 吉村きら 86雁は帰る孤独を声に残しゆく 0 福島芳子 87休みが一番勤労感謝の日 1 百目鬼英明 88九竅のゆるみ始めや冬紅葉 0 宮 沢子 89水涸るや午後の三時のハーブティー0 荒井 類 90一茎の稲穂添えをり米届く 1 郡楽清子 91息荒き山羊曳くおとこ石蕗の花 0 高矢実來 92綿虫の浮くも沈むも罪持たず 0 高橋透水 93いまどきの猫は炬燵で裏返る 0 百目鬼英明 94開戦日子供を辞めた子供たち 2 岡崎久子 95八十億に後期高齢冬眠も 0 信岡さすけ 96ひと時雨ユトリロそぼつ裏の路地 0 飯島 智 97朱セーター三十年の歴史あり 0 望月のぞみ 98冬の蝶拍手は世界を共有す 0 安原南海子 99ひまわりの枯れてのこるや泣きぼくろ2 翠 雲母 100新嘗祭居ないと思った神がいる 3 石黒宏志 101ポシェットに悪銭貯まる神の留守 0 高橋透水 102十二月八日ロシアよもうやめて 0 高矢実來 103アイドルも清純も派兵波の花 1 翠 雲母 104ブロッコリーのような髪型年詰まる3 小髙沙羅 105失せ物が名乗りを上げる煤払い 4 行成佳代子 106バラライカ戦争指揮す冬将軍 2 飯島 智 107過ぎ去りし日もこれからも霧の中 4 中村ふみ 108龍は雲に私は冬のパプリカに 1 鈴木砂紅 109やや寒の鷺は首から歩みだす 1 鈴木ひろ子 110日本ワイン新酒の味はいかがです 0 斎藤 藍 111落葉しきり長子家去る気配なし 4 鈴木砂紅 112傘一本をコンビニに走る初時雨 1 行成佳代子 113小雪やたった五文字のありがとう 2 安原南海子 114柚子の香を身に纏いつつまだ長湯 1 岩渕純子 115なにためらう鷺の一歩や冬に入る 0 鈴木ひろ子 116十二月八日港町ブルース 2 木野俊子 117空っ風真正面の武甲山 0 安原南海子 118山茶花やひらひらひらとピンク海 0 津田文江 119シャンパンを飲みたき仕草かまど猫0 望月のぞみ 120お互いの老いには触れず常夜鍋 2 白石みずき 121葱刻む識別圏なしミサイル飛ぶ 0 翠 雲母 122冬の雲足和田山の展望台 0 渡辺すみれ 123皆既月食焼芋売りの声通る 3 小平 湖 124弖爾乎波の妙味の不思議石蕗の花 0 近田吉幸 125朴落葉さくさく踏んで足和田山 0 渡辺すみれ 126冬に入る喪中葉書が五、六枚 0 石口 榮 127高気圧どんと居座る干蒲団 0 川目智子 128「元気か?」の余白のむこう柿落葉2 磯部薫子 129星月夜森繁久彌の心唄 0 津田文江 130伊勢神宮の旅へ息子の一家族 0 古川和美 131大銀杏落つるがままの社かな 0 郡楽清子 132足元に迫る寒気や人待てば 0 中村ふみ 133祥月をひとり偲ぶや野紺菊 0 郡楽清子 134鵙の声途中下車にて聞いている 0 福島芳子 135浅草でお汁粉抹茶日の短か 1 白石みずき 136やあと呼ばれて振り向けば穴惑い 1 古川塔子 137「ただいま」の声待っている夜寒かな3 高橋透水 138山眠る活断層の滑る音 2 木野俊子 139晩年の入口海鼠よく噛んで 3 小平 湖 140開戦日地球儀回す十三歳 1 木野俊子 141秋夕焼たまには夫の遺影拭く 1 中村ふみ 142冬ざくら人十倍の気力かな 0 高橋透水 143夢ありや蒲団の上の嵩ほどに 0 後藤よしみ 144龍角散からころ勤労感謝の日 0 鈴木砂紅 145人恋しくてときどき流れ浮寝鳥 1 増田萌子 146電線に尾長き鼬の影絵めく 0 行成佳代子 147あと五年生きるつもりで日記買う 1 望月のぞみ 