国民と天皇と大日本帝国

2007/11/14(水)21:15

大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判の尋問-2

現在と大日本帝国(29)

●訴状の請求の原因(抜粋とその概要)・・・前回よりの続き ○第3 本件各書籍における原告梅澤・赤松大尉による集団自決命令の記述 ◇1 原告梅澤の集団自決命令の記述 (2)「沖縄ノート」における集団自決命令に関する事実摘示  慶良間列島において行われた、7百人を数える老幼者の集団自決は、上地一史著『沖縄戦史』の端的にかたるところによれば、・・・《部隊は、これから米軍を迎えうち長期戦に入る。したがって住民は、部隊の行動をさまたげないために、また食糧を部隊に提供するため、いさぎよく自決せよ》という命令に発するとされている。  <中略>  この事件の責任者はいまなお、沖縄にむけてなにひとつあがなっていない  <後略> ◇2 赤松大尉の「集団自決命令」の記述 (3)「沖縄ノート」の「集団自決命令」に関する事実摘示(その2)  新聞は、慶良間列島の渡嘉敷島で沖縄住民に集団自決を強制したと記憶される男、どのようにひかえめにいってもすくなくとも米軍の攻撃下で住民を陣地内に収容することを拒否し、投降勧告にきた住民初め数人をスパイとして処刑したことが確実であり、そのような状況下に、『命令された』集団自殺を引き起こす結果をまねいたことのはっきりしている守備隊長が戦友(!)ともども、渡嘉敷島での慰霊祭に出席すべく沖縄におもむいたことを報じた。  <後略> ●2007年11月9日の裁判での大江健三郎氏の発言・主張(産経ニュース【沖縄集団自決訴訟の詳報】よりの纏め) ※主なQ(被告側・原告側代理人)&A(大江氏) Q:『沖縄ノート』では、隊長が集団自決を命じたと書いているか A:書いていない。『日本人の軍隊が』と記して、命令の内容を書いているので『~という命令』とした Q:『責任者は(罪を)あがなっていない』と書いているが、責任者とは守備隊長のことか A:そう Q:守備隊長に責任があると書いているのか A:はい Q:渡嘉敷や座間味の集団自決は軍の命令と考えて書いたのか A:そう考えていた。『鉄の暴風』など参考資料を読んだり、執筆者に会って話を聞いた中で、軍隊の命令という結論に至った Q:現在のことだが、慶良間の集団自決についても、やはり軍の命令と考えているか A:そう考える。『沖縄ノート』の出版後も沖縄戦に関する書物を読んだし、この裁判が始まるころから新証言も発表されている。それらを読んで、私の確信は強くなっている Q:軍の命令だったとか、隊長の命令としたのを訂正する考えは A:軍の命令で強制されたという事実については、訂正する必要はない Q:赤松さんは集団自決について『まったく知らなかった』と述べているが A:事実ではないと思う Q:その根拠は A:現場にいた人の証言として、『軍のすぐ近くで手榴弾により自殺したり、棒で殴り殺したりしたが、死にきれなかったため軍隊のところに来た』というのがある。こんなことがあって、どうして集団自決が起こっていたと気づかなかったのか Q:(ある神話の風景/曽野綾子)の中には『命令はなかった』という2人の証言があるが A:私は、その証言は守備隊長を熱烈に弁護しようと行われたものだと思った。ニュートラルな証言とは考えなかった。なので、自分の『沖縄ノート』を検討する材料とはしなかった Q:ニュートラルではないと判断した根拠は A:他の人の傍証があるということがない。突出しているという点からだ Q:しかし、この本の後に発行された沖縄県史では、集団自決の命令について訂正している。家永三郎さんの『太平洋戦争』でも、赤松命令説を削除している。歴史家が検証に堪えないと判断した、とは思わないか A:私には(訂正や削除した)理由が分からない。今も疑問に思っている。私としては、取り除かれたものが『沖縄ノート』に書いたことに抵触するものではないと確認したので、執筆者らに疑問を呈することはしなかった 〓勝手に独断と偏見〓 Q:軍の命令だったとか、隊長の命令としたのを訂正する考えは A:軍の命令で強制されたという事実については、訂正する必要はない  「隊長の命令」は訂正するのか、大江氏への「梅澤・赤松氏による集団自決命令の有無」の確認が不充分。  訴状の記述(2)の「自決命令の責任者」は梅澤・赤松氏を含み、(2)(3)では梅澤・赤松氏を非難、この非難は「集団自決に於ける軍の責任」に対してのみではない。  「集団自殺に於ける梅澤・赤松氏の対応」への非難は正当か、「隊長の命令」は存在したのか、裁判で全てが明確になるとは思えない。

続きを読む

総合記事ランキング

もっと見る