148山茶花晴手摺頼りの駅階段 1 安原南海子 149ぬっと出で鯉の口から小春かな 2 磯部薫子 150遠き町冬青草に核残る 1 木野俊子 151花梨の実カルト法案まだ成らず 1 安藤利亮 152言いすぎて腹ふくれたる太てえ屠蘇0 信岡さすけ 153年の瀬や楽々ブーツで歩むのみ 0 斎藤 藍 154あれやこれ花植え癌と小春の日 0 鈴木ひろ子 155酢石榴の一粒元気百倍に 0 小髙沙羅 156晩秋や干柿作りの最盛期 0 斎藤 藍 157朝までに起きる回数冬めいて 0 石黒宏志 158大食いの癌よ痩身(やせ)がしばれます1鈴木ひろ子 159綿虫がいそうな郷土資料室 0 小平 湖 160若かりしころの思い出帰り花 0 岩渕純子 161初冠雪ふわりと言葉置くように 5 白石みずき 162舐められちゃ負けん気と意地空っ風0 高矢実來 163さりげなく布団干すなりバス通り 0 望月のぞみ 164親子して団塊世代冬霞 0 行成佳代子 165オルコットの少女となりて落葉踏む0 岡崎久子 166落葉踏む昭和のままの音を踏む 3 石口 榮 167秋空に枝振りの妙赤き実や 0 郡楽清子 168奪還の荒涼の地よ冬の旗 3 高良和子 169しなやかに瓔珞にも似て秋海棠 0 郡楽清子 170山茶花の散る広場ぱぴぷぺぽっぽ 0 高橋透水 171転職も部屋も決めた娘(こ)冬茜 1 高矢実來 172菊酒や覗かれているわが心 3 増田萌子 173いつ来ても月山山頂霧の中 1 岩渕純子 174冬紅葉赤児ならばと車椅子 0 信岡さすけ 175ねんねこで六人育て逝った母 0 石口りんご 176陸橋に太宰の匂い冬ぬくし 0 宮 沢子 177北窓塞ぐ本当は出忠実(でまめ)です1石口りんご 178ぎんなん炒るはじけてみたい八十歳8 白石みずき 179クリスマスの愛だなんだの自動ドア3 吉村きら 180守一の「白猫」しりつみの祭 0 宮 沢子 181数えてはクエタ・ロナなり冬銀河 0 後藤よしみ 182手相からまず打ちとける辻焚火 1 川崎果連 183レオナール・フジタ白菜を一枚脱いで0松田ひろむ 184冬ざれや内緒のひとへ土産買う 3 安藤利亮 185COP27時雨のなかを脱炭素 0 木野俊子 186松手入れ梯子危うし老庭師 1 岩渕純子 187枯色の襲の色目着ぶくれて 0 鈴木砂紅 188富士に雪三十一文字に引き込まれ 1 小髙沙羅 189梨泰院の路狐火の通り抜け 0 後藤よし 190人並みの妻母祖母よ石蕗の花 1 古川塔子 191大根抜く地球の肌にニキビ痕 1 石口 榮 192産めよ増やせよ鍋焼うどん夫婦の日0 松田ひろむ 193医師の声に寄れば身を引く秋深し 0 高良和子 194木瓜の実を漬けて三年琥珀色 0 岩渕純子 195バンクシーの頬に一粒冬の雨 1 後藤よしみ 196何となく妖しげなるや赤い月 0 津田文江 197シュレディンガーの猫の生死(しやうじ)や日向ぼこ1荒井類 198阿の熟柿吽の渋柿老い美味(うま)し1 川目智子 199落花生駱駝の話聞きながら 5 古川和美 200新そばに言い訳しつつ酒を飲む 0 望月のぞみ (訂正)124正=弖爾乎波、誤=弓爾乎波 (第33回鴎座通信句会)投句締切=12月24日。5句まで。参加費500円。その他要綱は従来通り。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2022年12月02日 23時53分21秒
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